実際、トカラ列島近海では地震が連発。南海トラフ地震への影響はないと言われてはいるものの、「いつ巨大地震が起きてもおかしくない国」に私たちは暮らしている。その事実を改めて意識させられます。
このマンガを読むまで、南海トラフ地震といえば「西日本に甚大な被害が出るもの」と思っていました。
しかし、それ以外の地域で暮らしていても、影響は大きいということがわかりました。
このお話の主人公は、工事現場で派遣として働く西藤命(さいとうめい)。
孤独や虚しさを紛らわせるためにパチンコに通い、せっかく稼いだ金も溶かしてしまう―― そんなうだつが上らない日々を送っていました。
「こんな世界、壊れちまったら楽なのに……」
そう思いながら名古屋港で海を見ていた命は、釣り人のジイさんに絡(から)まれてしまいます。


和歌山県南方沖でマグニチュード9.2、最大震度7、南海トラフ巨大地震が発生!! さらに大津波警報も発令され、状況は一変します。
一刻も早く高台に逃げたい命。
しかし、倒れた電柱で足を怪我したジイさんを見捨てることもできず、ジイさんを背負って逃げることに。

でもこのジイさん、「なにちんたらやってんだ」「早く走れよ」「ワシを殺す気か、この馬鹿モン!!」と暴言ばかり。助けてもらってる立場で、よくもまぁこんなこと言えるな、というくらい酷い。
そこへ、防災無線が響きます。
「既に港区全域に津波が到達しています!! 至急高台へ逃げてください!!」
このマンガで初めて知ったのですが、名古屋で想定されている津波は、東日本大震災のときのような大きな白波ではないのだとか。いつの間にか近づいて、気づいたときには手遅れ……そんな津波だというのです。
「津波なんて来ないじゃん」と油断していた命も、足元まで迫る津波を見てついにジイさんを背中から下ろします。


ところが命は、「このまま見殺しにはできない」と、ジイさんと一緒に車の中に避難します。
えっ、車って危険なんじゃない!? 大丈夫なの!? と思わず心の中で叫びました。
このマンガには、「自分だったらどうするだろう?」と命を通して考えさせられるシーンが出てきます。
そのたびに、「私なら走って逃げる」と思うけど、それは今“安全な場所”にいるから言えること。現実に、何が起こるかわからない極限状態にいたら、冷静な判断なんてできないかもしれない――そう思わされます。
だからこそ、予備知識を持つことは、とても大事だと感じました。
たとえば、車内に閉じ込められたときの脱出法も描かれています。


一部区域では震度6弱が想定され、立っていられない揺れが10分以上続く可能性があるというのです。
さらに地震に連動して「富士山の噴火」まで起こる可能性も! その火山灰による影響なんて、考えたこともありませんでした!!


備えあれば憂いなし。『南海トラフ巨大地震』はマンガとしての面白さだけでなく、いざというときに命を守るための知識も得られる “防災エンタメ”の決定版と言える作品だと思います。