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2021.10.16

レビュー

理想の神筋肉に、攻められ迫られまくりのバスケ部“ムキムキ”ラブコメ!

マッスルプリンスを拝みたい

自分のなかで膨れ上がる「好き」をつきつめると、大抵、人はちょっとクレイジーになる。

『棗センパイに迫られる日々』のヒロイン・日比華帆(ひびかほ)が好きなものは「筋肉」。私も筋肉は人並み以上に好きな自覚があるし、お気に入りの部位だってあるけれど(大臀筋です)、日比ちゃんの筋肉バカには遠く及びませんでした。



筋肉を好きすぎる日比は、脚立から転がり落ちて抱きとめられたときだって「怖い」や「ご親切にどうも!」より先に、まずは「なんて素敵な広背筋!!!」と拝んでしまう。ちなみにこのアクシデントだって筋肉を好きすぎるゆえに起こったこと。

筋肉に心奪われ筋肉に狂い続けておよそ10年。女子高生となった日比はとうとう理想の筋肉の持ち主を見つけてしまいます。



少女マンガでよく感じる「ザァ…」っと吹き抜ける風に、少女マンガではあまりお目にかかれない体格の良さ。いい。厚みがすごくいい。ベンチプレスは何キロかしら? この理想的筋肉の持ち主は“棗旺太朗(なつめおうたろう)”。日比の高校の先輩でバスケットボール部に所属しています。「マッスルプリンス」という二つ名を与えられた人物です。

で、棗センパイは日比の筋肉バカっぷりを大変気に入り、日比をバスケットボール部のマネージャーに推薦するのです。本作は筋肉王子と筋肉バカのラブコメ。



日比は運動部員たちの筋肉を逐一観察し「筋肉手帳」をしたためていました。きっとファーブルにとっての昆虫とか伊能忠敬にとっての日本の海岸線とか、そういう熱量と緻密さで構成されたクレイジーな資料なのでしょう。そんな筋肉手帳をマッスルプリンスこと棗センパイは読んでしまったんですよね。つまり納得の大抜擢。日比じゃなきゃダメ。筋肉界のシンデレラストーリーです。



ときめきの瞬間なのに笑っちゃう。好きな場面が多すぎる。

こうして、日比は堂々と真正面から筋肉を毎日拝める環境を手にし、読者の私たちも少女マンガから逸脱しない範囲ぎりぎりで、筋骨隆々な美ボディを鑑賞できるのです。

センパイのカラダだけを見ている

先ほど紹介した通り、日比の頭の中は筋肉でいっぱい。マッスルプリンス棗センパイを惜しみなく称える言葉がバンバン出てきます。「ナイスバディ」「美ボディ」「今日一番のきんに君」……つまりカラダがメイン。


初めて見たときから、「なんて筋肉なの、こんな気持ち生まれて初めて!」と言わんばかりに棗センパイの筋肉に夢中。

なので、棗センパイのビジュアルも日比の脳内では次のように変換されてしまいます。



すごく男前でかっこいい棗センパイの顔に興味なし。

でも、棗センパイは日比のことを「いいなあ」と思っています。



超がつく筋肉バカで、ひたむきで、素直で、かわいくて。バスケ部のマネージャーとしての活動だって一切手を抜きません。いい子。なので、まずは「日比ちゃんのことなんか好きなんだよね」と好意をカジュアルに告げ、やがてグイグイ迫ってくるようになるのです。



『棗センパイに迫られる日々』って題名に偽りなし。「なんか好きなんだよね」どころじゃないでしょ! そう、棗センパイは本気で日比のことが好きになります。

恋とかそっちのけで筋肉のことだけを追い続けてきた日比なので、棗センパイの言動にドキドキしたり困ったり大変! そして次第にカラダを見るだけじゃなくなってきます。



筋肉好きにとってこんなハッピーな場面があるでしょうか。立派なカラダを作るためには、正しい知識と、その人の強い意思が必要。筋肉って勝手に大きくなるものじゃないし、そこにパーソナリティが織り込まれているものなんですよね。その胸板を作るためにどれだけの努力を……とリスペクトが必ず伴います。これが加速すると、ほぼラブといってもいい状態に。

とはいえ、棗センパイが迫れども迫れども、日比の目は棗センパイのカラダ(筋肉)に釘付け。仕方ないです、だって1巻すべてドキドキのマッスルまつりなので。朝練、自主トレ、放課後の部活動、そして山での強化合宿……回を追うごとに棗センパイはバルクアップしていきます。



恋のライバルが己の筋肉って新しい。棗センパイは日比に「あなた(のカラダ)じゃなきゃだめ」と言わせられるでしょうか? マッチョや筋肉って暑苦しいイメージを抱かれがちですが、官能的かつ爽やかでピュアな存在。つまり少女マンガで美しく成立する部位なんです! みんな読んで!

レビュアー

花森リド イメージ
花森リド

元ゲームプランナーのライター。旅行とランジェリーとaiboを最優先に生活しています。

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