皆さんは「レシピ付き料理漫画」ってご存知ですか? 漫画の中に料理をするシーンと、その作り方やレシピが書いてある漫画のことです。
元祖・レシピ付き料理漫画的存在の『クッキングパパ』を始め、レシピ付き料理漫画は既に一大ジャンルを築いています。『クッキングパパ』は大ブームを引き起こした「おにぎらず」の発案なのが話題になったのが記憶に新しいですよね。
※『クッキングパパ』より。いまや定番レシピの「おにぎらず」も『クッキングパパ』から生まれた。
よしながふみさんの『きのう何食べた?』は筧史朗と矢吹賢二の「食生活」を中心にLGBTを取り巻く諸事情や、家族関係を描いている漫画ですが、時にシリアスな場面を「料理」の存在がまろやかにしてくれています。
※『きのう何食べた?』より
連載の経過と共に登場人物も年を重ね成長していくのもこの漫画の特徴ですが、「料理」というスパイスがリアリティや没入感、そして登場人物への共感を更に高めてくれます。
小沢真理さんの『銀のスプーン』は入院した母に代わり、初めて台所に立つ主人公の律の弟妹への愛や、日々の成長が「料理」を通してあなたも実体験することができる「レシピ付き料理漫画」。
※『銀のスプーン』より
今まで料理をしたことが無かった人も、料理をしたことがなかった律と共に成長すること請け合い。料理の楽しさや、「ごはん」で繋がる幸せは、作品の中を飛び出して、あなたも幸せにするでしょう。
さて、そんな一大ジャンル、「レシピ付き料理漫画」に新星が現れました! 桑原太矩さんの『空挺ドラゴンズ』です。
この漫画はいわゆる「ファンタジー」世界での「レシピ付き料理漫画」です。同ジャンルでは九井諒子さんの『ダンジョン飯』が最近話題になってましたね。
「ファンタジー」の世界は、ファンタジーを愛するファンの「共同幻想」で創り上げられるものなのですが、不思議と今まで「食」にフォーカスした物はありませんでした。
去年話題になった、野田サトルさんの『ゴールデンカムイ』は明治末期をテーマにした冒険漫画です。この漫画の誕生で、明治時代の「アイヌ文化」へのイメージが数多くの人の脳内で再生しはじめました。
アイヌ料理の作り方、そして獲物の屠りかたを知ることで、よりアイヌ文化への興味や関心は増しますし、料理を通じて主人公とアイヌ人少女の心が打ち解けていく様も、よりリアルに感じるとる事ができます。
見たこともない、遠い時代と読者とを「料理」が接着剤となって繋いでいるわけです。
さて、ファンタジーがテーマの場合はどうでしょう? ファンタジーの世界は、小説や漫画、テーブルトークRPGや、ゲームブック、と色々な創作物から生まれた解釈がファンタジーファンの間で熟成され、今に至ってます。
でも……不思議と「食」部分はおざなりにされて来てませんでしたか?
近年こそ「空腹値」が設けられたゲームも珍しくはありませんが、薬草や回復薬さえあれば、ずっと旅を続けられる「勇者たち」を見て、「何を食べているのだろ?」という疑問はいつも心のどこかにつきまとっていました。
本作『空挺ドラゴンズ』では「捕獲」「屠り」「調理」と龍(おろち)を様々な角度で描いていきます。
テクノロジーと龍が同居する世界は「SF・ファンタジー」カテゴリに入るのでしょうか。
この作品の中では、さまざまな龍の様々な部位を、凄腕の龍捕りの「ミカ」が調理していきます。
作中では、捕獲だけではなく「屠り」から「解体」そして「調理」も描かれており、捕獲した龍の身を一片たりとも余すこと無く戴く「ミカ」の龍、ひいては「命」に対するリスペクトが端々で描かれています。
ページを進める毎に、今まで想像することもしなかった、「龍の味」がこの作品を読むことであなたの脳内の「ファンタジー世界」に影響を及ぼして来ることでしょう。
「何を食べているのだろう」だけではなく、「どんな味がするのか」「どんな調理方法があるのか」「どうやって倒すか」と「龍」の存在がどんどん「リアル」になっていきます。
ファンタジー漫画や、ゲームをの中の「ドラゴン」を見て「うまそう」と言ってしまう経験。そんな経験をしたいあなたにピッタリの1冊です。
・『空挺ドラゴンズ』の公式サイトはこちら⇒http://afternoon.moae.jp/lineup/634
・『クッキング・パパ』の公式サイトはこちら⇒http://morning.moae.jp/lineup/2
・『きのう何食べた?』の公式サイトはこちら⇒http://morning.moae.jp/lineup/24