いつか訪れる「宇宙人と遭遇する日」に備えて
2026年の話題作『プロジェクト・ヘイル・メアリー』では、人と地球外知的生命体とのコミュニケーションの妙が描かれていました。言語をはじめ様々な前提が異なる相手とどうやって意思疎通するのかという課題をクリアしていく様も、同作の大きな魅力のひとつです。
そして本作。こちらも同じように、人と地球外知的生命体との接触がありますが、その出会いは穏やかなものではありません。
主人公は、宇宙そして宇宙人の存在に想いを馳せ、大学院で航空宇宙工学を学ぶ有留木円(うるきつぶら)。彼女がある日突然、アブダクション(宇宙人に誘拐)されてしまうところから物語は始まります。
「アナタは何でできている?」シンプルな問いにどう答える?
有留木はさすが理系かつ宇宙人の存在について意識していただけあり、冷静に分析します。問われているのは人体を構成しているものであると理解し、「肉」「骨」「タンパク質」など考えを巡らせつつ、最終的に「炭素」と回答。
いきなりの宇宙人の登場、そしてアブダクションという状況は、スペースファンタジー的展開をイメージさせます。けれどもこの謎めいた宇宙人の、シンプルでありながら奥深い問いに機転を利かせて明確に回答する彼女と、この回答を理解した宇宙人を見て、私はある予感を抱くのです。本作は、活劇メインのスペースファンタジーではなく、知性・思考重視のサイエンスフィクションではないか、と。
異星人とのコミュニケーション術を知る
この教授の教えを思い出した有留木は、「炭素」はこの世界の6番目の元素のことであると伝え、なんとか相手に理解してもらうことに成功。
有留木が背負うのは、地球の運命! 回答次第では滅亡の危機!?
宇宙人から次々と繰り出されるシンプルな質問の数々に答え続ける有留木。宇宙人と地球人の奇跡の交流にも見えるこの構図は、デスゲームだと思って見ると俄然スリリングに映ります。また、「人は何でできている?」に代表される、根源的ともいえる問いに対して彼女がどう考え、答えを導き出すのか。その過程を詳細に描く様も、本作の大きな見どころ。生命や地球そのものを理解するためのアプローチに知的好奇心が刺激され、私たち読者があらたな視点や発見に触れる可能性を秘めています。
宇宙人の問いや対話によって導かれる、人類とこの星を深く知る“2026年地球の旅”。目的地はまだわかりませんが、無事にゴールへとたどり着けるよう、有留木と共に遥かなる道のりを進みたいと思います!








