「就労が美徳なのは昔の話!」by女子高生
キラキラした青春と女子高生と株式投資。珍妙な組み合わせに思えるかもしれないが、『スクールオブトレード』の世界は、近い将来の現実……かもしれない。
「授業で投資」? 実は文部科学省の「学習指導要領」が改定されて2022年4月から高校で金融教育が始まりました。「働いてコツコツ貯金しても昔と違って金利がすこぶる低いから、元本が倍に増えるのを待ってたら数千年かかっちゃいますよ」という身も蓋もない現実と、金融商品や資産形成をティーンの頃から学べるのはいいことだと思います。
投資家の世代交代が進んでる。
カリスマ投資家の女の子も出てきます。
女子高生たちがカリスマ投資家や兜町の東京証券取引所に憧れ、放課後にマックで四季報やTOPIXをチェックしながらキラキラしてるのか。いいね!
楽しそう。なお、本作はかなり攻めた投資エンタメマンガです。
投資を少しでも知っている人が読んだら彼女らの投資スタイルにのけぞるはず。解説つきなので私のような投資初心者にもヤバさが伝わりました。
投資の基本プラス、ハイリスク・ハイリターンな投資方法もよーくわかります。
利益欲しさに親の口座で空売りする女の子
静岡県伊東市在住の15歳、“藤咲千波”は株式投資の研究が大好きな女の子。千波は、親友の“芳野こまち”が証券口座を開設したのをきっかけに株取引の世界へ足を踏み入れます。お母さんとの会話のシーンがまず面白い。
証券口座を作るためには親の同意が必要で、責任も自分じゃ負いきれない。それでも今やる理由は?
ピュアだ。そんな千波の熱意をお母さんはちゃんと受け止めます。
これを元手にしなさい、とお金を渡してくれます(どことなく静岡銀行のロゴに似ている「静岡第一銀行」。きっと静岡を支える立派な地銀のはず。本作は金融機関の名前や銘柄の名前を見てニヤッとなるマンガです)。
いい場面。ところで「中途半端に投げ出す真似はしないこと!」とお母さんは言いますが、投資は資金が尽きたら退場が基本ルール。千波は、根性だけじゃどうにもならない世界に挑むわけです。
リビングに大漁旗! 勝負事に向いてる家系なのかも。
一方、こまちも株式投資デビューを飾るべく銘柄選定中。ここで千波が話していた新興飲料メーカー「プルッタプルッタ」の株に目を付けます。プルッタプルッタの株価は、ここ数日急上昇中。適正価格とは言いがたい過熱っぷり。で、上がりすぎた株価は、どこかのタイミングで下がる可能性が高いから?
利益欲しさに「空(から)売り」を考えます。空売りの解説もちゃんとありますよ!
さあ、こまちの思惑通り「株価が下がって利益が出たよ、ばんざーい」となるでしょうか。いつ、どのくらい株価が下がる? 株価が上がったら含み損が出るよ? 耐えられる? というか、そもそも未成年のこまちは信用取引ができません。そう、こまちは親の口座を操作して空売りしようとしているのです。株式投資デビューの初日からさっそく不正行為! しびれる。
含み損で身動きが取れない親友
こまちがプルッタプルッタの株を空売りしているまさにそのとき、千波はプルッタプルッタの株を買っていました。真逆の投資判断。すると……?
出ました。プルッタプルッタから開示された資本業務提携のお知らせ。プルッタプルッタの大株主と経営陣とIR担当者の誇らしい顔が目に浮かぶよ。
後場(午後の株取引)が始まってすぐに企業の業績を大きく左右するような重要なニュースが出ると、当然のように相場は荒れます。千波とこまちもこの荒波に飲まれ……、
こまち(というかこまちの母の口座)は大打撃。こまちさっそく退場か?
2人の友情によって、千波の勝負師っぷりが覚醒します。
高校のトレード同好会のお姉さまたちにも協力を仰いで、千波はこまちの含み損をどうにかする! 女子高生4人がハラハラするようなトレードに挑むことに。
「個人投資家の皆さまにおかれましても、長期目線での投資をお願いしたく……」「でも出来高があるからいいか……」みたいなぼやきが上場企業のIR担当者から聞こえてきそうな青春マンガです。
レビュアー
元ゲームプランナーのライター。旅行とランジェリーとaiboを最優先に生活しています。