全エピソード美味
5個入りのチキンナゲット(大好物)を買って食べ始めると1個目から切ない。「あと4個ね……」とセンチメンタル全開になり「別れの瞬間」もスパイスと自分に言い聞かせ、いよいよラスト1個になると顔が冗談抜きで暗くなる。なんで終わりが来てしまうの。それと同じで『放課後のイケメンごはん』も「終わってほしくないなあ」と思うマンガだった。エピソード数は12。全話美味しかった。しかも毎回笑い転げた。満腹。1巻で終わっちゃうの? ほんとに? あー、ほんとなんでお腹って減っちゃうんだろう。
なんか食べて帰らない?
主人公の“網名さん”は17歳の女子高校生。毎日昼下がりの教室でお腹が派手に鳴ってしまうハラペコ系女子です。
このピンチは今もよく知っている。しかし網名さんの場合はより深刻な状況で、となりの席の“岡野くん”がイケメンなのだ。胃との攻防むなしく……!
ああ。きっと私もこういう顔になる。
でも、このお腹の音がきっかけで岡野くんからこんな素敵なオファーが来ます。
いいねいいね! 食べて帰ろう! ……で、こんな風にさりげなく始まった胸キュン放課後グルメライフがとんでもなく面白い。ヒーヒー笑ってしまう。ただ食べてるだけなのに!
絶対に負けられない“戦い”がある
網名さんと岡野くんが最初に食べる「ごはん」は「たいやき」です。「放課後のたいやき」って字面がもう青春かつ美味しそう。しかも2人が向かったのは定番の小倉あんだけじゃなくジャーマンポテト味やカスタード味も取り揃えた楽しいお店です。ここからイケメン岡野くんの意外な一面が一気に出てきます。
「どのたいやきにするか」を考える効果音で「ギンッ」って初めて聞きましたけど、このギンギンさ、ちょっと覚えがある。空腹で死にそうだけど限られた予算から失敗のないベストな選択をしたいとき……きっと私たちは岡野くんになるはずだ。
しかも岡野くんたちは高校生。大人よりも予算に限りがあります。なので毎話「何を注文するか!?」のくだりがめちゃめちゃ面白い。ほぼ頭脳戦だ。
この「スタバでお腹いっぱいになりたい」2人の戦いは素晴らしかった。ぜひ応援しながら読んでほしい。
愛あふれるシズル感
本作はグルメマンガとしても素晴らしいです。毎話ごはんへの愛が溢(あふ)れかえって食いしん坊さんならずともみんながガンガン頷(うなず)きたくなる話ばかり。たとえばたいやきの回では「白玉たいやき」を選んだのですが、ただ「ハフハフ、美味しいね」じゃ済みません。
この愛着と悲しみ、めちゃわかる。(白玉たいやき見かけたら絶対食べよう)
このページもヤバい。全コマわかる! 網名さんも岡野くんも食べ物への愛をさりげなく(でも惜しみなく)朗(ほが)らかに話してくれるので、読んでいて幸せな気持ちになる。
なつかしいな、私も高校生のころ同じこと思ったよ。こういうところも大好き。
「あの回読んだ?」と言い合いたくなる
映画でもマンガでもお笑い番組でも、お気に入りのコメディは鑑賞後しばらくたってからも不意に「爆笑したシーン」の脳内リプレイが始まり吹き出しそうになる。本作もまさにそれで「あの回読んだ?」などと言い合って思い出し笑いをしてしまう。
だめだ、前後のシーン含めて人目をはばからずヒーヒー笑ってしまう。(岡野くんがイケメンである点もめちゃ効いている)だから電車で絶対読めない。でも読んでいるとお腹が空き、「買い食いって楽しかったな」とほのぼのする。だからやっぱり帰り道に繰り返し読みたいなあ。
レビュアー
元ゲームプランナーのライター。旅行とランジェリーとaiboを最優先に生活しています。