交通事故で両親を亡くした関織子(通称おっこ)が引き取られていった先は、峰子おばあちゃんが住む温泉街でした。おばあちゃんはその温泉街で古風な(ひなびた?)温泉宿「春の屋」を営んでいます。
おっこがが引っ越した部屋で最初に出会ったのはなんとユーレイのウリ坊! おっこにしか見えないし話もできないウリ坊は最初は座敷わらしのようなものとおっこに説明していましたが、どうもそれだけではないようです。おっこを自動車事故から救ったのにも関係しているようですし、おばあちゃんの若い頃も知っているようです、見かけは小学生のようなのですが(といってもユーレイは年をとりませんね)。
この本は一生懸命だけどちょっと不器用なおっこが旅館の仕事のおもしろさに気づき、おかみ(若おかみ)をめざして頑張る姿をテンポ良い語り口で描いています。とはいってもちょっと不器用なおっこですから、なかなか熱血(?)おかみのようにはなれません。お客さんを喜ばせようと知恵をしぼったことも、かえってお客さんの不興を買ったりと失敗続きなこともありました。
この町の実力者の娘で同級生の真月(春の屋の向かいに豪華なホテル「秋好旅館」を営んでいます)とも最初はうまくいってなかったようです。
そんなある日、学校を休んだ真月に宿題を届けにいったおっこは、旅館で一生懸命に働いている真月の姿を見てしまいます。真月の努力、頑張りにおっこは素直に感心してしまいます。それがおっこのいいところなのです。
訪ねた時に知った「名物菓子コンテスト」、おっこはすぐに出場することを決めました。といってもつくれるのはプリンだけ。春の屋の料理人康さんの助けを借りながらもコンテストへむけて一心にオリジナルのお菓子を作ろうとするのです。
そして迎えたコンテストの日、思わぬアクシデントがおっこを待っていました。窮地のおっこを助けたのはウリ坊とそしてあの真月……。真月の心を動かしたものまたおっこの一生懸命さだったのでしょう。
若おかみになると決心したおっこの奮闘ぶり(といっても失敗がつきものではあるのですが……)を読んでいるとページをめくるのがもどかしく感じてしまいます。おっこの頑張りはなにより読む人に元気をあたえてくれるものだと思います。読み始めるととまらなくなる、ユーモアいっぱいで心温まるシリーズだと思います。
レビュアー
編集者とデザイナーによる覆面書籍レビュー・ユニット。日々喫茶店で珈琲啜りながら、読んだ本の話をしています。