仕事をはやく切り上げてビールを飲みに行こう!
平日の夜にレストランで“1杯目”を頼むとき、決まって「仕事の後だし、今日はビールをたのんじゃおうかな」と言ってしまう。週末は週末で「休みだからビールにしちゃおうかな」と言うし、旅行中は欧州でもアジアでも国内でも「知らないビールだ!」と感動して、必ずその土地のビールを飲む。
つまりビールを選ぶ理由は無限にあるのだけど、あの金色の飲み物を仕事のあとに味わうたびに、大人になってよかったなと思う。労働サイコー! とすら思う。そんな飲み物って他にある?
『よりみちエール』は、東京に実在するクラフトビールの名店をめぐるお話だ。
案内人はこの2人。映画監督の“頼道”と、若手俳優の“アラン”。頼道は大のビール好きで、ビールを飲みたいがために仕事をぱぱっと切り上げる日があるくらい。そして、アランはというと……?
最初はビールなんてちっとも好きじゃなかったのだ。苦いし。よく耳にするこの感想、わかるよ。でもアランにとって頼道は人生最大に憧れている映画監督。だから頼道の行く先なら無理をしてでもついて行きたいし、少しでも話がしたい。この気持ちもよくわかる。で、ビールが好きじゃないけど頼道と一緒にビールを飲みに来ちゃったアランに差し出されたのがこちら。
IPA(インディアン・ペール・エール)。香り高いクラフトビールだ。ちなみに「クラフトビール」というのは小さな醸造所で造られたビールで、ときどきスーパーのビール売り場にも並んでいる。大手ビール会社のビールとの違いは「香り」や「色合い」だ。
ビールってスカッと喉越しのいい飲み物だと思いがちだけど(もちろんそちらも私は祖母の代から愛飲してます!)、香りや泡のなめらかさを楽しめるビールもたくさん存在するのだ。シュワシュワしていないビールも多い。
それぞれのエピソードの最後にビアジャーナリストの藤原ヒロユキ氏のコラムつき。お店情報もきっちり載ってます。
読むと仕事終わりの「ビア活」を始めたくなる。はやく仕事を切り上げて、はやくビールを飲みに行きたい。こりゃ夜遅くまで働いてる場合じゃないや。
クラフトビールの個性を楽しむ
とにかく最初から最後まで頼道とアランの2人は幸せそうにビールを飲む。
そしてビールを飲むたびに言葉をていねいに選んで感想を言う。いわゆる食レポだ。とくにアランの食レポがかわいい。
若者とおじさんの組み合わせ、いいなあ。
たしかにクラフトビールを飲むと「ああ、こういう香りなんだな」とアランのように想像を巡らせる。そう、クラフトビールは、ワインや日本酒と同じようにそれぞれが個性を持っている。だから頼道とアランは都内のいろんなお店でクラフトビールを味わうのだ。
個性があるということは、一緒に食べるとおいしい料理もそれぞれちがう。
ペアリング楽しい……! 太くてやわらかなタッチで描かれた絵でますますおいしそうに見える。
いわずもがな、ビールをめちゃくちゃ飲みたくなる。クラフトビールをお店で味わいたい。ということで、週末の昼間に本作で紹介されているBLUE BOOKS cafe自由が丘店でビールを飲んできた。
マンガのまんまだ~と感動しながらセッションIPAとクラウド9を飲んだ。いい香りのビールで、冷たすぎずじっくり味わえる。お料理もおいしかったです。サラダのドレッシングもメキシコっぽいスパイスが効いててビールと合う。
こうして実際にマンガの世界を体験すると、頼道とアランがせっせと「よりみち」をする理由がよくわかった。「これおいしいよ」とか「そっちのビールはどう?」と言い合いながらビールを飲むと、とても豊かな気持ちになるのだ。
ああなんて幸せで大切な風景なんだろう。この2人の物語もビールのように少しほろ苦くて、とてもやさしいのだ。応援したくなる。
今はコロナの諸事情により「仕事終わりの19時半にお店へ直行!」がむずかしい。いつか頼道のように仕事をテキパキと切り上げ、颯爽と退勤してビールを飲み、アランのようにめいっぱい感動したい。
レビュアー
若手イケメン俳優・藤田アランと、アラフィフの映画監督・高田頼道(よりみち)。
タイプも全く違う、親子ほど歳の離れた男2人が、よなよなクラフトビールを飲んで語り合う。
イケメン×枯れオジ、男2人の青春ビア活漫画開幕――!!