遠山えま先生デビュー20周年記念作品である『魔女メイドは女王の秘密を知っている。』は、とにかく盛りだくさんの王宮ファンタジー。
こんなに細かいところまで描いてあってすごい!!という贅沢なドレスを纏った女王陛下に、見目麗しい5人の王子、中世のお城のような宮殿に豪華な調度品の数々と、どのページを見てもうっとりします。
さらに、きらびやかな宮廷舞踏会に魔法陣や黒魔術も出てきて、ファンタジー好きにはたまらない!!
未来が視える予知能力があるため魔女だと恐れられ、何度も婚約破棄をされてきたリズ。
養父母からも疎まれ、自ら命を絶とうとしたそのときでした。
「その命 わたしがもらい受けよう」と現れたのが、リンフィリア国のシュリエス女王陛下。
こうしてリズは、女王陛下付きの唯一のメイドとなったのです。
王宮には、失踪した第1王子を除く5人の王子がいました。
5人の王子が出てきた途端、私だったら誰を選ぶかなぁとワクワクしながら見ていたのですが、王子たちの仲は良いとは言えず……。
特に第3王子のデトワールは、王位を狙うなかなかのくせ者。
先代王の突然の崩御で、7歳で王位を継承してから10年、弱体化した国を建て直したシュリエス女王陛下。
しかし結婚して世継ぎを産まなければ、陛下に何かあったとき、5人の王子が王位をかけた争いをするのではと国民の不安が広がっていました。
そこで女王陛下はリズに、こんな頼みごとをします。
ええっ!? 女性同士なのにどういうこと?? となりますよね。
でもリズは、女王の未来が視えてしまったのです。つまり「女王の秘密」を知ってしまったわけです。
ネタバレになるので詳しくは書けませんが、なるほど!! だからこのタイトルがついたのか!! と納得してしまいました。
王宮に上がるとき、「すべてを女王陛下にお捧げします」と誓ったリズですが、「わたしの子を産め。これは命令だ」と子どもを産むことだけを求められたら、女性として複雑な気持ちになるのは当然です。
そのため、リズと女王陛下との間がギクシャクし始めます。
そんなとき、またしても未来が視え危険を察知したリズは、女王の命を助け、昏睡状態となってしまいます。
そこに登場するのが、黒魔術を操る魔術師!!
そもそも黒魔術を使うことは大罪に値し、何やら思惑がありそうなこの魔術師は、女王陛下の味方なのか何なのか?
そんなことを思っていたら、いつも優しい第2王子のリュシオンも実は裏があるのではないかと勘ぐりそうになりました。
きっと女王陛下もこんな感じで、心から信用できる人間が誰もいないのでしょう。だからこそ、唯一のメイドとしてリズをそばに置き、秘密も打ち明けたのでしょう。
そんなシュリエス女王陛下の孤独と命がけで国を守り抜く芯の強さは、遠山先生が描く絵からもビンビン伝わってきます。
やっぱりシュリエス女王陛下カッコイイ!!
リズ、女王陛下を頼むよ!!と思わず言いたくなります。
ふたりの間に5人の王子たちが、どう絡んでくるのか気になりますが、いずれにしても、盛りだくさんの大掛かりな展開となりそうで、早く続きが読みたいと思いました!!
レビュアー
「関口宏の東京フレンドパーク2」「王様のブランチ」など、バラエティ、ドキュメンタリー、情報番組など多数の番組に放送作家として携わり、ライターとしても雑誌等に執筆。今までにインタビューした有名人は1500人以上。また、京都造形芸術大学非常勤講師として「脚本制作」「ストーリー制作」を担当。東京都千代田区、豊島区、埼玉県志木市主催「小説講座」「コラム講座」講師。雑誌『公募ガイド』「超初心者向け小説講座」(通信教育)講師。現在も、九段生涯学習館で小説サークルを主宰。
公式HPはこちら⇒www.jplanet.jp