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2026.03.09

レビュー

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愛と絶望の青春群像劇──30人の児童が生きた、愉快で壮絶な日々の記録『その青春』

プリカワになりたかった女の子

楽信小学校5年X組、出席番号5番、イイダジン。
彼は5年生だけどニチアサのアニメ「プリカワ」が大好き。誕生日のプレゼントはプリカワ変身セットをおねだり。親から「着るのは家の中だけ!」って言われたけど、どうしても我慢できなくて、みんなが寝静まった夜の町をプリカワになって歩いてみた。そこで出会ったのが、違う小学校に通うイシヅカリキヤ。彼は言ってくれた。
「かわいいね! プリカワみたいで!」

またイシヅカに出会えるかもと、夜の町を歩くジン。声をかけてきたのは見知らぬおじさん。
「おじさんの家に声が出るプリカワのフィギュアあるよ」
知らない人について行っちゃダメだと言われていたけど、プリカワチップスの景品が欲しくてついて行った。そしたら「おじさんが危ない人なら殺されてたんだよ!」って怒られた。おじさんは、お父さんのお兄さんだった。そしてプリカワ変身セットは親に取り上げられた。

イシヅカへの募る想いを話すと、おじさんは「それは恋だね」と言った。でも、ジンは男の子。おじさんは言う。
「心が女の子なら女の子だよ」

自分が女の子ならイシヅカと付き合えるかもしれないと、コスプレ好きの女子にお願いして女装してみたらとても楽しかった。それをおじさんに話すと
「女の子やめた方が良いと思うんだ。ジンちゃんの趣味ならいいよ…ただなぁ。相手がいるなら話は別だよ。いつか女の子じゃいられなくなるんだよ」
ジンは怒る。
「私は女の子だもん! 男の子に戻るなんて絶対に嫌!!」

女装したジンはイシヅカを呼び出し、「私 女の子になったの」と告白する。するとイシヅカは言う。
「嬉しい… 私もなの!」
ジンの恋は叶わなかったけど、イシヅカと……、いやリッちゃんと親友になった。

それから2年後。リッちゃんに彼氏ができた。吊り目でギザ歯のヤンキー。その彼が言った。
「こいつも男なん。エグ」
こんな奴にリッちゃんを任せられないと思ったジンは、彼氏が最低であることを証明するために、彼を誘惑し、浮気相手になるが、それが原因でリッちゃんとの関係は壊れてしまう。

それから、また時間が経ち、ジンは高校生になった。
大変、キツい漫画だ。

救いがないにもほどがある

マンガや小説、映画にドラマ。救いのない物語なんて、この世の中にはたくさんある。ブラウザの検索窓に「胸糞 マンガ」とか、「胸糞 映画」と打ち込めば、いくらでもレコメンド記事がヒットする。でも、そうした作品のほとんどは、なんらか心惹かれるキャラクターやセリフ、物語、見知らぬ世界の興味(いや、暴力や犯罪、貧困、セックスといったものへの覗き見趣味かも)を満たす“何か”があり、救いがなくてもエンターテインメントとして成立する。そういう“何か”が、この『その青春』にはない。

どんなに血しぶきが飛び散ろうと、体が切り株のように切り刻まれようと、それがホラー映画である限り、人は“エンターテインメント”として消化する。しかし、もし実際の殺人を撮影したスナッフフィルムがあったとして、人はそれを“エンターテインメント”として消化できるだろうか? きっとできない。そういう飲み込めなさが『その青春』にはある。スナッフフィルムが、命の失われる瞬間を捉えるように、『その青春』は心が壊れる瞬間を捉える。それも相当に荒っぽく、雑に、「こんなもんだよ」と言わんばかりに……。漫画の背景は描かれないか、写真を加工したもので、そのなかに貼り込まれるように登場人物が配置される。キャラクターは“かわいい”か、“みにくい”か、極端に描き分けられ、そのどちらも残酷に蹂躙され、絶望しか与えられない。読み手としては、いろいろ倫理をかざして「いや、そういう展開じゃなくていいだろ!」と反論したくなるけれど、その反論がどうにも薄っぺらく思える強さが、『その青春』にはある。

あ~、ジレンマだ。
このレビューを書けば書くほど、どんどん「決してひとりで見ないでください」みたいな煽情的なアオリになってしまう。だから、あまり言いたくないのだけれど、第2話は第1話より壮絶だ。
——
楽信小学校5年X組、出席番号1番のアイカワユズは、人に喜んでもらうのが好きで、人を傷つけることができない性格ゆえに、地獄の縁を歩むことになる……。
——
ココまでで限界。さらに詳しい物語を求めるのは勘弁してほしい。それぐらいにキツイ話であることを知ったうえで、読みたい人はコミックで読んでほしい。でも、警告はしたよ。

レビュアー

嶋津善之

関西出身、映画・漫画・小説から投資・不動産・テック系まで、なんでも対応するライター兼、編集者。座右の銘は「終わらない仕事はない」。

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