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今こそ、私たちが考えることすべてを考えつくさなければならない時なのだ

原発の倫理学
(著:古賀茂明)
2014.04.16
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輸出も含めて原発の再稼働に舵を切った安倍政権ですが、その流れの中にある私たちの位置を知るためにも読んでほしい一冊です。それもできれば後ろから読んでほしいと思います。この3年間、本質的なものはなにひとつ解決されずに過ぎてきたことが分かるような気がします。

オリンピックプレゼンテーションでの、安倍総理の「汚染水は統御」発言で終わっているこの本ですが、それ以後の私たちの今をふくめて、ここでもう一度考えるもとにもなる一冊だと思います。

一読して、3年前の事故から、何が変わったのか、何を問いかけられているのか、何が明らかになったのかを考えると暗澹たる思いにかられるほど、何もできていないのではないかとも思えるのです。原発の再稼働の諾否を問うまえに、あの時何があり、何ができなくて、何ができたのか、間違えたのは何なのか、それらの検証は十分になされているとはとてもいえないのではないでしょうか。

先般の都知事選で小泉純一郎・細川護煕連合が「原発ゼロを目指すべきだ」とアピールし、注目を集めました。都知事選の論点に原発がふさわしいかどうかは異論をもたれる人も多いかもしれませんが(といっても東京都が最大の電力消費地域であるのも確かですが)、ともあれ、それがある種の人間性への問いかけをしていたことは確かにあると思います。

古賀さんはさらに一歩すすめて、徹頭徹尾、日本の社会システム、経済システムが持っている非倫理性を問うています。利益とは何か、誰のためのものか。効率性とは何か、何を目指して主張されているものなのか。

そして原発の持つ非倫理性を明らかにしていきます。一見、経済や技術と倫理性は無関係にも見えますし、古賀さん自身も自分の主張を、感情的、主観的なものだと他の人々から断じられてきました。おそらく今でもそうだと思います。もちろん古賀さんの主張のもとになるデータは主観的なものでも感情的なものでもありません。

その上でいえば、やはり遠い未来へつけをまわすことになる核のゴミ問題はきわめて倫理的な主題なのだと思います。100年しかない人間の寿命に対して放射性廃棄物は遙かに長い年月、その影響を地球に与え続けます。それは経済効率ではかる限界を超えているのではないでしょうか。将来につけをまわさないためにと、私たちの未来のためと称して、社会保証の財源として消費税をあげた人たちは、遠い未来には責任がないとでもいうのでしょうか。悪いジョークにすら思えてしまいます。

少なくとも今こそ、私たちが考えることすべてを考えつくさなければならない時なのだと思います。もちろんそのまえに収束が見えない3年前の事故の全容解明とその後の影響の徹底的な検証はなされなければならないと思います。その上で、私たちがこの3年間で感じたこと、さらに私たちが選んだ政治家がどのような言動をしたのかをふくめて、私たちは何をするべきなのか、何を選ぶべきなのかをもう一度考える時が今なのだと思います。そう私たちを強く押す一冊なのだと思います。

レビュアー

野中幸宏

編集者とデザイナーによる覆面書籍レビュー・ユニット。日々喫茶店で珈琲啜りながら、読んだ本の話をしています。

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