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2024.01.13

レビュー

死ぬまでにやりたいことはすぐやる! 踏み出してみたら芋づる式に人生が楽しくなった!

死ぬまでにやりたいこと、やるなら今でしょ!

作者のなとみみわさんは50代前半。自分と同じ世代の人が「死ぬまでにやりたい! 10のコト」をテーマにしていることに、少し戸惑いを感じる。だって50代前半って「死ぬまでにやりたい」という希望や願望より、「死ぬまでやらなきゃいけない」義務やら責任の方が多い気がしません? 子どものこと、老後のこと、フリーランスとしての不安やら、やらなきゃいけないことが山積みで、「死ぬまでにやりたい」と思えるのって10年ぐらい先の話じゃないかな。というのが、この漫画を読む前に思ったこと。

そして、この本の第1話は「最高の遺影を撮りたい!」というエピソード。
「死ぬまでにやりたいことで、一番最初にそれを考える?」と思いましたよ。50代前半で、健康に不安があるならいざ知らず、まだ死なないでしょ! でも、なとみさんはそう考えない。





サイコー! なとみさんは、自分の葬式でポーズ違いのタカラジェンヌ風の遺影が並び、弔問客が爆笑している姿を想像して楽しんでいる。さて、その写真は置いといて(置いといていいのかどうか、なとみさんのご親族の心中を考えると微妙だが)、ちょっと刺さったんですよね。

そう! 今!
だって今が人生で一番
若いじゃん!

という言葉が。

自分自身に「若い」という言葉を使わなくなったのはいつだろう? 自分を若いとも思わないけど、老いにどっぷり足を突っ込んでいるとも思っていない、どっちつかずの50代前半。これからの人生、一分一秒ごとに老いていくのだから、今が一番若い……。そういう考え方をしたことがなかった。「若いっていいよなぁ」なんて言って、自分で「若さ」をムダにしていないか?

人生でやり残したコトってありますか?
私、いっぱいあります(笑)
そろそろ自分に目を向けて、やりたかったコト思いっきりやって
自分を満足させてあげたい!って思うんです。

難しいのは、「自分に目を向け」るタイミングなんですよね。子供の自立や老後の経済的な見通しがつけば、それがタイミングになるんだろうけど、そんな時は来るの? 来ないかもしれない。じゃあ、そのタイミングはいつ? 今でしょ! って考え方はアリだと思う。特に50代前半は。

そしてなとみさんは、自分を満足させることを「自分推し活」と呼び、登山や茶道、女優(!)、自動車免許の取得(それも合宿で!)などに挑戦する。

扉を開き、新たな道を行かん!

この漫画で描かれる10のエピソードで、共感したのが「行きつけのお店を作りたい!」だ。よく行く店じゃなく、行きつけの店ってところが肝心で、ふらっと一人で立ち寄れて、見知った顔の常連客と主人が「お、来たね~」なんて感じで迎えてくれる店じゃないと、行きつけの店とはいえない。そういう店、ありますか? 私、ないです。

ある日、なとみさんは友だちと飲んだ勢いでスナックに突撃する。そこにいたのは……



というキャラ強めのママ。こういうママがいる店は楽しい。でも、難しいのは2回目の来訪なんですよね。初回の時くらい盛り上がればいいけど、そうじゃないとガッカリ感がね……。しかし、つゆこママは違った。





まさかのリピート! 同じ日が延々と繰り返されるタイムループ? いや、これがいいんだって。行きつけの店に新鮮さなんていらない。そこから始まる長いお付き合い。いいなぁ。うらやましいなぁ。

死ぬまでにやりたいことの10コめ。
なとみさんは、自分の母がケアハウスを出たいと言っていることを知る。







そして彼女は東京を離れ、実家のある石川県に引っ越すことを決意する。

母のために故郷へ帰るのは、“そうしなきゃいけない”と考えると、とてもしんどい。でも、なとみさんは「自分を満足させる」という生き方に沿って、「この歳になって、またみんなで暮らすって、楽しそうじゃない?」と、実家へ帰ることを“やりたいこと”にしてしまう。誰もがそう考えられるものじゃないし、生きている限り“やらなきゃいけないこと”は付いて回る。だけどそんな“そうしなきゃいけない”ことも、新しい可能性を開く扉になるかもしれないと思えたら、生きることがずっと楽になる。ポジティブ・シンキングみたいな頭でっかちなものじゃなく、シンプルで力強い生き方、うらやましいな。カッコいいよ、なとみさん!

レビュアー

嶋津善之 イメージ
嶋津善之

関西出身、映画・漫画・小説から投資・不動産・テック系まで、なんでも対応するライター兼、編集者。座右の銘は「終わらない仕事はない」。

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