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2017.06.22

インタビュー

『逃げ恥』秘話対談! みくりと平匡に(本当はやらせたかった)漫画シーン

なぜドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』は面白いのか? ドラマ脚本家・野木亜紀子さんと原作者・海野つなみさんによるドラマと原作の振り返り対談を敢行! 『逃げ恥』大ヒットの理由が垣間みれる

──野木さんは、最初に『逃げ恥』の漫画を読まれてどういう感想を持たれましたか?

野木 面白くて笑いながら読んでいました。どこかで見たことがあるようなところがなくて、これはドラマになっても面白いものになりそうだなと思ったし、いろんな意味で、やる気の出る漫画だと思いました。

──海野さんは、毎回送られてくる野木さんのドラマの脚本をどう読まれていましたか?

海野 毎回、準備稿の段階で読ませていただくんですけど、私も面白くて笑いながら読んでいました。原作と違う部分があっても、ちゃんと軸からぶれていなかったし、担当さんともいつも面白いですよねって感想を言いあってました。

──漫画とドラマでは、違う部分もありました。

野木 漫画とドラマの見方って違うんですよね。漫画は自分のスピードで読めるけど、ドラマは自分でスピードをコントロールできない。漫画はわからないことがあれば、戻って文字を読み直せるけど、ドラマは耳で聞いてわからないとそのまま過ぎてしまう媒体なので、そこは変えていかないと。ひっかかるべきセリフではひっかかってもらって、そうじゃない部分では、「意味がわからない」という意味でのひっかかりを作らないようにはしています。それにドラマの場合、すべてを語ったらおしまいというところがあるので、なるべく短い言葉に集約させたり。あとは、生々しくならないように心掛けたシーンもあったりとか。

海野 そこらへんは、生の人間が演じるものと、絵で伝えるものとで、生々しさに違いが出ますよね。

逃げるは恥だが役に立つ
逃げるは恥だが役に立つ

野木 漫画だと、みくりの体の感触を語るモノローグが生きるんですけどね。ドラマだと視覚情報で伝わるので、そこは想像していただくという差はありますね。

──確かに、ハグのところの描写は、漫画のほうが細かい情報がいっぱいあるなと。

野木 ドラマよりギャーみたいなね(笑)。

海野 「当たってますよ」とかね(笑)。漫画は、逆にそういうところが大事なんですよね。さっき野木さんも言われてましたけど、漫画はドラマとは逆で、また遡って読み返してもらったりとか、そういうことをさせるためにも、ひっかかりを作ろうということはあるんですよね。

──漫画とドラマ版の違いと言えば、コンドームを輪ゴムにしたりするシーンもあったり。

野木 あそこも悩んだんですけど、コンドームなしでそのシーンを描くのはいやだなと思って。でも、夜の10時台の放送なのに、けっこう10代や小学生のお子さんなんかも見ているという話を聞いて、じゃあどうするってなったときに、輪ゴムとかロボホンを登場させようと。

編集・鎌倉 漫画のほうでも、そのシーンに対してはけっこう真面目に話しましたよね。もらったやつがあるだろうけど、消費期限があるんじゃないのって。

海野 知り合いの男の人に聞いて、そういえばクラブでサンプルもらいましたよっていうエピソードも聞いたんですけど、消費期限があるので、新しいのを買う方向で。

野木 本当はドラマでも、コンビニでコンドームをバンと出して買う平匡をやりたかったけどできなくて、それで「困ったときの日野さん」にもらったことにしました。

逃げるは恥だが役に立つ

──温泉旅行に行くときに、平匡さんが日野さんからマムシドリンクをもらうことともつながりますよね。

海野 最高でしたよね、あのくだり。

──みくりにマムシドリンクが見つかってはヤバいということで、ドタバタ劇になっていて(笑)。あれは、動きで見せるドラマならではのコント的なシーンでしたよね。

野木 ドラマの笑いと漫画の笑いって微妙に違うんですよね。二次元と三次元の差というか。だから、原作で笑ったのにドラマでは入れられなかったところも多かったんです。「セクシーゾーン」とか「赤べこ」とか。あと「スルーリボン賞」も好きでした。入れるタイミングがなくて残念だったけど、そこは漫画で楽しんでもらえれば。あと私は、「浸透力半端ない」が大好きで、実は吹き出し外の小さな書き文字セリフだったんですけど、どーんと使ったら反響も大きかったです。

──厚揚げのくだりもありましたね。

海野 「おっさんのハートは厚揚げなんだよ 外は固くて 中は柔らか! だしも染みやすいっつーの」っていう。

野木 そこもほんと面白かったです!

逃げるは恥だが役に立つ
逃げるは恥だが役に立つ

──漫画の最初のほうを読んだときは、この後の展開で、まさかみくりと平匡がここまでラブラブになるとは想像つかない始まりだったんですけど、最初からそこは想定していたんですか?

海野 あれは本当に、どうなるんだろうと、最初は先のことはわからずに描いてました。初期から映像化の話をいただいていて、テレビ局の方から、「この先はどうなるんですか?」「最終話はどうなるんですか?」っていうことをよく聞かれてたんですけど、いつも「わかりません」って答えていましたね。それで、終わる1年くらい前に、ようやく結末が見えたんですけど、その調子で描いていけば、ドラマが終わるのと、漫画が終わるのとがちょうど同じタイミングになるので、すごくよかったなと。

──漫画って、キスシーンで盛り上がったり、また離れたりとかの連続で惹きつけるものも多いと思っていたんですけど、最初のほうは、そういうこともなしで読ませるのがすごいなと思ったんですけど。

海野 第1話が掲載された後にエゴサーチをしてみたら、「相手役の男の人が出てくるのに、ぜんぜんときめく要素がないのはなぜなんだ」っていう意見を見て、そうかもしれないなと思ったんですね。でも、そう言いながら、みなさん平匡さんにどんどん転んでいったから(笑)。

──テレビの場合は、1話1話に見どころがほしいというオーダーとかもあるんでしょうか。

野木 ドラマは賞味45分の中で、盛り上がりとオチはつけないといけないので、展開をどう作るかは頑張らないといけないところですよね。1話では同居が決まって両親に打ち明けるところで終わるし、2話はお互いの匂いにときめき、ラブコメモードに入っていくところで終わる。毎回、最後のシーンで、満足感を持たせつつ、次の回の引きを作ろうということには、心血を注いでましたね。

海野 視聴者の目を引いたところで、「テーレテレレレ」っていう星野源さんの「恋」のイントロがくるからまた盛り上がるんですよね。

野木 海野先生が放送をリアルタイムで見てのツイッター実況で(恋ダンスを)「踊れるかー!」って書いているのがおかしくて(笑)。

──ドラマの最後に次に引っ張られる事件が起こって気になって踊ってる場合じゃないっていうニュアンスがほんと伝わって面白かったです(笑)。

海野 ツイッターのリプライで、「せんせーがお描きになったんでしょー」っていわれました(笑)。

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