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指原莉乃に女性リーダーの在り方を見た
昨今、女性の社会進出がうんたらかんたらとはよく言われますが、私がOLだったことのことを思い出すと、正直、女性で人の上に立ってもまったくいいことはないし、できれば避けたいと考えていました。
しかも当時は、ほとんど自分の仕事に裁量もなかったし、意見を求められることもなかったのでふてくされていたし、突然仕事で抜擢されても「どうせ私なんて…」と思ったことでしょう。
人の上に立てば苦労が増えます。後輩女子からは、仕事に生きる先輩なんてあんまり憧れられないだろうし、男性からも怖がられそうだし……と、いろいろネガティブなイメージが先行しています。
でも、若干21歳(もうすぐ22歳)の指原さんは、人の上に立ったことで自分がどう思われるかということはまったく気にもかけていません。そして、野村克也や古田敦也のように、さらりとHKT48の劇場支配人とアイドルを兼任するプレイングマネージャーをやってのけています。
そのモチベーションは、本によると、「ひとりで1番になってもしょうがないです。私はHKT48のみんなで、1番になりたいんです」というところから来ているし、もっとつきつめれば「死にたくない」「自分が一番幸せでありたい」ということから来ていると思います。そして、そのためには太鼓持ちと言われようが、性格が悪いと思われても構わないとのこと。
指原さんは、21年間の人生の中で、随所で自分で生きる方法論を見つけています。例えば、企画書には絶対無理だとわかっているものを入れておいて、本命の企画が引っかかるようにするとか、内田裕也さんのような目上の人と話すときも目をそらさず、ちょこちょこ自分の意見をはさむとか、弱音を吐くときは、どばっと吐きだすと周囲が引くからちょうどいいさじ加減で吐くなどなど。
中でもすごいなと思ったのは、「すごい偉い人にはフランクに、ちょっと偉い人には丁寧に」というものです。でも、そんな一見計算高いメソッドのどれも正しいと思えるし、とにかく「生きるのに必死なんだな」と思えて、イヤミがないのです。
また、この本の中には、もしも女性が上司になったときに参考になりそうなエピソードもありました。それは、自分がグループを良くするためにHKTに送り込まれたからこそ、後輩とため口でしゃべったりしてフランクな関係になるのはいいけれど、後輩たちに媚びるような態度をとったり、こちらから話しかけて機嫌を伺うようなことはしない、というもの。
これから女性が会社で偉くなっていくとき、確かに後輩や部下に気遣ってしまうことがあるはず。人の上に立つことに慣れないし、後輩に「お局様」と言われるのも怖いことですから想像がつきます。でも、仕事の上では、きちんと距離をおいて威厳を保つことも必要なことかもしれません。
こんな風に、指原さんの方法論には、女性がリーダーになるときのヒントがたくさんあるような気がするのです。
レビュアー
1972年生まれ。フリーライター。愛媛と東京でのOL生活を経て、アジア系のムックの編集やラジオ「アジアン!プラス」(文化放送)のデイレクター業などに携わる。現在は、日本をはじめ香港、台湾、韓国のエンターテイメント全般や、女性について執筆中。著書に『K-POPがアジアを制覇する』(原書房)、共著に「女子会2.0」(NHK出版)がある。
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