心と体を満たす朝ごはんの物語『あさめしまえ』。作中に登場したレシピを著者・北駒生さんが解説するシリーズも今回で最終回。簡単に作れるオムキャベ焼き、東北の郷土料理・おくずかけを紹介。どれも難しくなく、滋味深いものばかり。あなたの朝ごはんのレパートリーにぜひ。
第3回 ITAN スーパーキャラクターコミック大賞で優秀賞を受賞し、デビュー。『あさめしまえ』(BE・LOVE)で初連載。日本朝食協会主催「グッドモーニングAWARD2015」文化部門受賞。
5巻・27膳目「オムレツ・ミーツ・キャベツ」
5巻では元の母の物語がつづきます。
妻、不貞、母、失格。役割ごとに裁かれる女性を、裁かないで描きたかった。それにしても低音のブルーズが鳴りすぎました……読んでくださった方に感謝しています。
母の章がおわり、キャベツを持ったまひるが現れます。
「雪のなかで育ったキャベツなら、あたたかく蒸して卵でくるみたい。疲れたお客さんのこともタオルでくるみたい」
元のシンプルな判断は、わたし自身が忘れかけていたものでした。まひるが元に興味をもったのも、タオルの気持ちひとつだったのだと思います。
そして2巻からここまで、くりかえし「生活はつづいていく」ことを言っている。やっかいな現実のことを、面倒がりつつ好いているんだと気づきました。
一時期、締め切り前に毎日オムキャベ焼きを作っていました。オムキャベ焼きはお好み焼き風にしてもおいしいです。ケチャップのかわりに、かつおぶしとお好みソースでどうぞ。
【オムキャベ焼き】
[材料]
・キャベツ3枚
・卵3個
・油小さじ1
・塩こしょう少々
・ケチャップ・マヨネーズ適量
[作り方]
①千切りにしたキャベツに塩ひとつまみをまぶし、2~3分放置する。
②①を軽く絞り、中火のフライパンにフタをして2~3分蒸し、皿にとる。
③かき混ぜた卵に塩こしょうを入れる。
④中火で温めたフライパンに油小さじ1を入れて③の卵を流す。
⑤卵が半熟状態になったら②を戻し、オムレツの要領で焼く。
⑥ケチャップ、マヨネーズをかける。
ケチャップでも、お好み焼き風でも。柔らかく仕上げたキャベツがヘルシーな一品。
6巻・33膳目「東北にて、朝の飯」
最終回直前、元が東北に行ったときの話です。
東北の郷土料理・おくずかけやしそ巻きは、仙台出身の中川先生から教わりました。やさしい出しと、根菜と温麺(うーめん)の食感にほっとします。東北の故郷の味もお試しください。
「飲食店のひとつが閉まろうとどうなろうと、親がいなくなるわけじゃない」。
弱った元はまひるに言いますが、親を亡くしたまひるには、朝ごはんが母とつながるしるしでした。幼い元にとっての食堂「アサメシマエ」もそうでした。
元のつくる朝ごはんは、お客さんの心をなだめ、つかのまごきげんにしてきました。人生を変えたりはしません。それでも、気に入りのごはんを食べると、気持ちがすこし色づくこと。心の内が色づくと、外の色づきが目に入ること。
自転車に乗るコツのように単純な、生きる技術のひとつです。
オムニバス形式で始まったこの連載は、当初はおだやかな小話を意識していました。それでも、描くうちにキャラクターたちは正直に怒り、笑い、気ままに進んでいきました。ほころびだらけの幸せな漫画です。読んでくださった皆さま、今までありがとうございました。
【おくずかけ】
[材料]
・出し……水1リットルに干しいたけ2個、昆布長さ5cmほどをつけたもの。前の晩に準備しておく
・ごぼう1/4本……ささがきにする
・大根80g……いちょう切り
・なす1本……半月切り
・人参40g……いちょう切り
・れんこん40g……いちょう切り
・豆麩10g
・油揚げ1/2枚……細切り
・温麺(うーめん)、(またはそうめん)100g
・しょうゆ大さじ2
・酒大さじ1
・みりん大さじ1
[作り方]
①出しを用意し、つけていた椎茸、昆布は千切りする。
②豆麩を水で戻す。
③すべての野菜を出しと合わせて煮る。アクが出たらすくい取る。
④温麺、豆麩、油揚げ、出しで使った椎茸と昆布を加え、少し煮る。
※そうめんを使う場合は半分に折って入れる。
⑤しょうゆ、酒、みりんで味をととのえる。
⑥温麺が柔らかくなってとろみが出たら完成。
根菜のうまみにほっとする。真心のある朝ごはんはお腹だけでなく心も溶きほぐしてくれる。