王道といえる展開は、安定感があって小気味よくて、テンポ良く読めるから大好きなのですが、『花嫁と悪魔の約束』は、まさにコレ。
“読めば心ときめく王道ラブファンタジー”というだけあって、これらの要素がしっかりと詰まっていて思わず、こうこなくっちゃ!!と言いたくなります。
母を亡くし、侯爵家に引き取られたマリーは、「明るく元気にがんばっていれば、いつか幸せになれる」と信じ、村人にも親切な気立てのいい女の子。
ところが、お金に目がくらんだ侯爵が決めた結婚相手は、誰もが恐れる“悪魔公”。
税に苦しむ村人や侯爵家のために、悪魔に食べられることも覚悟してアルバート城にやって来たマリー。
ところが “悪魔公”ことカイン・アルバート公爵は、黒髪に涼やかな紫の瞳を持つイケメンだったのです。
この差し出された指先!! 今にも飛び出してきそうで、何度見返してもドキドキしてしまうのは私だけでしょうか!?
初対面でこんな顔をされたら、一瞬で恋に落ちてしまいそう。
ところがふたりにとっては、これが初対面ではなかったのです。
こんなセリフをこんなイケメンに言われた日にゃ、間違いなくまた恋に落ちる!!とニヤニヤしてしまいました(笑)。
ところが、マリーはまったく覚えていないのです。
こうして、婚約者としてお城で暮らすことなったマリー。
お城では、カインが家族と呼ぶ、乳兄弟のアッシュ、秘書のルカも暮らしていて、タイプが違うイケメンの登場に、そりゃあ薔薇の花も咲きまくっちゃうよね~と、テンションが上がってしまいました。
3人のイケメンと一緒に暮らしながら、花嫁修行をすることになったマリー。というのも、貴族の子女が初めて国王に拝謁(はいえつ)する儀式「花のお披露目(フルール・リナリエース)」で、社交界デビューするためでした。
粗野な娘がレディに仕立てられていく話といえば、往年の名作映画『マイフェア・レディ』が思い出されますが、『不思議の国のアリス』を連想させるワンシーンがあったり、シンデレラ城みたいなお城が出てきたりと、女の子の好きな世界観が満載です。
ちなみに私の頭の中では、冒頭から『オペラ座の怪人』の音楽が鳴り響き、途中から『ビューティ&ースト』に変わりました(笑)。
主人公のマリーも、ただ元気で明るいだけでなく、健気だったりコメディタッチで描かれていたりで、くるくると表情が変わってめちゃくちゃ可愛いのです。
と、ここまでは陽気な “王道ラブファンタジー” なのですが、ときおりダークな要素が入ってきて、そのときのカインの残忍で冷たい顔といったら!!
カインの裏の顔を知っているアッシュとルカは、ふたりの結婚を手放しで喜んでいるわけではなさそうで、どちらかというとマリーを追い込んでいるようにも見えます。
でもそれは、カインのためなのか、マリーのためなのか……。
一体カインには、どんな秘密があるのか、なぜ“悪魔公”と呼ばれているのか、初恋は成就するのか、謎に満ちたこれからの展開が、楽しみな作品だと思いました。
レビュアー
「関口宏の東京フレンドパーク2」「王様のブランチ」など、バラエティ、ドキュメンタリー、情報番組など多数の番組に放送作家として携わり、ライターとしても雑誌等に執筆。今までにインタビューした有名人は1500人以上。また、京都造形芸術大学非常勤講師として「脚本制作」「ストーリー制作」を担当。東京都千代田区、豊島区、埼玉県志木市主催「小説講座」「コラム講座」講師。雑誌『公募ガイド』「超初心者向け小説講座」(通信教育)講師。現在も、九段生涯学習館で小説サークルを主宰。
公式HPはこちら⇒www.jplanet.jp