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植物が動く!飛ぶ!走る! 驚異の姿を収録した動く図鑑「MOVE」

植物 新訂版
(編:講談社 監修:天野 誠/斎木 健一)
2024.07.30
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図鑑の定番ジャンル「植物」の革新

講談社の図鑑シリーズ「MOVE」から、待望の『植物 新訂版』が登場した。『恐竜』や『昆虫』『』『』といった定番ジャンルはすでに新訂版が出ていて、今回同時発売される『動物』は新訂二版。『植物』の初版発行が10年前ということを考えると「ようやく」という感じ。

「MOVE」の『植物』図鑑は、初版のときから、植物が見られる場所(まち、田畑、雑木林、山)が章としてあり、その場所ごとに春夏秋冬が展開する構成だ。コケ植物、シダ植物、裸子植物、被子植物のマメ科・ナス科……といった植物分類体系で展開するのではなく、子どもが公園や田舎に行って「あの植物はコレだ!」という使い方を想定している。新訂版でも、それは変わらないのだが……、ここからが本題!

(以下、クールポコ風に読んでください)
「MOVE」が『植物』の新訂版を出すのに、とんでもない挑戦をしてるんですよ!
な~にぃ~! やっちまったなぁ!
「MOVE」は黙って
背景黒バック!
「MOVE」は黙って
背景黒バック!
なんだか植物がイキイキして見えるよ!



サボテンとか大人の趣味向け図鑑ではあったが、子ども向け植物図鑑で背景黒バックは初めての試み。試しに初版の同じタンポポのページ(白バック)を見較べたけど、黒バックの方が断然生命力を感じる。すっごく、みずみずしい(印刷的に言うとシズル感が爆上がり)! タンポポにこの言葉を使うとは思わなかったけど、「かっこいい」のだ。『動物』図鑑のライオン、『恐竜』図鑑のティラノザウルス同様に、タンポポがかっこいい! 図鑑の背景は白って固定観念を、シレッと変えちゃって。これって、すごい試みですよ! 

とはいっても、全ページが黒バックというわけではありません。例えば赤い花の植物が載っているページは白バック(黒と赤の組み合わせは、赤色が沈んで見えるから)。あと、イネ科とかの葉や茎がシュッと細い植物は、黒バックにすると細部が見えなくなるから、これも白バック。そこんところは、よーく考えてあります。

それから、今回追加されたマツダケン氏の筆によるイラスト2点。これが秀逸なんです。



サクラの葉が、季節の移り変わりと共にどう変化するかを解説したこ1枚。本当に素敵!
巻頭近く「地球は植物の星」というイメージイラストも、すんばらしいので、是非書店で見てください。

新たに追加されたページはまだある。まずは日本の植物分類学の基礎を築いた一人、牧野富太郎の紹介。彼に続かんとする将来の植物学者のために、新種を発見して発表するまでの流れを解説するページもある。

興味深かったのは「木と草はなにがちがうの?」というページ。この問い、答えられます?



実は、草と木をはっきりと分けることはできないのだとか。分けるとすれば
(1)二次組織が大きく成長するかどうか。
(2)地上部が何年も生き続けるかどうか。
(3)ひとつの茎に繰り返し花が咲くかどうか。
がポイントになるのだけれど、これでいくとバナナは草で、ココヤシやマダケは草とも木ともいえる……。知らなかった。

驚異! 動画で見る植物の活動

さて、「MOVE」といえばNHKエンタープライズが制作した動画がウリ。「動物」や「昆虫」といった動くものなら動画も楽しいだろうけど、さすがに「植物」は地味なのでは? と思ったら、植物のアグレッシブな生存活動がばっちり動画に収められていました。

例えば虫にモリモリと葉を食べられる植物。しかし、食べられっぱなしじゃない。特殊な顕微鏡映像で見ると、植物はかすかに発光し「それ以上食ったら、腹、壊すどー」とばかりに毒物質を生成し始める。さらに、におい物質を発生し、まわりの植物に危険を知らせたり、葉を食べる虫の天敵昆虫を呼び寄せたり。植物が感じ、聞き、反応し、防御し、コミュニケーションすることを見せてくれる。「虫に食べられた」以外にも「乾燥してきた」「暑くなってきた」「触られた」「光が強くなってきた」といった情報も植物間で交換しているという。「樹々のざわめき」って言葉があるけれど、あれ、本当なのね。

それから、楽しいのが花粉や種をなるべく遠くに飛ばそうとする植物たち。海の上をつつつーっと滑って、めしべにたどり着く白いウミショウブの花は、芽生えシーンじゃないけど「萌え!」。同じく羽根に風を受けて、クルクル回りながら種を飛ばすツクバネやアオギリにはホッコリ。でも、同じ植物でも胞子を飛ばす、苔やツクシ、シダの接写映像には背筋がゾゾゾっ!です。これらの動画はDVDに収録されているけれど、最近の「MOVE」はスマホでも視聴可能です。

あとひとつ、この図鑑の面白い編集の遊びを見つけた。
食虫植物のハエトリグサの左右の葉(捕虫葉という)が、ページを閉じる本の「のど」の左右に分かれて描かれている。このページをめくると葉が閉じて、まるでダンゴムシとハエが捕えられたみたいになるの! こういうの、好き!

『植物 新訂版』書影
編:講談社 監修:天野 誠/斎木 健一

植物が動く! 飛ぶ! 走る! 驚異の姿を収録した66分のDVD&スマホで見れるストリーミングつき。
美しい瞬間をとらえた鮮明な生態写真と、児童向け植物図鑑としては初の黒背景を採用! 
精密なイラストで解説する最新研究のコラムも盛りだくさん。理科学習への興味を引き出します!

<植物新訂版の特長3つをご紹介>
■NHKのスペシャル映像
「巨大植物・ラフレシアの開花」「海上を走って受粉! ウミショウブ」
など、植物の美しく貴重な映像が満載です。
大人気のウツボカズラやムジナモ、ハエトリグサなどの食虫植物もボリュームアップして登場!
あまり動くイメージのない植物が動きまくる姿に、親子で一緒に見入ってしまうこと間違いなしです。

■児童向け植物図鑑初! 黒背景を採用
新訂版では一部のページが黒背景になっています。
今まで白い背景では見にくかったサクラやシロツメクサなど、淡い色の花びらまではっきりくっきり観察できます。
コマツヨイグサとオオマツヨイグサなど、イラストでは個体差の見分けがむずかしい種類も分かるよう、図鑑の写真も高解像度写真に一新。
美しい生態写真&初の黒い背景で植物のすみずみまで見渡せます!

■植物が会話している!? 最新研究のコラムも
キャベツがボディーガードを呼んでいる!?
最新研究を誌面とDVDで分かりやすく解説します。
植物の隠されたコミュニケーションのひみつまで大解剖!
他にも、「恐竜時代の植物」の完全再現から、ソメイヨシノの美しい1本の幹で紹介する「紅葉のしくみ」、マンガで分かる「新種発見への道」、夢の植物図鑑を完成させた「牧野富太郎博士」について、などなど何度見ても楽しいコラムページが盛りだくさん。

<担当編集者のオススメ!>
大胆な写真と映像により、従来の植物図鑑よりも圧倒的な、リアルな姿の植物を紹介しています。
切り抜き写真、背景のある生態写真、見分けるポイントはイラストと、1種の植物を様々なビジュアルで見ることができるのも特徴です。地球は実は植物の星! 図鑑とDVDを通して、身近な生きものである植物の面白さに夢中になり、より深く知りたいと感じてくれることを願っています!

レビュアー

嶋津善之 イメージ
嶋津善之

関西出身、映画・漫画・小説から投資・不動産・テック系まで、なんでも対応するライター兼、編集者。座右の銘は「終わらない仕事はない」。

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