しかもそれが、毎日顔を合わせる職場の人だったら。
関係が壊れることを恐れて、好きという気持ちに気づかないふりをしてしまう。
そんな経験、ありませんか?
主人公の名執冴香(なとりさえか)は、広告代理店で働く、しっかり者の甘えベタ。頼まれると嫌とは言えない性格のせいで、ストレスもマックス。
そんな彼女の前に現れたのが、関西から転勤してきた3期上の千須和旺典(ちすわおうすけ)。
新人研修でさんざん迷惑をかけた相手で、やたらと“ちょっかい”をかけてきます。
「俺のこと好きなんか、名執〜」
こんなセクハラすれすれの言動が許されるのは、千須和が気遣いのできる人だから。そして冴香も、負けずに言い返せる仲だから。
この“ああ言えばこう言う”の掛け合いが、とにかく楽しくて、ずっと見ていたくなります。
しかも千須和は、冴香がピンチのときにはいつもそばにいて、支えてくれるのです。こりゃもう“惚れてまうやろ”。
好意があるから優しくしてくれるのか、誰にでも優しいのか。
一体どっちなのかわからない“人たらし”なのですよ、千須和という男は。
こんな思わせぶりな態度を繰り返されれば、惹かれていくのは当たり前。
さすがに自覚はしているけれど、恋だと認めたくない冴香も、いじらしくて可愛いのです。
そんな心のせめぎ合いが、これでもかというぐらい描かれた第1巻。
第2巻は、一体どんな感じになるのだろうと楽しみにしていたら……冴香は、自分の気持ちが隠せなくなっていました。
特に、千須和の大学時代の女友達・かなみが現れてからというもの、彼女との関係が気になって仕方ない。
この鈍感ヤロー!と毒づきたくなります。
千須和の心が本当に読めなくて、読者としては冴香と同じように迷ってしまうことでしょう。
それはつまり、今までのふたりではなくなるということ。
これがオフィスラブの難しさですよね。
色々と振り回されっぱなしの冴香ですが、読者としても、千須和が憎めない存在として描かれているのは、さすがだなと思いました。
特に第1巻の巻末に収録されている「描き下ろし」や、ひとりで家にいるときの千須和を見ていると、人柄の良さが滲み出ているのです。
今までとは違う段階へと進んだふたりの恋の行方は、第3巻へと持ち越しになりました。
この作品は、タイトルに反して、甘いお話だけではありません(笑)。
むしろ、今までの関係を壊したくない葛藤や、踏み出したあとの気まずさなどが、とても丁寧に描かれています。
だからこそ、軽口の応酬に笑っていたはずなのに、いつの間にか冴香を応援したくなります。
そんなじれったい恋が好きな方、ゆっくりと恋の行方を見届けたい方には、特に刺さる作品だと思います。








