事件を解決に導くバディものは、今までにも色々とありましたが、忍者の末裔である女子高生と、ちょっとチャラい諜報員は意表を突く組み合わせ。
そしてもっと意表を突かれたのは、命がけで世界を救う重大な任務を遂行しつつも、随所に散りばめられた笑いです。
テレビアニメ化も決定した緩急自在なスパイアクションは、いきなり冒頭から見せ場を作ってくれます。
根来牡丹(ねごろぼたん)は、岐阜県の高校に通う17歳の女子高生。学校では友達を作らず、目立たないよう地味に過ごしていました。
そんなある日、牡丹が家に帰ると異変が……、
暴漢かと思われた男たちは、牡丹の実力を試しに来た日本安全振興株式会社の人間でした。
実は、牡丹は根来忍者第32代頭領だった爺ちゃんに育て上げられた諜報員だったのです。
いよいよ、「世界を救う時が来た」と爺ちゃんに言われた牡丹は……、
この意表を突く導入、先を期待させてくれます!!
そして凄腕の諜報員なのに、急に普通の女の子に戻る牡丹の変わり身の早さとギャップが、この作品の面白さでもあります。
通称「ミッションT」の任務に就くため、牡丹が向かったのはノルウェーの首都オスロ。市内を走る急行ベルゲンが突如、跡形もなく消えたかと思ったら、12km離れた繁華街に現れて建物に激突、大惨事が起きたのです。
これは「テスラの欠片(かけら)」のせいでワープしたのではないかと言う牡丹。
テスラとは、トーマス・エジソンもその才能に嫉妬したというニコラ・テスラ。彼はラジオ、蛍光灯、無線トランスミッターなど多くの発明をした天才科学者で、その発明の数々を18センチほどの水晶の欠片にそれぞれ閉じ込めたのです。
実は牡丹の爺ちゃんは、70年以上前にテスラからあることを頼まれていました。
私が世界中にバラまいた水晶の欠片(かけら)が暴走した時は
速(すみ)やかに回収してくれたまえ
「テスラの欠片(かけら)の回収」、それがすなわち「ミッションT」なのです。
この任務で牡丹がバディを組むことになったのは、日本安全振興株式会社の自称NO.1諜報員クルマ(22)。自尊心の強いクルマは、自分に相応しいのはベテラン諜報員だと思っていたので……、
しかし牡丹の読唇術、変装術、10ヵ国語が話せる語学力、身体能力を目の当たりにしたクルマは、少しだけ牡丹を見直します。
そんな2人の目の前で、今度は突然トラックがワープ。
何者かが「テスラの欠片」のロックを解除した可能性があり、2つの事件現場にいた男の子が、水晶を持っていることが判明します。
そして「テスラの欠片」の半径200m以内に時速160km以上で進む物体があると、勝手にワープすることもわかってきます。
そうとは知らず、男の子は水晶を持ったまま急行列車に乗車。
水晶を回収するため牡丹は、猛スピードで走行中の列車へ決死のダイブ!!
リミットの158kmが刻々と迫る中、牡丹が選択した方法は……、
ところが、任務完了!とはならず、「テスラの欠片」は盗まれてしまいます。
相手は「小さい家」と呼ばれる組織。
だからこそテスラは、発明の記録を100年後まで解けないよう水晶にロックをかけ、世界中にバラまいたのです。
新たな敵を前に東京に戻って来た牡丹は、新しい高校に通い始め、チームのメンバーとも共同生活を始めます。
情報収集や解析を担当するクールな高松隆之助は、クルマの同期でワケありの様子。チームリーダーも部長も、ちょっとクセのある人物で、そのあたりの絡みも面白くなっていきそうです。
『テスラノート』は、スパイものらしい派手なアクションシーンも見どころですが、それだけでなくバディものに欠かせない喧嘩や、随所に散りばめられた笑いも楽しめる作品だと思います。
レビュアー
「関口宏の東京フレンドパーク2」「王様のブランチ」など、バラエティ、ドキュメンタリー、情報番組など多数の番組に放送作家として携わり、ライターとしても雑誌等に執筆。今までにインタビューした有名人は1500人以上。また、京都造形芸術大学非常勤講師として「脚本制作」「ストーリー制作」を担当。東京都千代田区、豊島区、埼玉県志木市主催「小説講座」「コラム講座」講師。雑誌『公募ガイド』「超初心者向け小説講座」(通信教育)講師。現在も、九段生涯学習館で小説サークルを主宰。
公式HPはこちら⇒www.jplanet.jp