6月17日に単行本1巻が発売された『乱歩アナザー ─明智小五郎狂詩曲─』。江戸川乱歩の代表作・明智小五郎シリーズの大胆な翻案と、乱歩の耽美な世界観を支える絵の美しさで早くも話題の本作。今回はコミカライズを担当する薫原好江先生にスペシャルインタビュー!
薫原好江(かおるはらよしえ)
デビューは少女誌『デザート』。代表作に『男の子には秘密がある』『キス・アンド・ライド』など。2016年より『少年マガジンエッジ』にて『乱歩アナザー ─明智小五郎狂詩曲─』を連載中。
少年漫画は本作が初めてで、単行本のカバーで男性キャラが服を着ているのもこれが初めて。
──『乱歩アナザー ─明智小五郎狂詩曲─』1巻が発売になりましたが、この企画が生まれた経緯を教えてください。
担当編集と新企画の打ち合わせをしていて、江戸川乱歩の世界観が合うのではというところから「たとえば黒蜥蜴を男にしてみたらどうだろう」ということになり、そこからさらに発展して、明智小五郎シリーズをコミカライズしてみようということになりました。
──タイトルに「アナザー」という言葉が入っていますが、なぜ「アナザー」、あるいは何が「アナザー」なのでしょう?
直訳で「別の」という意味通り、原作を尊重しつつひとひねり加えた、またひと味違う乱歩ワールドのご提案……という感じでしょうか……。たとえるなら「メビウスの輪」。途中ひねりが入るけど、最後には同じ所に戻る……みたいなイメージです。
第1章の「アナザー」は、原作では女賊の黒蜥蜴が美少年に変更されている。
──コミカライズは初めてですが、感想はいかがですか?
とにかく冷や冷やしています。原作の素晴らしい世界観を絶対に維持せねばというのと、漫画として楽しんでいただくためのアレンジをどこまでしていいものかというのを、ひたすら悩みつつ手探りで進めています。でも明智先生をはじめ、キャラクター性の強い登場人物ばかりなので、そこは楽しんで描かせていただいてます。
──現代ものではない作品も初めてですよね。大変では?
時代設定を戦前の昭和初期にしているのですが、その当時の情報収集はむしろ楽しいです。手間はかかりますが。和洋折衷の建築物や小物は見るだけでときめくし、今と違ってわりと何でもあり……というと語弊がありますが、創作する場合には自由度の高い時代背景に一種の高ぶりを覚えます。素敵な洋館で日本刀振り回してもいいとか、そういう(笑)……。余談ですが、この作品のためにそろえた資料が銃の模型、日本刀(模造刀)、手錠、骸骨の模型などで……現在、家がカオスです。
──1巻には第1章・黒蜥蜴編が収録されていますが、自分なりのこだわりや見所などを教えていただければ。
黒蜥蜴を男の子として描かせていただいていますが、原作の黒蜥蜴の雰囲気は絶対死守。というのがこだわりでしょうか……。そして、それゆえの明智先生との関係性が見所かと思います。原作では明智先生と黒蜥蜴の男女のロマンスもありますが、男同士だとどうなるのか、という……。
挑発し合う明智と黒蜥蜴。探偵と怪盗、相対するふたりの執着は何処へ行き着くのか……。
あと、原作の『黒蜥蜴』では登場していない、少年探偵団の小林くんが登場するのも見所かなと。年齢も18歳設定で、原作より上げさせてもらっていて、その歳ならではの葛藤しながら成長していくところは、自分自身こだわって描きたいです。
──1巻の中で特に苦労したシーンや、気に入ってるシーンなども教えてください。
1巻で苦労したのは、2話の遠藤平吉さんの登場シーンです。乱歩ファンの方にはおなじみの「あの方」なんですが……登場させるうえで必然性のあるエピソードにするために何度もネームを直しました。多重人格という設定もどう扱うか等、かなり苦労した覚えがあります。
“二十の人格を持ち、人格が変わると顔貌も変わる”って……まさか……!?
気に入っているシーンは3話の、明智先生の仕事を小林くんが手伝う所です。明智先生が執事、小林くんがちょっと生意気なお坊ちゃんに扮する、普段の立ち位置が真逆になるところが気に入っています。
明智小五郎の得意技(?)といえば、変装。小林少年ともども、今後も様々な変装シーンが……!?
──もしよければ、第1章・黒蜥蜴編のこの先の展開と、あと、続く第2章で今度は何をやるのかを教えていただければ……。
この先の展開は、ついに舞台が黒蜥蜴のアジトへ移ります。登場人物がそれぞれの想いを抱きつつ、1巻以上に激しい攻防を繰り広げる予定です。 そして別の質問でもちょっと触れましたが、明智先生と黒蜥蜴の「乱歩アナザー」としての関係性と、小林くんの助手としての在り方と現状の自分との葛藤に、ひとつ答えが出る……という感じです。 第2章は「心理試験」をやる予定です。黒蜥蜴編より和のテイストを多くしたいなと思っているので、登場人物の和装とか描けたらいいなと企んでいます。
──最後に、読者のみなさんへ一言お願いします。
原作を知っている方、知らない方にも楽しんでいただけるよう頑張りますので、どうぞよろしくお願いいたします!
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