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2016.05.20

インタビュー

“年齢差萌え”の食卓、なぜおいしいの!?──先生と教え子と愛娘のドラマ

“ぼっち飯”や実在する店が登場するものなど、「食」漫画群雄割拠の時代に、年齢性別を問わず広く支持を集めている『甘々と稲妻』。妻に先立たれ、娘のつむぎと2人残された高校教師の犬塚公平が、ふとしたことから教え子の飯田小鳥とともにごはんをつくって食べるという朗らかな日常と少し変わった《食卓》が描かれる。TVアニメ化を記念して、作者の雨隠ギド先生に話を聞きました。

雨隠ギド(あまがくれ・ぎど)

2007年に「Wings」(新書館)でデビュー。
代表作に『ファンタズム』『まぼろしにふれてよ』(新書館)、『恋煩いフリークス』(エンターブレイン)など。 ファンタジー、百合、BLなど広いジャンルで活躍し、繊細な心理描写と優しい筆致で多くのファンを獲得している。
2013年2月より、「good!アフタヌーン」で『甘々と稲妻』を連載開始。

好きなものを全部のせ!

『甘々と稲妻』

皆でつくって皆で食べる!

──『甘々と稲妻』は雨隠先生の大好物がつまっているとうかがいました。

雨隠ギド先生(以下:雨隠):そうなんです! まずは「先生と生徒」。いわゆる年齢差萌えというやつでして、普段は「先生」「生徒」という特定の関係にある人たちが学校を離れて違う関係性を築くのを描きたかったんです。私がごはんを食べることが好きだったので、犬塚先生・娘のつむぎ・生徒の小鳥の3人をつなぐものを「料理」にしました。結構単純な理由で生まれた感じですね(笑)。

──先生ご自身の料理の腕前は?

雨隠:正直あまり上手くなくって……。でも犬塚先生や小鳥のような料理初心者の気持ちがすごくわかるので描くのには良かったですね。作中で先生がイカを捌いた時にあたふたしたり変なテンションになっていますが、私もあんな風になりました(笑)。でも最近はキャラたちの料理の腕が上がってきているので私もがんばらないといけないと焦っています……!

──登場した料理はレシピが載っているので、キャラクターと同じようにつくって食べられる楽しさもありますよね。実際につくってみたものはありますか?

雨隠:2巻に登場したグラタンは自分でもいい感じにできて「やったー!」となりました。カレーをつくってみたという読者の方から「すごくおいしい!!」という感想をいただいた時は「そうでしょ、そうでしょ!」という気持ちになりましたね。お話そのものへの反響も大きかったですし、とても嬉しかったです。

──普段はどのように漫画をつくっているのでしょう?

雨隠:まず担当編集者と打ち合わせをしてストーリーラインを決めます。そこからお話に合いそうな料理案をいくつか出して料理の監修をお願いしている調理師の帯刀陽さんに相談します。帯刀さんのご自宅に担当編集者とお邪魔して一緒に料理を作り、手順や味、見た目を確認してから最終的なレシピをつくってもらっています。本当に頼りにしています! その後ネーム・作画に取り掛かるという順ですね。頭の中で好き勝手に考えている妄想の段階が一番好きで実はネームが苦手なのですが、良いものに仕上がるとそのぶん嬉しいです。

──各キャラクターを描く上でのこだわりはありますか?

雨隠:つむぎは「丸み」がポイントです。毛先などリアルすぎずデフォルメにもなりすぎず……というのを意識しています。犬塚先生はすごくカッコ良い人にならないよう髪型などで普通っぽくなるように気をつけています。実はつむぎのふわふわ髪は犬塚先生と通じるデザインになっているんですよ。小鳥は美しい黒髪のツヤ。ツヤベタ(ツヤのある黒髪に描くこと)をきれいに!! とアシさんにがんばってもらっています。

──ごはんとともに『甘々と稲妻』最大の魅力のひとつは、つむぎの溌剌とした存在感だと思います。お手伝いをしている時や食べ物を口に入れた瞬間のセリフや表情はすごく意外性があって、毎回驚くとともにキュンキュンします。つむぎ以外のキャラクターも、表情が生き生きとしていてたまらないです。

雨隠:ありがとうございます! つむぎは子供ならではの言動の面白さを描いてみたかったので描いていて楽しいですね。表情に関しては良い感じに描ければ最初のデザインからはみ出してもいいと思っています。最近描いたものでは5巻の表紙のつむぎが好評だったと担当さんから聞きました。泣き顔を描くのは好きなのでがんばって描きました! 自分でもお気に入りです。

『甘々と稲妻』

つむぎの百面相。毎回まったく違うけれど「おいしそう」に食べているのが伝わる。

──作中でつむぎはよくお手伝いをしていますが、火や刃物を使うので料理中は子供を遠ざける親御さんも多いと思います。描く上で気をつけていることはありますか?

雨隠:大人サイドがいくら用意しても子供は思い通りにはなってくれないことが多いですし、「なんでもかんでもお手伝いができます!」というのはちょっと違うかなと。お手伝いすることで達成感が味わえれば、たとえそれが全体のうちの一部にすぎなくても、またやりたいと思ってくれると思うのです。だからつむぎがやっても楽しめそうにないものは、作中ではやらせていません。逆につむぎが楽しくお手伝いできそうかな、つむぎがやったら楽しいだろうな、ということは一緒にやらせてみるようにしています。最初の1、2話はまだキャラもうまくつかめていなかったですし、ごはんをつくるシーンの入れ方など迷うことが多くて手探りでした。でも最近はつむぎを動かすとお話が動くので私も楽しくなってくるんです。

予想外が降ってくる! 素敵な豪華声優陣!

──つむぎ・犬塚先生・小鳥などのキャストが発表され、アニメの公式サイトではムービーも公開されています。アニメ化前の段階で、各キャラクターの声について具体的なイメージはありましたか?

雨隠:特にありませんでした。実はオーディションにお邪魔しまして、遠藤璃菜さんはつむぎ役の第1希望でした! 良い意味で私の予想とは全然違うものが降ってくる感じがして、それがすごく素敵なんです。あとはもう、声。いいな〜かわいいな〜って、なっちゃいました。

──ベタ惚れなのですね。3月に開催された「Anime Japan」では多くの作品の映像が流れている中でも耳を奪われる存在感がありました! まだムービーには登場していませんが、他のキャストの方も楽しみです。

雨隠:犬塚先生役の中村悠一さんは、オーディションの時からつむぎに向けて話すセリフがちゃんと膝を折って話しているように聞こえました。つむぎの目の高さに降りて、視線を合わせて話しかけている様を声のお芝居だけで感じられるなんて本当に素晴らしいですし、とても素敵ですよね! 小鳥は外見のイメージでしっかりしているように見えたりしますが、内面は天然だったり大食いだったりして、外見と内面にギャップがあります。小鳥役の早見沙織さんは、その両方をちゃんと表現してくださっていてすごく嬉しいです!

『甘々と稲妻』

きちんと目を見て思いを伝える。まっすぐな気持ちはきっと伝わる。

──監督の岩崎さんやシリーズ構成の広田さんなど制作の方とお話ししていて印象的だったことはありますか?

雨隠:岩崎監督や広田さんに「この時のつむぎはこういう気持ちですか?」と聞かれることが度々あったのですが、普段は割とフィーリングで描いているので結構言葉に詰まっちゃって(笑)。自分の描くものをじっくり突き詰めて考えるのは新鮮な体験でした。

──TVアニメ「甘々と稲妻」にはどのようなことを期待していますか?

雨隠:元気よく動くつむぎを見るのがとても楽しみです。色がついておいしそうになったごはんも! 私もいち視聴者、いちファンとして期待しているので、皆さんと一緒にテレビの前で楽しめたら嬉しいです。

TVアニメ「甘々と稲妻」は2016年7月より放送開始。アニメが始まる前に原作を要チェックです!

『甘々と稲妻』
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