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2023.02.18

レビュー

80歳おばあちゃん、18歳になる。突然の若返りは、喜びと驚きと戸惑いの連続!

80歳の老婆が18歳に若返った話と聞けば、ありがちな転生ものをイメージするかもしれませんが、この『18=80(エイティーン エイティ)』は違います。
ひとつひとつのエピソードが絶妙で笑えて、今こうして生きていることすら凄いことなんだなぁと、心が温かくなります。

肺ガンで余命3年の飴屋幸子(あめやさちこ)80歳 は、「老人やるのも悪くない」とひとり暮らしを楽しんでいたのですが、肺炎をこじらせ、突然亡くなってしまいます。

ところが、幸子の身元保証人である隣のアパートの住人、胡桃仙太郎(くるみせんたろう)が病室に入ると、死んだはずの幸子が18歳として生き返ったのです。



 

実は、生き返るシーンはどんなふうに描かれるのかな?と思っていたのですが、これを見てこの先も期待できる!と確信しました。

永久歯も生え、おっぱいの位置も上がった!? 生まれ変わりの幸子が、真っ先にやりたいと思ったのは、夫の善哉(よしや)と旅行をした熱海に行くこと。
しかし……、




迎えに来てもらった仙太郎と、その足で買いに行ったのはスマートフォン。
これには、なるほど! 確かに!!と思ってしまいました。今の時代、スマホがなければ何もできないほどの必需品ですからね。

若返ることができるなら、若返りたいよ!!と心底思っていたのですが(笑)、「歳だから」を言い訳にできない不便さもあるのだなと気付かされました。
でも、もう一度人生をやり直せるチャンスでもあるわけです。

やり残したのは人に関することばかりだと気づいた幸子は、仙太郎と共に音信不通のひとり息子、楓(かえで)を探し始めます。

この後も、笑えるエピソードが続くのですが、ちょっぴり切なくなることも。
それは、今までの友人が友人ではなくなるということ。歳が違いすぎて、誰も今の幸子が昔の幸子と同一人物だとは思わないので。

「長く生きることが罰ゲームみたいだ」という幸子のセリフに、1999年に映画化されたスティーブン・キングの小説『グリーンマイル』を思い出しました。

この作品も、長生きし続けることの辛さが描かれていたのですが、『18=80』は“飴屋幸子”という人間が少しずつ消えていく切なさも加わります。



幸子は、この時代に合わせた生き方をするため、飴屋幸子の孫の“さき子”と名乗ります。それは、病気のため8歳で亡くなった妹の分も生きることでもあったのです。

実は私も、若くして戦争で亡くなった叔父の分も生きなければと、最近思うようになりました。会ったこともなければ、写真すら残っていないのですが、生きたくても生きられなかった人たちがいるということを笑いを通して思い出させてくれます。

だけど、しんみりした話で終わらせないのが、この『18=80』の良さ!!
なんとなんと、女の子特有のアレの話や、ワンナイトラブ!?まで出てきて、深いところまで斬り込んでくるなぁ、攻めてるなぁ、と思いました。

それもそのはず、最後のページに、たくさんの方々に取材させてもらったという岩渕竜子先生の感謝の言葉があり、だからこんなにリアルなのか!!と、納得しました。
一体、どんなエピソードが出てくるかは、ぜひご自分で確かめて下さい。
特に女性であれば、「確かに!!」とか「あるある!!」と思うこと、間違いなしです。

レビュアー

黒田順子

「関口宏の東京フレンドパーク2」「王様のブランチ」など、バラエティ、ドキュメンタリー、情報番組など多数の番組に放送作家として携わり、ライターとしても雑誌等に執筆。今までにインタビューした有名人は1500人以上。また、京都造形芸術大学非常勤講師として「脚本制作」「ストーリー制作」を担当。東京都千代田区、豊島区、埼玉県志木市主催「小説講座」「コラム講座」講師。雑誌『公募ガイド』「超初心者向け小説講座」(通信教育)講師。現在も、九段生涯学習館で小説サークルを主宰。

公式HPはこちら⇒www.jplanet.jp

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