しがない不動産屋のおじさん、転生せずに暴力で成り上がる
そんな小日向は現在……。
少し時間を戻そう。
金に困っていて寿命も短い、でも基本的には善良な小市民の小日向は、“おいしいバイト”の話を聞く。今や“おいしいバイト”イコール“闇バイト”なのは周知のことなのに、ブルーギルのように餌に食らいつく小日向! リアルター(=不動産屋)のコードネームでひとつ、ふたつ簡単な仕事をこなし、次に向かわされたのがタタキ(=強盗)の現場。怖いお兄さんが「お邪魔してまーす」の挨拶と同時にバットを振り下ろし、指示役からの情報どおり2000万円以上の現金を奪った強盗集団。小日向は躊躇しながら様子を見守っていたが、被害者が悪徳不動産業者であること知り、沸々と怒りにも似た感情が湧き上がる。
「これでもう行きつく先は天国か地獄だな」
行き着かなくても、おいしいバイトに食いついた時点で、“生き地獄”に足を突っ込んでいるのだが、小日向はすでに“あの世”に片足を突っ込んでいるので怖くない。ただ、山分けした金で借金返済の目処がついた今、家族のことを考えると闇バイトから抜けたい。
そんな思いを抱えて臨んだ次のタタキの現場は……、パッキパキにキマった覚醒剤中毒者がバットを振り回す家。なんとかスタンガンで応戦し、覚醒剤が入った金庫を運び出すことに成功するのだが、報酬が払われない。しょせん実行犯は使い捨て。弱みを握られた小日向ら強盗団は、言われるがまま。しかし“あの世”に片足を突っ込んでいる小日向は、「これまでの報酬を払ってくださいよ」と迫る。そこに、これまで姿を見せなかった指示役・サイモンが現れる。
平然と暴力を振るう彼に恐怖を抱きつつも、闇バイトを辞めたいと、土下座をする小日向。
「この仕事を抜けたいんですよね? 構いませんよ」と言うサイモンのスマホには……
「続けるか辞めるか…どちらを選択しますか?」
スマホを見せて脅すこともなく、小日向が「辞める」と言えば、サイモンは非道な判断を下すに違いない。娘に迫る危機を知らない小日向だったが、サイモンの挙動を不審に思い「続けさせてください」と答える。なんとか危機を回避した彼は、同じように弱みを握られている強盗団に提案する。
ワルとワルの潰し合い
日本最大のマフィアのボスに成り上がった小日向は言う。
「裏切り者は決して許すな」
彼は、その言葉をサイモンから教わったという……。
鋭い洞察力を持ち、死期が近いゆえに怖いものがない小日向だが、それだけで成り上がれるほど犯罪組織は甘くない。進行が早いと言われる胃がんのステージ2から3。この寿命という制限時間のなかで、小日向はサイモンに対峙していく。その一方でサイモンは、小日向の資質を嗅ぎつけ、彼の弱点である“家族”に近づき、支配下に置こうとする。
『リアルター』は、圧倒的な強者サイモンと、弱者小日向の対決を軸にした息を呑むクライム・サスペンスだが、第1巻は、まだまだ序章。喰うか、喰われるか、その駆け引きは次巻以降のお楽しみ……だ。








