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2020.02.02

レビュー

大正末期、実在の女スパイ・川島芳子の冒険が蘇る! 無謀は承知、諜報戦の渦中へ!!

本当に男になってる!

『川島芳子は男になりたい』のどこが好きかと問われたら、まずは「顔」と答える。表紙から最後まで登場人物たちの表情に見入ってしまう。

お気に入りの顔が載っているページをしつこく読み返し、そのままスパイ活劇の世界にスルッと飲み込まれる。



“川島芳子”が本当に男になってる! しかもこの顔! こういう顔がもっと見たい! 舞台は1924年。「男になりたい」という夢を持った17歳の川島芳子が上海に足を踏み入れ、いかにしてこの妖艶な男になりえたか?が描かれる。

“父たち”が誇れるあたしになりたい

実在した川島芳子のことを知っている人ならこのマンガの題名は「おっ?」だろう。清の王家に生まれ、日本のとある有力者の養女となり、男装の麗人と呼ばれ、日中にファンが大勢いて、女スパイとしても国をまたいで暗躍して……現実なのに設定がてんこ盛りすぎる。



本作の川島芳子も同じ生い立ちではあるけれど、こちらの川島芳子は「男装」ではなく「肉体的にもガチの男になる」のだ。そんなの可能なの? 可能なんです。本作の夢と陰謀が渦巻く上海なら。



上海の裏社会を仕切るサスーン商會の“イヴ・サスーン”は、そんな川島芳子の夢を叶えられるという。イヴも良い顔してる……。

しかし、なんでまた川島芳子は男になりたいのだろう?



「国家の大業を担うような“冒険”、それらすべては男のものだ」から。2020年は女のヒーローが大勢いるけれど1924年に女の冒険は少なかったかもしれない。そして1924年でも2020年でも冒険したい女はいるはず。だからパンチの利いた父を2人も持つ川島芳子の泣き顔は胸にくる。

そんな覚悟を決めまくった川島芳子に、イヴは「“とあるお方”の救出作戦」に加わることを条件とし、「まずはお試しで男になれ」告げる。フェティッシュ感あふれる妖しい鍼を施され、ついに川島芳子は男に……?



なってない!? めっちゃ少女のままだ。大丈夫か!?

「忘我の境地」で「変生男子」

大丈夫。彼女に「忘我の境地」が訪れると男に変わるのだ。



実際にどんなことが彼女の身に起こるかは伏せておくが、たまに我を忘れる。



そうすると、ちゃんと男(むちゃくちゃ強い。そして男前)に変わる。便利!



しかし「ちょっとしたきっかけ」で男から女に戻るのだ。がっかり? いや、だからこそ彼女はスパイとして役に立つ。



ある時は愛新覚羅の姫(嘘じゃないし)として堂々と紫禁城に潜入し、



戦闘になれば「忘我の境地」からの男となり、窮地を切り抜ける。



そして男になった自分だけでは叶えられない夢も見つける。男になりたいけれど、女のままでもいたい。

実際の川島芳子と彼女の周囲にいた人々を調べながら読むと、女としても男としてものびのびと冒険する本作の川島芳子のアツさが一層わかるはず。妖艶で夢のあるスパイアクションだ。男の顔も女の顔も、みんなとても良い。

レビュアー

花森リド イメージ
花森リド

元ゲームプランナーのライター。旅行とランジェリーとaiboを最優先に生活しています。

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