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2023.02.05

レビュー

ブラック企業から異世界の魔導士に!? 美人エルフと過ごす異世界転移ライフ

異世界転生すればハッピーになる?

本屋さんのマンガ売り場には、ときどき「異世界」とか「異世界転生」といったジャンルの棚がドーンと置かれている。少女マンガ、少年マンガ、青年マンガ、異世界転生! といった具合だ。文庫本の時代小説コーナーみたいなものだろうか。もう大人気。出版社の垣根を越えて、あんな異世界こんな異世界がそろってる。

異世界転生は、「現世で救済されないから来世に期待する物語」ではない。来世まで待っていられないというか、現世の自分を保ったまま外部環境だけフルリセットする物語だ。死をいい感じに回避している。で、異世界では無双できちゃうとかね。



この「あっちの世界はこっちよりいいよな」が積み重なって生まれた異世界は少なくないはず。でも本当にこっちよりいいんだろうか?

内心「仮に異世界があったとて、そんなにうまくいくものかね」と思いながら本屋さんにそびえ立つ異世界の棚を眺めていたのだけど、『そんなヒロキも異世界へ』はまさに私の気持ちを見透かしたような異世界転移ものだ。クスクス笑いながら読んだ。



魔導士の姿にものすごく見覚えがあるというかスーツだし、魔導漫才師とかいるんだ? この異世界どうなってるの?

来ちゃったな異世界

主人公の“ヒロキ”はブラック企業に勤めるサラリーマン。給料は低く、離職率と上司からの圧だけは無駄に高い。通勤時間は片道90分。マンガアプリを愛用しているが無課金勢で好きなジャンルは異世界転生もの。そんなヒロキにも異世界からお呼びの声がかかるのだ。



最低最悪の瞬間に異世界へのお誘い。もう待ってましたと言わんばかりに異世界に行こうとするヒロキ!



私もこの天の声に全面的に賛成だけど、ヒロキは何でもやるそうなので、そのまま異世界に召喚される。召喚された先はニム国の王城で、王宮魔導士の“ミリア”がヒロキを呼んだらしい。この世界でのヒロキは魔導士候補体なのだという。ってことで訓練が始まる。



ウキウキのヒロキが力むと?


魔法は全然出てこないし、ミリアさんはウケている。しかもちょっと安っぽい名称のリングをはめると魔導士になれるインスタント仕様。なにもかもがユルい。

ユルユルだけど、ここはやっぱり異世界だから楽しいのだ。ヒロキが元いた世界とはちょっとずつ違うし、その違いを見つけるのがおもしろい。



女性の耳は乳首よりもプライベートなパーツなのだそう。で、ああやっぱりここは異世界なんだなあ、ついに来ちゃったなあってニコニコしていると……?



ブラック企業の上司の暴言と一語一句同じセリフを浴びせられる。ヒロキよ、異世界でも苦労しそうだね。

あなたがいるから来てよかった

右耳から炎を出したり、うっかり魔導石焼きイモ屋さんにされかけたりしながら、ヒロキはこの異世界で魔導士の修行を積んでいく。



これは実質逆立ちの特訓だけど、なんだか楽しそうだからいいか。もちろん座学だってある。



スマホと紙とペンを使って魔法の勉強中。ヒロキはコツコツ頑張れる人なんですよね。そんな彼のことをミリアさんも応援してくれる。



勉強中に夜食の差し入れ! 異世界だけど日本の受験生の家みたいだ。異世界の夜食ってどんなお料理?



うーん! 私はシャケシャザーンを食べてみたい。ちなみにシャザーンの材料についてはオマケのマンガで紹介されている。びっくりした。

なーんだ、異世界に転移しても結局は似たり寄ったりの現実があるんじゃないかと笑っちゃうけれども、それでもヒロキの異世界転移は大成功だったと思う。少なくとも片道90分かけて通勤して「お前の代わりなんかいくらでもいる」なんて言われないし、何よりミリアさんが側にいる。そう、「誰がいるか」によって、世界はまるで変わるのだ。



ミリアさんに大切にしてもらえるヒロキ、ここに来てよかったよね。がんばってね。

レビュアー

花森リド イメージ
花森リド

元ゲームプランナーのライター。旅行とランジェリーとaiboを最優先に生活しています。

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