“嫌い”が何周回るとこうなる?
「お前には博才がない」と言われてきたのもあって、ギャンブルにはあまり関わりたくない。『ギャンブラーズパレード』の彼もギャンブルが苦手というか「大嫌い」らしいが……
すごいな。ということで、ポップでダーティでぶっ飛んだギャンブル漫画『ギャンブラーズパレード』の話をします。アドレナリン出っぱなし。
超ド級の“不運体質”がギャンブルと出会うとき
本作の主人公は “東雲花梨(シノノメカリン)”。「とある島」に転校してきた女子高生。
花梨は自他共に認める超ド級な「不運体質」の持ち主で、踏んだり蹴ったりな日々を送っています。(1巻を読み終わったあとで何気なく彼女の不運な出来事をおさらいしてみたらマジ不運続きだった)
そもそもの話として転校先のチョイスがアレで、転校初日に担任の“蜘蛛手(クモデ)”先生からの注意事項がこちら。
「校内でのギャンブルは校則違反」と先生がわざわざ声に出さなきゃいけない本校は「トバク島」と呼ばれるギャンブルの聖地(無法地帯)にある高校。とはいえ花梨はギャンブルに興味なし。
とことん不運な人間は「自分のついてなさ」を多少なりとも自覚していることが多い。そこからさらに「ついてないのにがっついてしまう人」と、このコマの花梨のように「最初から手を出さない人」に分かれる。
で、サラッと「ギャンブルなんてやらないんで」と微笑む花梨はガチの不運体質なのでギャンブルに強制参加させられます。本作1発目のギャンブルは「コイン当て」。
怖い怖い怖い! 読んでるこっちも生唾呑むくらい絶望する。だってこんな顔で汗びっしょりで「勝てっこない」って思い詰めている人、確実に負けそうだもん。そんな負けオーラ全開でピンチに突き進む花梨を助けてくれるのが先の蜘蛛手先生なのですが……。
ギャンブルへの憎しみと決意表明を淡々と語り始める先生。
すごく嫌な予感がする。やはり花梨は全然ラッキーじゃなさそうだ。
ギャンブルでギャンブラーを殺せ!
ギャンブルに勝つためには「運の良し悪し」ではなく「勝つことへの執着心」が大事だと博才のある人はみんな言う。蜘蛛手先生もまさにその「勝つことへの執着心」を強烈に備えた人物で、ひとたび「憎きギャンブラーを排除する!」と念じるとこうなります。
先生の背中に勝ちたい意欲がみなぎる。冒頭でご紹介した怪物の正体は蜘蛛手先生でした。
賭博ヘイト感情ドリブンになった蜘蛛手先生は「ギャンブルに勝ってギャンブラーをボコボコにする」という大変屈折したスタイルでギャンブルにノーを言います。そんな憎しみで煮しめたような先生のバトルスタイルは当然面白い。
おっかない! 端々から比喩じゃない殺意を感じる。
賭博部へようこそ
ピンチを救われた花梨は無事ギャンブルとおさらばできるのかと思いきや、ギャンブルを憎みすぎる蜘蛛手先生が顧問を務める「賭博部」に入部させられることに。先生は単独ではなく組織を率いてギャンブル撲滅活動に励んでいます。
こちらが部員のみなさん。ぶっ飛んだ設定にガツンとぶつけるようなこの見開きが大好きだ。ポップでダークで完璧。めっちゃいい。耳がワンワンするくらい爆音で音楽が鳴ってそう。
そして、そんなぶっ飛んだ賭博部と戦うギャンブラーたちもクセ満点でニヤッとなる。
いいぞ、どんどん現れてギャンブルに手を染めまくって先生を激怒させてほしい。
蜘蛛手先生の怒りの心理戦に期待しつつ、「負けちゃう」を汗をダラダラ流す不運体質の花梨がどぎついギャンブルの場でどう開花するのかも本当に楽しみだ。そして蜘蛛手先生のギャンブル憎しの事情が知りたい。こんなふうにアグレッシブに関わるのって、よっぽどでしょ。
レビュアー
元ゲームプランナーのライター。旅行とランジェリーとaiboを最優先に生活しています。