苦節10年、夢を叶えた作品は夢を見はじめた時代が舞台でした。慶應義塾志木高等学校卒業の著者が、母校を舞台に描いた青春ミステリー
5月15日、『死んだ山田と教室』発売当日の夜、打ち上げをした渋谷のレストランで著者の金子玲介さんは号泣していました。メフィスト賞受賞のご連絡をしてから1年の改稿の苦労、ひいては高校2年生からの投稿生活がついに報われたのです。
主人公・山田のお通夜から物語がはじまるという本作は、悲しみの新学期から一転、クラスの人気者の山田がスピーカーに憑依したことで再びバカバカしい男子高校生ノリが復活します。会話の軽快さ、エピソードの面白さでページをめくる手が止まらなくなった読者はしかし、中盤以降の展開に驚きとともに「生とは何か」を強く考えさせられるようになります。
発売半年前からのPV のリリースや初版3万部という破格のスタートを切った『山田』ですが、驚くべきはその注目度の高さ! 「王様のブランチ」(TBS 系) をはじめ、ラジオ2局、新聞3紙、雑誌11誌から発売前に取材依頼が来たのです。事前に作品を読んでくれた全国150人の書店員さんがあまりにも絶賛してくださったので、店頭用のポスターはメッセージで埋め尽くすデザインにしました。
作家の金原ひとみさんはこうコメントを寄せてくれました。
「私がずっとデビューを待ち望んでいた新人の、ユーモアと青臭さと残酷さと優しさが詰め込まれた快作です」
ぜひご一読ください。
──文芸第三出版部 奥村元春
歴代メフィスト賞受賞者、金原ひとみさんのほか全国150人の書店員さんの感想で埋め尽くされた店頭ポスター。カバーモデルは俳優の菅生新樹さん
撮影/江森康之
1993年神奈川県生まれ。慶應義塾大学卒業。『死んだ山田と教室』で第65回メフィスト賞を受賞。