この学校、終わってる──クエスト＆スキルで崩壊した学園を救済できるのか!?

「あなたはこれができる！」と言われると「そ、そう？」なんてうれしくなって、そのうち自信につながって、だんだん度胸もついて、最終的にその人本来のポテンシャルを遺憾なく発揮できてしまうことがあるかもしれない。『救済の教室』の主人公“野田誠”に授けられた「特別な力」にもまた、そうした効果があるように思う。

野田にだけ、世界はこんなふうに見える場合があるのだ。

ありとあらゆるハラスメントの権化こと体育教師の盛山を抱きしめるクエストが発生！　しかも10秒以内にやれという。スマホのゲーム画面みたい。

野田は高校教師だ。熱血教師に憧れていたけれど、めちゃくちゃ気弱で生徒からナメられまくって学級崩壊の真っ最中。

野田にとって教室は地獄だった。で、パワハラキングの盛山からも「おどおどするな！　そんなだから生徒に舐められる！」とバシーンと背中をぶったたかれる日々。

そしてある事件により野田の人生はいよいよ極まってしまう。社会的にも生物的にも死のうとしていた。そんな終了間近の野田にだけ、こんなクエスト画面が見えるようになってしまった。さあどうする野田。

いい絵だなあ、口の中が臭そう！　とっさのクエスト画面に「無理無理……」と思う野田だけど、人生がリアルに終わろうとしていたし「クエストクリアで報酬を手に入れよう！」という画面も気になっちゃったし、ヤケクソで盛山に腕を伸ばし……？

ギュッ。盛山も周囲の教師もビックリ。いやー、やればできるもんだな～。クエストって便利かもしれない。で、クエスト報酬は？

度胸が一気に30増えたらしい。これまたゲームみたい。

ちなみに野田の「度胸」のパラメータは、もともと100段階のうち18だった。それがクエスト報酬で30アップして48に！　約266％増。こんなふうに自分の能力を数字で客観視できたら気が大きくなっちゃうだろうなあ。

ということで、野田はなんだか勢いで盛山にもビシッと言えてしまう。さすが度胸48の男。なお野田の智力は最初から高めなようだ。そして予想通り、体力や器用さが低め、特に魅力がすこぶる低いらしい。でもこれがゲームなら、これからどんどん強くなっていくはず。

ではどう強くなっていくのか。そう、ゲームなら次のクエストが待っている。

学級崩壊で地獄のような3年B組で、生徒全員を着席させる？　そんなことできるの？　やっぱり無理？　こんなふうに「できるかできないかギリ不明」なクエストをプレイヤーが必死になってクリアするゲームは、絶対に面白い。そして、そんなゲームはプレイヤー本人に「なんだか自分、成長しちゃったかも？」と思わせる。

クエストとスキルで勢いづいた野田は、少しずつ地獄の教室で変わり、やがて教室そのものを救っていくのだ。野田が見ている以上の地獄がこの教室には隠されている。

で、そんな地獄のクエストをクリアして手にする報酬がこれまた絶妙にいいんだ。

いかにも非力そうな野田に与えられた「火事場の馬鹿力」はいつどこで発動させる？　楽しみ。一度使用するとなくなるあたりもゲームバランスがいい。