アウトドアブームは、ブームに留まらず今では文化に定着したように思います。道具(ギア)の素材や性能の進化によって、軽くて小さくて丈夫なものが増えました。昔は車で荷物をたくさん運ぶキャンプが主流でしたが、道具の選択肢が増えたことでバックパックひとつでキャンプやハイクへふらりと行けるようにもなりました。
そんなアウトドアの世界でも、特に面白い進化をしているのが「ソロ」と呼ばれるおひとりさまスタイルではないでしょうか? 「ソロ=ひとり」という意味で使われます。「ソロハイク」「ソロキャンプ」など、交通の便も良いキャンプ場やハイクコースも増え、ひとりで気ままに自然の中へ行ける良い時代になりました。
今回ご紹介する『ふたりソロキャンプ』まずタイトルを見て「ん?」となりました。ソロなのにふたり!?と。
主人公の樹乃倉厳は34歳。趣味はソロキャンプ。車を使わずに電車とバスで目的のキャンプ場へ向かう徒歩キャンプ派。愛用のテントはMSR(Mountain Safety Research)。アメリカのシアトルにあるアウトドア用品メーカーのもの。ハバと呼ばれるモデルで、ソロキャンプにはとても使いやすいものではないかと思います。
この漫画のすごいところは、アウトドア道具に付いているロゴが、実在するメーカーのものであるところ。アウトドアの道具(ギア)好きの人でも楽しみながらチェックすることができます。
ソロキャンプにおすすめなサイズや重量の道具をキッチリと選んで描いていて、小さくて軽めでカッコいい道具がたくさん登場します。著者の方、ガチのソロキャンパーなのかなと、見ていてワクワクしました。
「初ソロキャンプ」女子との出会い
ひとりの静かな時間が大好きな厳。自然の中の自由さをのんびり独り占めするのが楽しみです。
そんな厳の前に突然現れたのは、道に迷い、夜遅くにキャンプ場へ辿り着いた草野雫でした。
雫はキャンプ初心者。今日が初めてのソロキャンプでした。テントも持たず泊まる場所もない女の子。厳はテントと寝袋、マットを雫に貸します。
雫は厳にソロキャンプの師匠になってほしいとお願いします。気が乗らない厳ですが、雫の無茶振りと強引なお願いに、徐々に折れてしまうのでした。
雫は料理が得意。ソロキャンプで美味しいご飯を食べるのを楽しみにしていました。一緒に美味しいモノを食べると、気持ちもだんだんほぐれていき、厳も雫に心を許し始めます。
「ふたりソロキャンプ」4つのルールが使える!
私は厳の美味しいものを食べるときの「はふぅ」顔が大好きです。モノクロの漫画なのに、なんだか読者の私まで熱々のご飯を食べたくなります。お腹が空く漫画です。おいしそう。
厳と雫は歩み寄り「ふたりソロキャンプ」のルールを作ります。このルールがとても素敵で、とても共感できました。漫画の中のキャラですが、ふたりと一緒にソロキャンプしたいなぁって思いました。
4つのルールであれば、ふたりでもきっとソロキャンプを楽しめます。ソロがふたりいるという設定も納得で、気軽で楽しそうだなぁと感じました。現地集合・現地解散は、寝坊しても遅刻がないし、仲間を待っている時間も楽しいので素晴らしいなと思います。
ほどほどのふたり、ほどほどのひとり。「ふたりソロキャンプ」だけでなく、現実社会でもこのくらいの距離感で人と付き合えたらいいのかもなぁと思いました。余談です。
頭の中で「ふたりソロキャンプ」に合流して「さんにんソロキャンプ」したらどうなるかなぁ、どんなご飯作ろうかなぁ、どのテント持っていこうかなと妄想しながら、ワクワクして読めました。自然の描写や道具の面白さ、キャンプレシピの美味しそうな絵。どこを切り取ってもキャンプの素敵なポイントを紹介しています。
ソロキャンプが好きな人であれば、道具を見るだけでもきっと楽しいです。「お! このメーカーのだな!」「このテクニック、なるほど!」みたいに。ソロキャンプをこれから始めようと思っている人にはソロキャンプとはなんぞやの勉強にぴったり。イメージがつかめます。
おまけ。
漫画のおまけページで雫のキャンプ飯レシピが紹介されています。簡単で美味しそうなメニューは森の中で実際に作ることもできます。調達しやすい材料(スーパーやコンビニで手軽に買えるもの)のレシピが多いのでぜひお試しを。意外とキャンプへ行く前日、仕事が終わらなくて深夜や早朝にコンビニでしか買い物が出来ないこともあるんですが、そんな時にも焦らず楽しめるレシピが多いです。家でもさっと作れるモノが多いので、家の中でキャンプの練習もできそうですね。
レビュアー
Illustrator / Art Director 1980年東京生まれ、北海道育ち。高校在学中にプロのイラストレーターとして活動を開始、17歳でフリーランスになる。万年筆で絵を描くのが得意。本が好き。