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2015.02.24

レビュー

“ジョブズ”を排除すると自分も危うくなる?

今回は、普段読まないようなビジネス書を紹介するので、この本に何が書かれているか、一生懸命まとめてみようと思います。

この本の言う「タレント」とは、「抜群に優れた人」「問題処理能力が優れているのは当然だが、自分で問題をどんどん見つけて解決してしまうタイプの人」だそうです。

スティーブ・ジョブズのような人を思い浮かべればいいと思うのですが、日本には”ジョブズ”のような人がいても、うまく会社で使うことができないという現状があるそうです。そういう人は変人であることも多いので、”ジョブズ”をうまく使えない上司は、”ジョブズ”を廃除することもあるとか。著者は「こうした政治的技術は、ほとんど芸術の域」とまで書いています。

ただ、もしもそんな「芸術」性を発揮して、うまいこと”ジョブズ”が会社を辞めたとして、”ジョブズ”はそのタレントを発揮して余所で成功を収めることがあるからいいけれど、”ジョブズ”がいなくなった会社は経営が立ち行かなくなり、「芸術」性を発揮した上司も、仕事を失う可能性だってあるのです。

こうした日本に横たわるジレンマは十分理解できるのであすが、これを打破するのは非常に難しそうだと思いました。

なぜならば、この本では仕事をする人間を、①知識を伴わない定型労働 ②改善労働を伴う非定型労働 ③知識を伴う定型労働 ④複数分野の知識を伴う創造的知識労働 にわければよいと書いているのですが、日本では人の能力を明確に分けることが、一番メンタル的に苦手そうだからです。

そう思って読み進めていたら、やはり著者もあとがきで「日本と日本人にとっては、特に個人の間の能力の差を認めるのに嫌悪感に似た感覚を感じる人も多いようだ」と書いてありました。また、「『優れたタレントを認め、全員が異なるのだ』ということを、個性として心理的に受け入れられるかが、ひょっとしたら日本人の最大の挑戦かもしれない、と言っていた人もいた」とも書いています。

現在、良いところを認める風潮はどんどん広がっていっていますが、繊細すぎて人との違い、そして違いを認めることで自分が人より劣っていることを認めるのはちょっとしんどい。そのせいで、中・長期的な将来が逆に悪くなる可能性があるということもイメージできます。それを克服するには、さきほども書きましたが、目の前の“ジョブズ”を排除しても、それは中・長期的に見ると、自分にとっても命取りである、という危機感を持つことしかないのでしょう。でも、それでは言い方が「キツ」すぎる……。今の自分たちに、もっと現実を受け入れやすい優しい理由があればいいのにと思うのですが、それはやはり繊細すぎるというものでしょうか……。

レビュアー

西森路代

1972年生まれ。フリーライター。愛媛と東京でのOL生活を経て、アジア系のムックの編集やラジオ「アジアン!プラス」(文化放送)のデイレクター業などに携わる。現在は、日本をはじめ香港、台湾、韓国のエンターテイメント全般や、女性について執筆中。著書に『K-POPがアジアを制覇する』(原書房)、共著に「女子会2.0」(NHK出版)がある。

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