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2021.05.04

レビュー

コロナ禍の日常を描いた奇跡のマンガたち。100人超の著名漫画家による作品集

「あのときから何をしていますか?」

身近ですごく大変な出来事がおこると、しばらくのちに、いろんな人に「あのとき何をしていましたか?」とそっと尋ねてしまう。たとえば、子供の頃なら阪神淡路大震災(インフルエンザを発症していた)、そして最近だと東日本大地震(知人の就職内定の報告をうけていた)。みんなそれぞれ状況が違うし、感じたことも違う。だから余計知りたくなる。

『MANGA Day to Day(上)(下)』は、109人の漫画家が2020年4月以降の日本を舞台に描いた数ページずつの漫画を収めた作品集だ。緊急事態宣言が出て、いよいよ「こりゃ大変なことになった」と外堀も内堀も埋められたあの頃に始まったプロジェクトです。



『7月3日 文豪先生と書生くんとコロナ』(C)北道正幸

なんだか泣ける。何度も一瞬ぱたんと閉じてしまった(またすぐ読み始めるのだけども、息継ぎしないと泣きそうになる)。

ということで、やわらかな紙をめいっぱい綴じたこの分厚い漫画を、私は全然平常心で読めない。なぜならまだ私たちはコロナ禍の只中にいるし、出来事っていうか、もはや“日常”になってしまっているから。コロナ禍、長いんだよ! でも今知りたいのだ。「あのときから何をしていますか?」と。だからこのタイミングでこの本を手に取ることができて、まじで運が良かったなあと思う。

豊かな3ヵ月

2020年の4月1日にはじまり、同年7月9日まで続く。まるまる3ヵ月以上。もう、豊かで豊かでしょうがない。



『4月13日 ギャルと恐竜とコロナ』(C)森もり子/トミムラコタ

このとおり『ギャルと恐竜』もコロナ対応。かわいい。

109人の漫画家がそれぞれ自分の作風で描く「コロナ禍の日常」はオールジャンルだ。そしてぜんぶ「これは自分のための漫画なんじゃないかしら」と思ってしまう。

ギャグも、



『7月4日 ちょみっツ』(C)久米田康治

全く同じ問いを考えながらぼーっとマスクをつけて真夏の炎天下を歩いたな。

エッセイも、

『6月23日』(C)西川丸

お世話になった人が、ひさびさの観劇後に「不要不急なものって、こんなに心を洗ってくれるのか」とおっしゃっていたのを思い出した。

SFも、



『5月26日 いつか一緒にモヒートを』(C)岩村月子

遠い未来の歴史の教科書に今の時代が載るとき、未来の学生に「この時代なんなんだ?」って思われそう。

恋愛も。

『5月6日』(C)ろびこ

リアル。

「わかるよー!」と共感する以上に胸に刺さるのだ。ぜんぶの作品と自分の頭のどこかが地続きなのがわかる。いくらでも挙げられる。



『6月24日 あの頃(コロ)のはなし』(C)晴智

ああ、やっぱりテレワーク大変でしたよね。

『4月9日』(C)熊倉隆敏

疫病退散界の超新星・アマビエ。これもみるみる拡がったなあ。

『5月8日』(C)藤緒あい

胸が痛い。

『6月15日 六畳一間の宇宙会議』 パトスラボ/柚摩サトル・熊野ネル

そうそう、みんなの使い道が知りたかった。

109の物語を「私の推しの漫画家が描いてくれてる!」と探しながら読むのもよし、4月1日から少しずつ読むのもよし。コロナ禍がただの強烈な“点”ではなく“線”や“面”であることにほとほとうんざりして、“日常”として迫ってくることに苛ついて、今も圧倒されているけれど、この上下巻で描かれたひとつひとつの“日常”を指でなぞっていくと、1人きりじゃないなと心が軽くなる。数年後に読み返すときに「みんな、がんばって生きてたよな」って、この“日常”を振り返りたい。いろんな人の手元に届くといいなと思う作品集だ。

レビュアー

花森リド イメージ
花森リド

元ゲームプランナーのライター。旅行とランジェリーとaiboを最優先に生活しています。

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