今日のおすすめ

夜空を見上げてみよう。夜空のなぜ?星の不思議がよくわかる! 星空観察ガイド

親子で楽しむ 星空の教科書
(著:渡部 潤一/渡部 好恵)
2023.03.22
  • facebook
  • X(旧Twitter)
  • 自分メモ
自分メモ
気になった本やコミックの情報を自分に送れます

知れば夜空を見上げたくなる

最後に星空を見上げたのはいつですか? 日々忙しく過ごしていると、頭の中は考え事でいっぱい。そんな中、夜空にキラキラと瞬く星を眺めていると、無心になれて日常から離れられる気がします。でも、なぜ星はキラキラと瞬くのでしょう?



『親子で楽しむ 星空の教科書』は、「なぜ星はキラキラしているの?」はもちろん「夜空に見つけた星の集まりはなに?」「どうして月食は起こるの?」そんな、知っているようで知らない“星の不思議”を教えてくれる星空観察ガイドです。



解説してくれるのは国立天文台上席教授の渡部潤一先生と、天文雑誌やWEBサイト中心に執筆を行うサイエンスライターの渡部好恵さん。人気の天体カメラマン・KAGAYAさんをはじめ、国立天文台、県立ぐんま天文台などの協力による美しい星空写真とともに、夜空の天体現象をイラストや星図を交えて学ぶことができます。



仕事を終えた帰り道で、自宅の窓から、あるいは旅先やキャンプ場で、ふと夜空を見上げたくなる……。そんな星空観測の入門書です。

「美しい星空」の理由を知る

この本は、「夜空」「月」「星」の3つのパートに分かれています。


Part1で紹介するのは「夜空」。月や星が輝くのは、夜空が暗いから。当たり前のように思える現象ですが、その理由を説明することはできますか?

それを理解するには、なぜ昼の空が明るいのか、を知る必要があります。

「昼の空が明るい」ことにも理由が存在し、「あたりまえ」ではないのです。なぜなら、

宇宙空間では太陽があっても空は暗く、星が見えています。

昼の空は明るく、夜空は暗く見えるのは、この地上ならではの話なのです。ここでは太陽の光と大気の分子が空の色を作り出す仕組みを知ることができます。

では、月の裏側が見えないのはなぜでしょう。



夜空に浮かぶ月の模様を、日本では「ウサギの餅つき」に例えます。月の模様はヨーロッパでは「カニ」、アメリカでは「女性の横顔」に見えるとも聞きます。しかし、日本で暮らしていて「ウサギの餅つき」以外の月の模様を見たことがありますか? 月の「裏側」あるいは「ほかの国では見える模様」が見えない理由は、地球と月の自転・公転のスピードにありました。

見慣れた空や天体を、「あたりまえ」の存在と思う人もいれば、その現象が起きる理由をランダムな「不思議」として捉えている人もいるかもしれません。しかし、夜空や、ときに「天体ショー」などと呼ばれる美しい現象にはどれも理由があることをこの本は教えてくれます。
では、いつも同じ面を地球に向けている月の裏側はどうなっているのか? それも、本書の写真で見ることができますよ。

思い込みを覆(くつがえ)されて驚くこともありました。私が同じものだと思い込んでいた「ほうき星」と「流れ星」。

同じようで全く違います。
流れ星は天体ではありません。

どちらも尾を引く姿でありながら別物である「流れ星」と「ほうき星」は、それぞれ何でできているのか? また、流星群が放射状に動くのはなぜなのか? といったことが、子どもでもわかるシンプルな表現で分かりやすく書かれています。そう、この本のタイトルは『親子で楽しむ 星空の教科書』。大人が読んでも新鮮な驚きがあり、子どもが一人で読んでも理解しやすく、親子一緒に楽しく読める1冊です。実は複雑で難しいことを、わかりやすい文章でサラッと伝えられるのは、著者お二人の「星空への深い理解」のなせるワザだと感じました。

あの星を探そう



夜、決まった時間に犬の散歩をしていると、夜空に浮かぶ星座たちが季節に沿って少しずつ変化していることに気づきます。一番大きく見つけやすいオリオン座は、冬はよく見えるのに、夏の間は見かけないような……? 
そんな中、「一年中見える星」があります。

一年中、そして一晩中見える星があります。北極星です。

上の写真は、長時間露光で同心円上を移動する星の軌跡を撮影したもの。円の中心に見える点が、ほぼ動かないように見える星・北極星です。


北極星は地球の自転軸の延長線上にあるため、地球から見るとほぼ動かず、また一晩中見ることができるのです。「ポラリス」とも呼ばれるこの星が「不動の星」として旅人や船乗りの道標とされてきたのはこういう意味だったのか!と膝を打ちます。

では、本当に北極星はほぼ動かないものなのか? 実際に空を見上げて確認したくなりました。この本には、星空観察の助けとなる全天の「星図」が月ごとに収録されています。確かに、どの月の星図を見ても、およそ同じ場所に北極星が描かれています。


この星図を片手に「季節のランドマーク」の星座を探します。見つけるコツが書かれているので、初めてでも「おおいぬ座」を見つけることができました。空を眺めて10分もたてば、暗さに目が慣れてきます。オリオン座の3つ星からたどっていくと「あれかな?」と思う星を見つけました。そうなると、最初はランダムなものに見えていた星の集まりが、どんどん「星座」に見えてきます。この面白さ、ぜひ体験してほしいです。

ただ無心に夜空を見上げるだけでも癒しはありましたが、この本を片手に空を見ると好奇心が刺激されます。美しい写真とともにゆっくりと星空を観察する時間を作りたくなる1冊です。

  • 電子あり
『親子で楽しむ 星空の教科書』書影
著:渡部 潤一/渡部 好恵

「なぜ星はキラキラしているの?」
「月が大きくなったり小さくなったりするって本当?」
「宇宙と空の境目はどこ?」
知っているようできちんと説明できない星空の疑問を国立天文台上席教授の渡部潤一先生と、わかりやすい解説が魅力のサイエンスライター渡部好恵さんが解説します。
読むだけでなく、見ても楽しめるように、天体カメラマンとして人気のKAGAYAさんの美しい星空写真とともに、宇宙の仕組みをイラストと図版で紹介。
家に向かういつもの帰り道で、自宅のベランダで、あるいは旅先やキャンプ場で、ふと夜の空を見上げたときのわくわくが倍増する星空観測の入門書

レビュアー

中野亜希

ガジェットと犬と編み物が好きなライター。読書は旅だと思ってます。
twitter:@752019

  • facebook
  • X(旧Twitter)
  • 自分メモ
自分メモ
気になった本やコミックの情報を自分に送れます