30代男性会社員の昼食代を含むおこづかいの平均は、36,146円、40代が37,073円(新生銀行「2018年サラリーマンのお小遣い調査」より)。
嫌な上司に気を遣い、理不尽なことにも文句も言わず、神経をすり減らして働いてこれだとしたら、やり切れないなぁと思ったのですが、世の中には2万円前後のおこづかいで楽しんでいる人たちがいるのです。
この漫画の主人公は、著者であり『ルーザーズ~日本初の週刊青年漫画誌の誕生~』『淋しいのはアンタだけじゃない』など数々の作品を世に出している吉本浩二さん。
2人目の子供が生まれたのを機に、おこづかいも3割カットの21,000円に大幅ダウン!!
いくら自宅仕事で昼食代がかからないとはいえ、46歳の男性にはシビアな金額なのでは? と思ったら、もっと切ない現実に腹を抱えて笑ってしまいました。
それは、リサイクルショップで中古扇風機を買ったときのお話。
我が家の扇風機にも“リズム風”が付いていますが、規則正しく繰り返される強弱のリズムが逆に気になり、一切使っておりません。
奥さん、あなたは正しい!!
仕事部屋の蛍光灯をLEDに変えたときも、おこづかいから。
さすがにそれは必要経費なのでは? と吉本さんに同情したくなりましたが、LEDって高いのです。1個1,700円が3個で5,100円。
これを家計費から出すのはかなりの痛手だし、今一遍に変える必要あるの? と思うので、夫のおこづかいで押し切った奥さんに1本!!
なかなか手強い奥さんです(笑)。
そして、猛烈に切なくて笑ったのはこちら。
さすがに3杯目ともなると……、
カルピスぐらい飲ませてあげて~(笑)、と思いつつも、奥さんだって7,000円のおこづかいの中から焼酎を買い、日高屋での1人酒が唯一の息抜きなのですから、文句は言えません。
それに吉本さんのおこづかいの内訳を見てみると……、
お菓子代が1万円って!! とツッコミたくなりますが、私もお菓子を我慢して生きる人生に意味なしというタイプなので、ここは激しく共感!!
半額シールが貼られたシュークリームを見つけ、「キタキタ~お宝発見!!」という気持ちも、よ~くわかります!!
私だったらこれは、絶対に“買い”です。こんな満足感のある上物が、54円で買えるわけですから。
ところが吉本さんは、次のおこづかいまでの5日間を351円で乗り切らねばならないので、お宝シュークリームを断念。
散々考えた挙句選んだお菓子は、そこですかぁ!? というもの。(このチョイスは、次巻の第9話を読んで納得しましたが)。
このお菓子選びを1円単位で考える主婦感覚が可笑しいのと同時に、私シュークリーム買えちゃうもんねぇ~、仕事の途中でも食べちゃうもんねぇ~というささやかな優越感。はっきり言ってくだらない優越感なのですが、私って意外に幸せなのかも!? と思ってしまいました。
だからといって吉本さんが不幸かというと、決してそうではありません。
むしろ吉本さんは、この状況を十分に楽しんでいるように見えます。
それは、自分で決めたルールの中で、いかに上手くやり繰りするかに知恵を絞り、達成したときの充実感があるからでしょう。
この本には、2万円前後のおこづかいで頑張るお父さん達が何人も出てくるのですが、みんな悲壮感はなく、実に楽しそうなのです。
そして誰もが、少ないおこづかいの中で自分を解放できる楽しみをもっていて、趣味のない私からしたら羨ましいとさえ思ってしまいました。
たとえ世の中が不景気に向かったとしても、まだまだ楽しく暮らせそう。そんなことを思わせてくれる漫画です!
レビュアー
「関口宏の東京フレンドパーク2」「王様のブランチ」など、バラエティ、ドキュメンタリー、情報番組など多数の番組に放送作家として携わり、ライターとしても雑誌等に執筆。今までにインタビューした有名人は1500人以上。また、京都造形芸術大学非常勤講師として「脚本制作」「ストーリー制作」を担当。東京都千代田区、豊島区、埼玉県志木市主催「小説講座」「コラム講座」講師。雑誌『公募ガイド』「超初心者向け小説講座」(通信教育)講師。現在も、九段生涯学習館で小説サークルを主宰。
公式HPはこちら⇒www.jplanet.jp