運動が苦手な人は、「筋トレ大好きな人々って、なんであんなに筋肉やプロテインのことをイキイキ嬉しそうに語るんだろう」と、ゲンナリしたことが一度はあるのでは?
ええ、かくいう私もかつてはそうだったのでございます……。
「健康にいい」「痩(や)せる」「体調が良くなる」「精神的にも安定する」「始めてみたらわかるから!」と、テンションMAXで説得されればされるほどに、「ウゼー……」となってしまうもの。だけど、ちょっとだけでもやってみると、確かに彼らが語る「筋トレ&筋肉はすべての悩みを解決する!」は、まったくもってその通り、なのですよ。
そこで、運動が心底苦手だったり、「筋トレに興味はあってもやる気が出ない」というみなさん、そして、「もっと効果的に筋トレをやりたい」というみなさんにも、ぜひとも読んでいただきたいのがこの漫画!
主人公は売れない小説家の五月女要。30歳になっても警備員のバイトをしながら執筆活動を続けるものの、過去の作品はまったく売れずに忘れ去られ、新作も思うように書けない。そんな自分の存在価値に悶々と悩む日々……。
運動不足&ヒョロガリ体型で、警備の巡回に出れば足がもたつくほど。心も体も弱っている五月女が偶然出会ったのが、筋トレ大好き女子高生・野尻まさき。実は彼女、五月女の作品の大ファンだったのだ!
五月女が大好きな作家であることに気づいたまさきは、「なぜあの作品の主人公はヒロインと結ばれなかったのか」と迫る。
「主人公に筋肉があればうまくいったんです!」
「二人を隔てるドアを引っ張ってこじ開けさえすれば!」
そんな謎理論を展開する彼女の指示で、五月女はなぜか扉を引く実演をさせられることに。
さらに、「引く筋肉は広背筋や脊柱起立筋が中心」「腕ではなく肩甲骨で引くイメージ」「むしろ腕は飾り」等々、めっちゃ的確に五月女への指示を出し続ける。なぜそんなにも筋肉や体の仕組みに詳しいのか、まさきよ……。
ネガティブまっしぐらだった五月女は、「あなたの本が売れないのは、筋肉が足りないからですよ」という彼女の筋肉絶対論に振り回されながらも、筋トレに興味を抱き始めるのです。
さて、この漫画の見どころ、というか、オススメどころは、毎回、まさきが筋トレや筋肉作りについての詳しい知識を披露するところにありますよん!
手軽にできるトレーニングのやり方から注意点、筋肉をつけるために必要な知識などを、わかりやすく紹介してくれているので、とってもためになる~~。おまけに、ちょっぴりお色気なまさきのサービスショットがちょこちょこ挟まれるから、筋トレ嫌いな文系男子も無理なく読める優しい内容なのだ!
そして、この作品の真骨頂は、筋トレ愛ゆえに、むっちゃ手厳しいまさきの正論コメント。早乙女が猫背は筋肉の問題なのかと聞けば、「はい、それはですね!」と嬉(うれ)しそうに駆け寄ったのち、「あなたの人間としての意識が低いからですよ」と真顔でバッサリ。……無邪気にヒドい(笑)。でも、まさに正論なのです。
一方、頑張ってトレーニングした後には、「すごい!」「本気で尊敬しちゃいました」「結果、出ましたね!」など、まさきは我がことのように一緒に喜び、応援してくれるのだ。そこには、ご都合主義の美少女漫画に出てくるキャラのようなあざとさは一切なし。天然筋肉マニア・まさきの純粋&無邪気な言動には、素直にホンワカできます。ねえ、そんなこと言われたら、ちょっと頑張ろうって思っちゃいますよなあ……。
まさきの無邪気なアメとムチにかかれば、どんな運動嫌いも、ひねくれネガティブさんも、心動かされること間違いなし! もし彼女が実在したなら、●イザップも超えるスーパートレーナーになっていたことでしょう。
そんな彼女のおかげで、五月女は体だけでなく、超ネガティブだった自分の意識までも少しずつ変化させていくのだ。
この流れ、「筋肉は全ての悩みを解決してくれる!!」って、あながち嘘ではないよな~~と、自然に思えてしまうのですよ。
筋トレ大好き勢や筋肉自慢野郎どもにうんざりし、「フン」なんて斜に構えていたみなさんも、「筋トレも悪くないかも」「ちょっとやってみるか~」という気分になれるかも!?
読めば素直に楽しく、そして、実用にも、いや、人生にも役立つ!? そんなオススメ漫画ですよん!
レビュアー
貸本屋店主。都内某所で50年以上続く会員制貸本屋の3代目店主。毎月50~70冊の新刊漫画を読み続けている。趣味に偏りあり。
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