それは、死んだはずの山田の声でした。
“山田がいた教室”ではなく、“山田がいる教室”
派手な髪色に、誰とでもすぐ打ち解ける明るい性格。山田は2年E組の中心人物でした。けれど彼の魅力は、その陽キャっぷりだけではありません。
実は誰よりもクラスのみんなを見ていて、誰よりも2年E組のことを理解している。そんな山田の人柄がよくわかるのが、第1話で描かれる「最強の席順」です。
なぜこの並びなのか――その理由が語られた瞬間、沈み切っていた教室に少しずつ笑顔が戻っていきます。
ああ、山田って、本当にこのクラスが好きだったんだな、と。
笑っているのに、ずっと切ない
クラスメイトたちは今日もくだらないことを言うし、山田もいつも通りツッコミを入れる。一見すると、以前と変わらない男子高校生たちの日常が続いているようにも見えます。
でも、ふとした瞬間に思い出してしまう。
山田は、もうそこにはいない。
聞こえてくるのは“声だけ”なのだと。
泣いて、叫んで、立ち直っていく――そんな分かりやすい物語ではない。
むしろ彼らは、いつも通りバカをやって、笑って、山田と話し続ける。だからこそ逆に、「もう触れられない存在なんだ」という現実が静かに刺さってくるのです。
それでも、夕焼けが見えないなら誰かが言葉で描写すればいい。声しか届かないなら、その声を中心にまた教室を回していけばいい。
35人全員がちゃんと“いる”教室
35人いる2年E組の生徒たちをしっかり描き分け、それぞれの空気感や距離感まで自然に伝わってくる。“教室”という空間そのものが、生きているんです。
特に表情描写は見事で、ふざけて笑っている顔の奥にある寂しさや、山田の声を聞いた瞬間の揺れまで、漫画だからこそダイレクトに胸へ届いてきます。
それでも、ぜひ漫画版のペースで追いかけてほしい。彼らの間や沈黙、教室に流れる空気は、“絵”になることでまた違った切なさを帯びているからです。
“喪失”の中で続いていく青春
そして、2年E組の青春はこの先どこへ向かっていくのか。
笑えるのに、ずっと切ない。
青春なのに、“死”が静かに居座り続けている。
『死んだ山田と教室』は、そんな不思議な読後感を残す、“喪失”から始まる青春譚です。








