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2015.04.09

レビュー

睡眠時に脳でなにが起こっているのかを神経科学からわかりやすく解明

「ヒトを含む動物は、何かに注意を向けるために、そしてなんらかの行動(アクション)を起こすために、覚醒しているのだ」「覚醒し、行動して食物という「報酬」を得る必要があるのだ。(略)動物は「危険」から身を守らなくてはならない」「つまり「食っていくため」、そして「食われないため」に、覚醒が必要なのだ」

そうか、覚醒とはこういうことなのかと、思わず頷いているとこのような文章が目に飛び込んできます。
「こうした睡眠と覚醒の関係をみていると、極論すれば、動物やヒトにとっては「睡眠している」状態こそがデフォルトであり、特別に必要なとき(つまり注意や行動が必要なとき)に「無理をして」起きているのだという考え方もなりたつ」
一見逆説風にも読める櫻井さんの一文ですが読む進めるにつれ、睡眠という現象が明らかにされ、なるほどそうかもしれないと思ってしまいます。

私たちは、睡眠=休息とつい考えがちですが脳の中では大きな活動が起きているのです。
睡眠時でもとりわけ「レム睡眠時、大脳皮質は覚醒時よりもむしろ強く活動して」おり、その活動はといえば「脳を外界と遮断しておかなければ、身体の機能が暴走して、眠っていながら動きだしてしまうだろう」とでもいうようなものなのです。
つまり睡眠とは「脳が積極的に生み出す状態であり、身体の、とくに脳のメンテナンスに必須の機能である」ということになります。

ではノンレム睡眠ではどのようなことが起きているのでしょうか。櫻井さんはこの2種類の睡眠について次のような仮説をたてています。
「脳はノンレム睡眠のときに情報の収集を停止することによって、(略)シナプスの最適化を行っているのだろう。この仮説は、睡眠が精神の健康を保ち、記憶を強化することを説明できる」。
さらにレム睡眠については、たとえていえば
「ファイルシステムの整理ではないだろうか。レム睡眠時に大脳辺縁系が活性化されるのは、記憶の重要性に重みづけをしているのではないだろうか」と。

睡眠というものがなにかとはまだ完全に解明されてはいないようです。たとえば「近年まで、レム睡眠時は夢をさかんに見ることから、記憶の整理に関わっているとされてきたが、最近の研究によって、記憶の固定や整理にはノンレム睡眠が大きく関わっていることがわかってきた」というように。

この本は、オレキシンの発見によって睡眠と覚醒の謎に一歩迫った櫻井さんが、その睡眠時に脳でなにが起こっているのかを神経科学からわかりやすく解き明かした極めて興味深いものです。誰であれ、人生の三分の一近くを占めるという睡眠の世界です。眠っている時になにが私たちの脳で起こっているのか……。睡眠は単なる休息ではありません。よりよい覚醒をむかえるためにも、「記憶を強化する」ためにも必要なものなのです。そのメカニズムを知ることは必要なのではないでしょうか。櫻井さんはさらに「眠気」についても考察をめぐらしています。ぜひ一読してください。

ところで、睡眠というと夢が話題になりますが櫻井さんによれば、「レム睡眠中は脳機能のメンテナンスのために脳が活動する必要があり、そのときに生じるノイズこそが夢である」というものなのだそうです。なるほど……。

「ヒトを含む動物は、何かに注意を向けるために、そしてなんらかの行動(アクション)を起こすために、覚醒しているのだ」「覚醒し、行動して食物という「報酬」を得る必要があるのだ。(略)動物は「危険」から身を守らなくてはならない」「つまり「食っていくため」、そして「食われないため」に、覚醒が必要なのだ」

そうか、覚醒とはこういうことなのかと、思わず頷いているとこのような文章が目に飛び込んできます。
「こうした睡眠と覚醒の関係をみていると、極論すれば、動物やヒトにとっては「睡眠している」状態こそがデフォルトであり、特別に必要なとき(つまり注意や行動が必要なとき)に「無理をして」起きているのだという考え方もなりたつ」
一見逆説風にも読める櫻井さんの一文ですが読む進めるにつれ、睡眠という現象が明らかにされ、なるほどそうかもしれないと思ってしまいます。

私たちは、睡眠=休息とつい考えがちですが脳の中では大きな活動が起きているのです。
睡眠時でもとりわけ「レム睡眠時、大脳皮質は覚醒時よりもむしろ強く活動して」おり、その活動はといえば「脳を外界と遮断しておかなければ、身体の機能が暴走して、眠っていながら動きだしてしまうだろう」とでもいうようなものなのです。
つまり睡眠とは「脳が積極的に生み出す状態であり、身体の、とくに脳のメンテナンスに必須の機能である」ということになります。

ではノンレム睡眠ではどのようなことが起きているのでしょうか。櫻井さんはこの2種類の睡眠について次のような仮説をたてています。
「脳はノンレム睡眠のときに情報の収集を停止することによって、(略)シナプスの最適化を行っているのだろう。この仮説は、睡眠が精神の健康を保ち、記憶を強化することを説明できる」。
さらにレム睡眠については、たとえていえば
「ファイルシステムの整理ではないだろうか。レム睡眠時に大脳辺縁系が活性化されるのは、記憶の重要性に重みづけをしているのではないだろうか」と。

睡眠というものがなにかとはまだ完全に解明されてはいないようです。たとえば「近年まで、レム睡眠時は夢をさかんに見ることから、記憶の整理に関わっているとされてきたが、最近の研究によって、記憶の固定や整理にはノンレム睡眠が大きく関わっていることがわかってきた」というように。

この本は、オレキシンの発見によって睡眠と覚醒の謎に一歩迫った櫻井さんが、その睡眠時に脳でなにが起こっているのかを神経科学からわかりやすく解き明かした極めて興味深いものです。誰であれ、人生の三分の一近くを占めるという睡眠の世界です。眠っている時になにが私たちの脳で起こっているのか……。睡眠は単なる休息ではありません。よりよい覚醒をむかえるためにも、「記憶を強化する」ためにも必要なものなのです。そのメカニズムを知ることは必要なのではないでしょうか。櫻井さんはさらに「眠気」についても考察をめぐらしています。ぜひ一読してください。

ところで、睡眠というと夢が話題になりますが櫻井さんによれば、「レム睡眠中は脳機能のメンテナンスのために脳が活動する必要があり、そのときに生じるノイズこそが夢である」というものなのだそうです。なるほど……。

睡眠の科学

著 : 櫻井 武

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レビュアー

野中幸宏

編集者とデザイナーによる覆面書籍レビュー・ユニット。日々喫茶店で珈琲啜りながら、読んだ本の話をしています。

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