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2026.10.01

レビュー

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「アナタは何でできていますか?」宇宙人からの究極の問いに、人類存亡を懸けて挑む『宇宙人と出会う前に読む本』

いつか訪れる「宇宙人と遭遇する日」に備えて

もしあなたが、いつかどこかで地球外知的生命体、いわゆる宇宙人と出会い、人間や地球について質問されたら、なんと答えますか? それも、その答えにとんでもない責任を背負わされたとしたら……。

2026年の話題作『プロジェクト・ヘイル・メアリー』では、人と地球外知的生命体とのコミュニケーションの妙が描かれていました。言語をはじめ様々な前提が異なる相手とどうやって意思疎通するのかという課題をクリアしていく様も、同作の大きな魅力のひとつです。

そして本作。こちらも同じように、人と地球外知的生命体との接触がありますが、その出会いは穏やかなものではありません。

主人公は、宇宙そして宇宙人の存在に想いを馳せ、大学院で航空宇宙工学を学ぶ有留木円(うるきつぶら)。彼女がある日突然、アブダクション(宇宙人に誘拐)されてしまうところから物語は始まります。

「アナタは何でできている?」シンプルな問いにどう答える?

本作に登場する宇宙人には特殊能力があり、相手に合わせた言語のチューニング、さらにはビジュアルのコントロールも可能。つまり「人間同士による日本語での会話」が一応、成立します。そんな謎だらけの宇宙人から投げかけられたのが、この質問。
何でできているか――。相手や状況によっては「好きなもの」を挙げることが妥当なケースもあるでしょう。「私は音楽と漫画とチョコレートでできています」「私を構成する9つの映画」みたいな。しかし相手は宇宙人。たぶん、いや絶対これじゃない。

有留木はさすが理系かつ宇宙人の存在について意識していただけあり、冷静に分析します。問われているのは人体を構成しているものであると理解し、「肉」「骨」「タンパク質」など考えを巡らせつつ、最終的に「炭素」と回答。

いきなりの宇宙人の登場、そしてアブダクションという状況は、スペースファンタジー的展開をイメージさせます。けれどもこの謎めいた宇宙人の、シンプルでありながら奥深い問いに機転を利かせて明確に回答する彼女と、この回答を理解した宇宙人を見て、私はある予感を抱くのです。本作は、活劇メインのスペースファンタジーではなく、知性・思考重視のサイエンスフィクションではないか、と。

異星人とのコミュニケーション術を知る

先ほどの「炭素」という有留木の回答。実は最初、宇宙人はこれを理解できませんでした。それは知的レベルうんぬんではなく、単純な話。
「炭素」という言葉が何を指すのかが、わからないのです。たとえお互いの世界に共通して存在したとしても、人が名付けた名称では、宇宙人に通じないのも当然のこと。
このおじいちゃんは、有留木が師事した航空宇宙工学の稲見(いなみ)教授。彼の推察通りとなるわけですが、しかし一方で、教授はこうも言います。
地球での原子番号1番となる水素は、どの宇宙人にとっても「1番」であり、この世界で一番初めに生まれ、「1」を表す“宇宙共通の言語”と捉えることもできる。

この教授の教えを思い出した有留木は、「炭素」はこの世界の6番目の元素のことであると伝え、なんとか相手に理解してもらうことに成功。
まさしく「宇宙人と出会う前に読む本」というタイトルにふわさしいエピソードです。宇宙規模に限らず、もしかしたら、この地球の歴史において初めて異言語話者と相対した人たちも、こうして何かお互いに共通項となるものを探りながら、試行錯誤してコミュニケーションを図っていたのかも!?

有留木が背負うのは、地球の運命! 回答次第では滅亡の危機!?

この宇宙人の問いは、最初の1問では終わりません。
「永遠」という言葉も、誇張ではないリアルさが漂います。なにせ相手は宇宙人。彼らの時間軸も寿命もわからない。そしてたびたび相手の口から発せられる「アナタの未来のために」というフレーズ。どうしたって気になります。
彼女は“宇宙人の目的は人類を滅ぼすこと”と推察しますが、当の宇宙人は少し意外な反応を示します。ただし、地球の命運は有留木の肩に……その回答にかかっていることに変わりはなく。まるですべての問いに正解しないと即死亡、というデスゲームの渦中にいるかのよう。

宇宙人から次々と繰り出されるシンプルな質問の数々に答え続ける有留木。宇宙人と地球人の奇跡の交流にも見えるこの構図は、デスゲームだと思って見ると俄然スリリングに映ります。また、「人は何でできている?」に代表される、根源的ともいえる問いに対して彼女がどう考え、答えを導き出すのか。その過程を詳細に描く様も、本作の大きな見どころ。生命や地球そのものを理解するためのアプローチに知的好奇心が刺激され、私たち読者があらたな視点や発見に触れる可能性を秘めています。
宇宙人と出会う前に、私たちはまず、自分たちのことを深く理解する必要があるのかもしれません。

宇宙人の問いや対話によって導かれる、人類とこの星を深く知る“2026年地球の旅”。目的地はまだわかりませんが、無事にゴールへとたどり着けるよう、有留木と共に遥かなる道のりを進みたいと思います!

レビュアー

ほしのん

中央線沿線を愛する漫画・音楽・テレビ好きライター。主にロック系のライブレポートも執筆中。

X(旧twitter):@hoshino2009

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