誰しも一度は、魔法が使えたら……、あるいは、ロールプレイングゲームのキャラクターみたいに、様々なスキルを自在に操れたら……、と思ったことがあるのではないでしょうか?
『よくわからないけれど異世界に転生していたようです』は、まさにそんな願望をかなえてくれる夢のような異次元のお話です。
孤児のレンは、孤児院の出資者である商人のところへ送られる途中、乗っていた馬車が崖から落ち、1人だけ助かります。が、すぐにそうではないことに気づきます。
自分は異世界に転生し、レンという女の子の体と記憶を手に入れただけで、前世は結城蓮十郎という30代の研究者だったことを。
幸い転生した世界では魔法が使えることに気づいたレンは、自分がどんな能力を持っているのかを確認するため「ステータス」という言葉を口にします。
すると表れたのが……、
こんなふうに自分の能力を数値で見ることができたら、どんなにいいでしょう。なぜなら「それスキルにないので、できませーん!」と言って、無駄な労力を使わずに済むので。
レンには魔法に関する様々なスキルがあるのですが、その中でも視認した物質を位相空間上に転送し、自在に収納排出できる「ストレージ」は、表示できないほど高いレベルであることを知ります。
商人のところへ行っても、慰み者にされるに違いないと思ったレンは、この「ストレージ」を使って、1人で生き抜くことを決意します。
そして最初に出現させたのが、煉瓦(レンガ)のコンロ!!
なぜに煉瓦のコンロ!? とツッコミたくなるのですが、レンは「川魚のムニエル~野趣(やしゅ)のキノコを添えて~」という長ったらしい料理まで作ってしまいます。
そこ焼き魚でよくない? 焼き魚で。と、さらにツッコミたくなりましたが、どうやらレンは食に対するこだわりが強いようで(笑)。
その後レンは、せっせとポーションを作り、スキルを使うことでステージを上げ、2ヵ月後には立派な家も完成させてしまいます。
さらには家庭菜園を作り、可愛い服を作り、武器を作って狩に出て……と、まるで育成シミュレーションゲームを見ている感じです。
それにしても、まず衣・食・住を整えるなんて、あまりにも堅実な生活ぶりに思わず苦笑いです。
私だったら街に出て、どっかんどっかん魔法を使いまくると思うので(笑)。
でも、「私も前世の私も 基本的には人と関わるのがいやだった」というレンの言葉に、それもわからなくないなぁと思う私。魔法が使えるこんな気楽な生活なら、1人も悪くないなぁと。
こうして、おひとり様生活を存分に楽しむレンは、こんなものまで作り始めます。
あぁ、そこ行くか、前世はおっさんだったんだもんね、若くてグラマラスな肉体を持ったらそうなるかぁ……と思ったら、これは序の口。ここからレンの大暴走が始まります。なにせ1人上手なので(笑)。
笑ってしまったのは、今まではなかった変なスキルが増えていること!!
それまでのサバイバル生活から一転、“えっち”モードが加わった途端、何を見ても“えっち”な方向に進むのではないかと思えて仕方ありません(笑)。
でも、それも大人になる成長の過程ですからね。
考えてみれば人間も、成長とともに色々なスキルが増えて行くわけですから。
正直この先の展開がまったく読めませんが、そこがまたこのお話の楽しさだなと思いました。
レビュアー
「関口宏の東京フレンドパーク2」「王様のブランチ」など、バラエティ、ドキュメンタリー、情報番組など多数の番組に放送作家として携わり、ライターとしても雑誌等に執筆。今までにインタビューした有名人は1500人以上。また、京都造形芸術大学非常勤講師として「脚本制作」「ストーリー制作」を担当。東京都千代田区、豊島区、埼玉県志木市主催「小説講座」「コラム講座」講師。雑誌『公募ガイド』「超初心者向け小説講座」(通信教育)講師。現在も、九段生涯学習館で小説サークルを主宰。
公式HPはこちら⇒www.jplanet.jp