家族の帰りを待つ
今日マチ子さんの『るすばん猫きなこ』は震災の物語だ。読むと15年前に感じたあの強い感情を思い出す。津波や原発事故を描いた大きなページを開くと地響きがするようで、サッとめくってしまうこともある。サッとめくると後ろめたさを感じる。その後ろめたさは、東北で作られた電気を使って東京で暮らしてきた自分があの日からずっと抱えている感情と似ている。
それでもこのマンガを何度も読んで最後まで見守りたいと思うのは、私の心残りが「読もうよ」と呼ぶからだ。
主人公は、生まれて間もない子猫の“きなこ”と小学1年生の“ここな”。物語はきなこが0歳2ヵ月と1日目に始まる。その日、ふたりが暮らす町ですさまじい地震が起こった。その夜からふたりは「おるすばん」を始める。
ちょうど同じ頃、ここなのお友達で、きなこの「おねえさん」の“さき”は避難所にいた。
猫とユーレイが一人
地震が起きて、津波が町に押し寄せた翌日、ここなときなこは外を歩くことに。ふたりは、初めて会った昨日と同じように元気いっぱいだが、昨日までとは違うところもある。
ユーレイにはいくつか決まりがある。まず、ユーレイはほとんどの人間には見えない。肉体的な痛みからは解放されているが、さみしい気持ちに沈むこともあるし、うれしくて笑うこともある。そしてユーレイは移動もできない。でも猫にくっつけば移動できるらしい。とはいえ子猫の足で移動できるエリアは町の中くらい。
この町には生きている人間もわずかだがいる。たとえば近所のおんぼろ屋敷に暮らす“千代子”。千代子は避難の呼びかけに応じず家に残っていた。そしてユーレイの姿が見えるらしい。
本作は私たちが知っている現実をていねいに取材したうえで描かれた物語のようだ。災害のことも、避難区域に残されたペットたちのことも、避難所での暮らしも、そして残された人たちの気持ちも物語の中にある。たくさんの「実際に起こったこと」を15年ぶん積み上げたうえで生まれたマンガであり、だからこのマンガの世界にいるユーレイたちを信じることは、私にとって、ものすごく救いになる。








