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2018.10.28

レビュー

「あまび」「ままけは」極めてみせますみやげ道!【優秀おみやげ発見漫画】

待ったなしのハードワーク

「おみやげどうしよう」とつぶやくとき。それは、いろんなことが明らかになってしまう瞬間でもある。



北海道の新千歳空港で考えてみよう。制限時間(ボーディングまであと30分)、予算(高すぎず安すぎず)、サイズ(新千歳→羽田便の荷棚は戦場だ)、賞味期限(次に会うのは再来週)、これらの諸条件をもとに、ものの数分でキメる必要がある。

上記の条件で「毛ガニ(まだ生きてる)」や「朝採りアスパラ」を選んじゃったら、それは疲れと北海道パワーで頭がとっ散らかっているサインだ。

そして、おみやげチョイスで最も重きを置きたいのは「ターゲットの好み」だ。どんなにおいしくても甘いものが嫌いな人にモリモトのハスカップジュエリーは渡せない。私が食べる。

相手の嗜好を思いながら選んだおみやげを抱え「きっと気に入ってもらえるはず」とドキドキしながらレジに並ぶのが理想だが、「……ヤバい、甘いもの大丈夫なんだっけ? 好きな食べ物なんも知らないんだけど!」だとさあ大変だし、「……もうなんでもいいや」は地獄で、選ぶ私も受け取る相手も不幸だ。そんな私に買われるおみやげだって気の毒すぎる。(そういうときは買わない)

うーん、なんたるハードワーク。

『おみやげどうしよう』は、まさにそんなハードワークを次々こなす大人たちの物語だ。全国の「おいしくて気の利いた」リアルなおみやげが毎話登場する。おみやげに特化したグルメ漫画と言える。

社会人の鑑(?)な基山さん


「私立音羽大学」の「入試広報課」に務める“基山さん”には、日本各地に赴き、音羽大学を知ってもらうという大切な任務がある。なので地方出張が多く、職場へのおみやげに悩む機会が多いんですね。気配りができて、真面目で、社会人の鑑(かがみ)のような女性。

彼女のおみやげ逡巡タイムはとても共感できる。



しかしだいぶ念入りに悩む。実は彼女、単に「社会人の鑑」としておみやげを選んでいるだけではないのだ。上司である“課長”に密(ひそ)かに想いを寄せている。



ん!? まんまるおじさん……? と思うのだが、いい人なんですよ。そして美食家。



この食いしん坊さんの「おいしい!」が、基山さんの密(ひそ)かな喜びなのです。「職場のみなさんへのおみやげ」という基本条件に加え、「美食家の課長を唸(うな)らせたい」という条件も加わるので、ハードモードというかエクストリームモードだと思う。こりゃ悩むわ。

福岡出張で基山さんが選びに選んだおみやげがこちら。



美しい……! 5~11月に福岡行ったら買う! 良情報ありがとう基山さん!

グルメ漫画+お仕事漫画

各話、音羽大学の皆さんによる「おみやげどうしよう」が山場ではあるのだが、本作は「お仕事漫画」としても楽しい。

職場は学校と違って年代も人のタイプも「いろいろ」だ。なので、いろいろあるし、気に入らないところもあるが、それでも仲間だ。海外ドラマのオフィスのように「You! 出て行け!」みたいな勢いで歯に衣着せぬやりとりを続けていたらあっという間に崩壊するだろう。


そういう「仲良く頑張ろうよ」のツールとしての「おみやげ」の姿も、本作では描かれている。

なかでも、真面目で不器用な“吉本くん”の回は印象深い。



この、真面目すぎるあまり職場になじめない吉本くんの葛藤は「ごもっとも」と思う。そして、そんな彼が思いきって選んだおみやげと顛末が私はすごく好きだ。(ここでも課長が素敵だった。基山さん見る目ある~~!)

喜んでもらいたい

むかし、とある美食家の知人が「俺、“味や食にうるさい”って思われるのやだなあ。そんなに気をつかってくれなくていいのに……」と困った顔で言っていた。や、だからこそなんですよ。「うるさい人」は、喜ばせ甲斐のある人でもある。燃えるんですよこっちは。

そう、ちょっとした「おみやげ=贈り物」って、選んで渡すこちらが一番楽しい気がする。ハードワークではあるが、「喜ばせたい相手」のことを根詰めて考える瞬間は、自分のなかにある相手を思う気持ちと向き合う時間なのだ。

さて、基山さん渾身の福岡みやげ「あまび」を食べた美食家の課長は……



この顔! そして華麗な美食コメント!



ね、だから「おみやげ選び」はやめられない。

レビュアー

花森リド イメージ
花森リド

元ゲームプランナーのライター。旅行とランジェリーとaiboを最優先に生活しています。

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