読んで大正解だった
どんな顔して読めば、と思った。
画力満点の痴漢シーン(この後もガッツリ続く)。「私はターゲット外でしたごめんなさい」って回れ右すべき? や、もうちょっと読むわ、なんか面白いことになりそうだし……と信じた私、大正解だったよ。『RaW HERO(ロウヒーロー)』大正解。
「私がロクでもない人間だというのは否定できないが、ロクでもない仕事はしていないつもりだ」
山手線のドアや行き先にでっかく書いてほしいくらい好きなセリフだ。
パワフル。そしてバカバカしいくらい食い込みすぎてるボディスーツのフェティッシュさ。本作の象徴だなと思う。
お前たちのヒーローになる
主人公の“千秋”は無職の青年。小学生と中学生の弟を1人で養うべく就職活動中。
ある日、大切な面接に向かう途中、痴漢を捕まえようとして面接がパーに。
「今ここで痴漢を捕まえたら面接に遅れる」とわかっていたのに、自分の正義感に抗えなかったんです。いい奴。
そんな千秋の行動力や正義感が高く評価され、怪人と戦う警察庁のヒーローにスカウトされるのですが、怪しさ満点なので一度は断ります。でも家は待った無しのド貧乏ですし、挙句の果てには幼い弟の寝言がこんなことに。
この格差社会な寝言を聞いちゃった千秋の表情に笑う。タワマン寝言事件だけじゃなく全ページの絵が隅から隅まで綺麗です。バカなときも必ず綺麗。油断できません。
千秋は覚悟を決め、高収入なヒーローの仕事に就きます。
……諸事情により完成度の高い女装をしてますけど、ヒーローです。
悪の組織で地獄の面接
千秋の初ミッションは"特解戦線"(=悪の組織)への潜入。
これが大変な面接でして。こんなのが手ぶらで来たらカタギの会社だって「帰れ」なのに、千秋は絶対に帰らない。
だってタワマン寝言を聞いちゃったから。ここから千秋のど根性が炸裂して怒涛の名シーンが始まります。大好き。
“元アイドル・白沢天音”のフリを続けて面接に食らいつき……
むっちゃくちゃエロくてバカなのに、最終的には謎のあったかい気持ちになった。面接官も3人とも良いんですよ。(とくに真ん中は爆煙仕様のVAPEをシュパシュパ吸っててセクシーかつ治安悪くて大好き)
「根性ねぇ奴から死んでいくからよ」
面接がとんでもなかったので、入社後の潜入捜査(女装続行)も期待通りハードかつバカです。
やっぱり「クール」と「バカ」と「エロ」の緩急が凄い。そう、とにかく画力とストーリー展開がキレキレなので、ずーっと紙一重の世界が続くんですよ。
スパイ活動に勤しむ女装ヒーローだってリーマンと同じ。クタクタになるまで働いた夜は美味しい焼き鳥を弟たちと食べたい。(店の看板が少し気になるが、納得の店名なのだ)
しかし、なんかもう、困っちゃうくらい魅力的だ。バカなのに。直視をためらうのに目が離せないよ。
レビュアー
元ゲームプランナーのライター。旅行とランジェリーとaiboを最優先に生活しています。