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「性教育、どう教えればいいの?」の声にこたえます! 5歳~18歳までの年齢別性教育
(文・構成:上村 彰子 監修:田代 美江子 イラスト:大久保 ヒロミ)
小学生のころ、友達から1冊の本を借りた。主人公は小学5年生の女の子で、生理を始めとする身体の変化や、妊娠、出産などをストーリー仕立てで描いたマンガだった。内容への興味と絵のキラキラ感もあいまって、当時の私は夢中になった。結局、母にねだって自分用に購入してもらい、繰り返し読んだ。おかげでそれから数年後に初潮を迎えた時も、焦らず対処できた。
本書のタイトルを見た時、最初に思い出したのはその体験だった。学校以外での性教育の機会は、まだまだ多くないと聞く。一方、本はいつでも寄り添ってくれるし、「大人も一緒に読んで、考えることができる」というつくりも気になった。「包括的性教育」という言葉も初耳で、あの頃の自分に思いを馳せながら、手に取ってみることにした。
本書は“1時間で一生分の「生きる力」”というシリーズの3冊目にあたる。国際連合の専門機関の1つで、教育科学文化を担うユネスコが中心となり、2009年に提唱したのが「ユネスコ国際セクシュアリティ教育ガイダンス」だそうだ。その内容は私が思っていたよりも幅広く、挙げられた8つの枠組みの中には「人間関係」や「暴力と安全確保」「健康と幸福のためのスキル」といったものまで含まれていた。一般的にイメージされる「性と生殖に関する健康」が項目の最後というのも印象に残った。
本書では内容を「for kids(子どものみなさんへ)」と「for Adults(おとなのみなさんへ)」の二手に分け、それぞれに向けて書かれた監修者や専門家の言葉が、年齢や項目別に伝えられていく。とはいえ、すべての漢字にはルビが振られており、子どもであっても大人のページを読むことができるし、大人であっても子ども向けに書かれた言葉が胸に刺さることもある。たとえば子ども向けの冒頭のあいさつでは、子どもが大人へ「性」についての質問をした時、はぐらかされたり叱られたりするケースを挙げて、こんな言葉を返している。
そんな経験からなんとなく、“性”については聞いてはいけないのかな……と思うことは当然ですね。ではなぜ、多くの大人たちは、“性”について、そんな態度をとるのでしょうか。
それはね、大人たちの多くが“性”についてきちんと学んだことがないからなのです。
思わず目を見開いた。なんと正直で、誠実な姿勢……! この言葉が腑(ふ)に落ちる子どもも、きっと多くいるに違いない。だからこそ、その後に続く「“性”について知ること」の大事さも響いてくるし、本書が「自分たちにちゃんと向き合ってくれている」と感じる子どももいるだろう。少なくとも私は、ここでぐっと引き込まれた。
その後、ページは「5-8歳」「8-12歳」「12-15歳」「15-18歳」と、大きく4つの年齢ごとに分けられている。各コーナーの冒頭には、『赤ちゃんのドレイ。』『人は見た目が100パーセント』(ともに講談社)といった作品で知られる大久保ヒロミ氏のマンガが載っており、その後に続くテーマをコメディータッチでわかりやすく紹介してくれる。また、作中に登場する「命ちゃん」というキャラクターは、本書の全編を通して先導役となり、戸惑う大人に寄り添っていく。
最終章となる「15-18歳」のコーナーでは、保護者のみならず、大人であれば誰にでも知っておいてほしいテーマが詰まっていた。それはパートナーとの関係において生じる問題、たとえば「避妊」や「性感染症」、「デートDV」や「性暴力」といったテーマであり、それらは成人後の人生にも大きく関わってくるものばかり。むしろ、付き合いはじめたばかりのカップルや結婚前の方々には、熟読してほしい内容にも見えた。このあたりの感覚が互いにずれている場合、その後の生活にも支障をきたしかねない。ともに人生を長く歩んでいくためにも、知っておくべき話題ばかりだと強く感じた。
ほかにも、専門家のコラムや具体例を元にしたQ&A形式でのやり取りなどが載っており、いずれもライトな語り口ながら、読みごたえはたっぷり。一気読みはもちろん、気になるテーマや確認しておきたい問題だけを部分読みするのもアリだろう。なにより、「おわりに」のタイトルとして挙げていた、
「性」を学ぶことは、人生に立ち向かう力をつけること
という言葉には、深く頷(うなず)いた。かつての私がそうだったように、本書との出会いはきっと、あなたの人生の「これから」をささえる、確かな力となってくれるはず。気になったら、まずはページを開いてみてほしい。
- 電子あり
ユネスコが教えてくれた!
「多様性」「感受性」「人間性」「国際性」「社会性」「関係性」「自主性」「共感性」「創造性」「危険性」「革新性」……
「性」教育って、人間の生きる力教育だったんだ!
「人権」「安全」「健康」「ジェンダー」「LGBTQ+」……生きる上で知っておきたい大事なすべてを全部まとめて、科学的に学ぶ、ユネスコの包括的性教育を、5~18歳の学習年齢にあわせて、わかりやすい本にしました。
学校では教えてもらえない、国際基準の性教育で、子どもの安全、人間関係、「断る力」「断られる勇気」など大事なことが学べます。
国際化の進む社会で必要な「国際」性が身につく「世界基準」の性教育……をのぞいてみませんか?
説明しづらいことを科学的ファクトにもとづき、説明する「子どもパート」と、子どもとの向きあい方が見えてくる大人パート。2パートで、親子で、たくさん話すチャンスがいっぱい。
「自分のこと」「からだのこと」「他の人のこと」……、さまざまな科学や統計から、起こりえる「リスク」を避ける知識が得られます。
5歳・8歳・12歳・15歳の4段階で学習することが具体的にわかる5-18歳までのユネスコ包括的性教育。
「ユネスコ国際セクシャリティ教育ガイダンス」の翻訳者のひとりである田代美江子先生が、日本の社会に合わせてポイントを監修。
◆構成
まんがによるイントロダクション/年齢別になに学ぶ?/みんな悩んでる 年齢別Q&A/キーワードコラムでもっとわかる性教育
レビュアー
元書店員。在職中より、マンガ大賞の設立・運営を行ってきた。現在は女性漫画家(クリエイター)のマネジメント会社である、(株)スピカワークスの広報として働いている。
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