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2024.07.31

レビュー

「ウォーキングしていれば大丈夫」は勘違い! 人生100年時代、必須の筋トレがたった3秒!

筋肉は誰にでもある

「運動しなきゃダメ」とわかっているのに運動ができていない大勢の人たちが運動するには、どうすればよいか。『たった3秒筋トレ 世界最短時間で10歳若返る』は、運動しない人を取り残さない本だ。読むと、すべての人にとって筋トレは身近で手応えのある行為であることがわかる。

本稿では、筋トレが楽しくてしょうがない人(つまり私)のことは、いったん横へ置いておく。主役は次のような人たちであり、目的はそんな人の「命」を守ることだ。

日常生活に欠かせない基本的な動きをスムーズにこなすためには、筋力が必要であり、筋力を高める運動が欠かせません。そこで運動をオススメするのですが、実際に自分から運動できる人は少数派。「時間がない」「つらそう」といった答えが返ってきます。

著者の中村雅俊先生は、西九州大学リハビリテーション学部の准教授で理学療法士。つまり「カラダの動き」のプロであり、これまで大勢の老若男女に運動をオススメしたものの、運動を習慣にする人の少なさを目の当たりにしてきた。中村先生はこう呼びかける。

あなたの筋肉はないのではなく、眠っているだけ
 
あなたのカラダの奥には、磨けば輝き出す(つまり筋力が上がる)筋肉という、“原石”が眠っているのです。(中略)
「いまさら筋トレなんて」と諦めないでください。

あたたかくて切々とした言葉がいくつも並ぶのには理由がある。

筋力の低下は、将来要支援・要介護になるリスクの1つであり、自立した健康的な生活が送れる「健康寿命」を短くします。また、筋力が低下すると結果的に認知症にもなりやすくなります。
筋力の低下は自覚しにくいにもかかわらず、ネガティブな影響が大きいことから、私は「サイレントキラー(静かなる殺し屋)」と呼んでいます。

これは、私が、未来の自分や高齢の家族に対して恐れていることそのものだ。

そんなサイレントキラーに立ち向かうために中村先生は「3秒筋トレ」を考案した。3秒筋トレは、60~80代の高齢者でもできて、つらくなくて、お金もかからない。膝や股関節に不安がある人にもオススメできるのだという(ただし、膝や股関節に違和感や痛みがある人は、まずは整形外科で専門医の診断を受けることを本書では推奨しています)。

3秒筋トレは、つらくないのに、10週間で最大約30%の筋力アップだって夢じゃないのだという。本当に? 3秒筋トレを実践した人たちの声は?

ちゃんと筋力が上がっている! しかも血圧も下がり、「日常生活が楽に」なんていううれしい感想が寄せられている。なにより60代や70代の人でも続けられて、やがて効果が得られることが頼もしい。

本書では3秒筋トレの方法とともに、3秒筋トレで効果が出る理由についてもきちんと解説されている(ここで筋トレ好きは「なるほど!」と膝を打つはずだ)。

椅子さえあればOK!

3秒筋トレのひとつ「椅子座り」を紹介する。使用する椅子は、食卓にありそうなごく普通のもの。


動きのイメージをより具体的に知りたい人は、ぜひ本書のQRコードをスマートフォンなどで読み取って動画を再生してほしい。私は秒数を数えるのが苦手なので、動画の通りに筋トレをしている(ついカウントが速くなっちゃうんです)。

さて、実践してみてどう感じたか。「本当にこれでいいんだろうか……?」と思うくらいマイルドな動作だ。首をかしげたくなるくらい易しい。でも3秒筋トレのあとはカラダがスッキリしている。つまり、運動後の心地よさがほんのり感じられるのだ。そしてこのくらいの運動ならば、股関節が弱くなってきた家族にも安心してすすめられる。この心地よさを、どうか多くの人に味わってもらいたい!

この3秒筋トレは10種目ある。まずは「椅子座り」と「かかと下ろし」を優先的に行い、余力があれば他の種目も取り入れるとよいそうだ。

よくある質問にウンウンうなずく

本書の第3章「よくある質問にお答えします」では3秒筋トレを実践する上で「あれ?」と気になることが明快に解説されている。

例えば「筋力が上がっている実感がありません」なんていうストレートな質問も。そう尋ねたくなる気持ちはよくわかる。3秒筋トレはあまりにもつらくないからだ。そして実感がないと、続かないかも……? そんな不安への中村先生の回答は次のよう。

「3秒筋トレ」は、始めたその日から着実に効果があります。
でも、始めてすぐに筋力アップをはっきり自覚するのは難しいでしょう。腹筋運動を1日か2日やったくらいで、腹筋がバキバキになったりしないのと同じです。

うんうん、その通り。そしてこの回答だけで終わらせないのが本書のすばらしいところ。中村先生はこう続ける。

でも、成長を感じる機会は多々あります。たとえば、「椅子座り」を始めた頃は、7回やるのが精一杯だったのに、すぐに8回、9回、10回とできる回数が増えるでしょう。

そう、これはまさに筋トレの楽しさだ。必ず変化が訪れる。

さらに「ラジオ体操が習慣です。『3秒筋トレ』はやらなくても平気?」という質問にも思わずうなってしまった。たしかに素人目線だとラジオ体操は「3秒筋トレ」のマイルドな運動とよく似ているような気がするが……?

ラジオ体操が習慣になっているなんて素晴らしいですね。これからもぜひ続けてください。今後はそれに「3秒筋トレ」をプラスしてみてください。
ラジオ体操は、カラダを大きく動かしたり、反動を使って動かしたりするもの。専門的にはダイナミック・ストレッチ、バリスティック・ストレッチなどと呼ばれており、筋トレではありません。(中略)
ラジオ体操を終えてから「3秒筋トレ」をやれば、より効果的です。

中村先生の優しいニッコリ顔が目に浮かぶようなメッセージだ。

3秒筋トレや本書で紹介されているストレッチを続けているうちに、かつて整形外科のリハビリに通っていたことを思い出した(昔、足首を傷めました)。理学療法士の先生が私に教えてくれたのは「こんなマイルドな動きでいいのかな」と心配になるくらい負担の少ない動作で、でもそのくらいソフトなおかげで、足首を動かすのが怖い時期でも実践できた。ふと隣を見れば、私よりうんと年上の人も、若い人も、ていねいにリハビリに取り組んでいた。

そして教わった通りにコツコツ続けると、ゆっくり雲が晴れるように足首の動きが良くなっていった。あれはとても感動する。自分のカラダが応えてくれたのを実感するからだ。きっと、3秒筋トレが私たちにくれる筋力アップの効果も、雲から光が差すようなやわらかくて確かなものだと思う。一生ものの財産を築いてくれる静かで価値ある3秒だ。

レビュアー

花森リド イメージ
花森リド

ライター・コラムニスト。主にゲーム、マンガ、書籍、映画、ガジェットに関する記事をよく書く。講談社「今日のおすすめ」、日経BP「日経トレンディネット」「日経クロステック(xTECH)」などで執筆。
X(旧twitter):@LidoHanamori 

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