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2026.04.17

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ジャングルに育った半裸の男が消費者センターで大活躍『消費生活者ターさん』

まっさらな心で消費生活に挑む

ジャングル生まれジャングル育ちで、日本語や人間の文化を理解しているが人間社会は未経験という男性が、現代の日本での暮らしに慣れ、サバイバルするには、まず何をすればいいか。そんなこと一度も考えたことなかったが『消費生活者ターさん』の日本政府が選んだ策は「消費生活センターに預けて、そこでいろいろ学んでもらおう!」だった。
彼の名はターザン……ではなく“ター”さん。ターさんの強い意気込みを前に「ええっ⁉」みたいな顔をしているのは、東京都熱台区の消費生活センターのみなさん。

消費生活センター職員各位の感想に一語一句同意する。これは混沌だ。で、仕事の忙しさも手伝って、なんとなくターさんの新生活は始まることに。そう、消費生活センターはとても忙しいのだ。こちらも混沌としており、つまりカオスとカオスがぶつかった結果なんとなく穏やかっぽい感じになったのかもしれない。
ターさんの生活指導係となった“保東純”のもとには、消費者からのトラブル相談が毎日いっぱい集まる。契約のこと、どこからどう見ても詐欺のようなサービスだが不幸にも信じてしまった人の困りごと、さらに製品不備など、とにかくキリがない。

現代社会で消費をしない人間は存在しないだろうし、現代の人間の暮らしは「消費生活」と呼んで差し支えなさそうだし、だからターさんの預かり先としては適切な気がしてくる。

なにせ彼の消費生活では危なっかしいことが頻発するからだ。
ターさんのまっさらな心にエナジードリンクのうたい文句は純度100%の勢いで響いてしまう。ターさんは「文字通り」受け取ってしまうのだ。たしかにこのままでは消費社会で生き延びることは難しいかもしれない。
「それを飲んでも翼は生えない」と生活指導員の純に教わり、それもまた言葉通りに受け取るが、それでもターさんはエナジードリンクを一応飲んでみたいらしい。はんざき朝未先生らしい、ジワジワと積み重なっていくおかしさがとてもいい。豪快にズレている気がするのに全然ズレていない瞬間も多々あるので余計に笑ってしまう。たとえ翼が生えなくたって飲んでみたいよね。これぞ消費生活じゃないか。

こんな読みにくい文章初めてだ!

実は、ターさんの消費生活での戸惑いは私たちの戸惑いそのものでもあったりする。
たとえば「契約書」。生まれて初めて契約書と出合ったターさんは、どんな感想を抱くか。
甲も乙もわかんないよね! 「つまらなそうな物語」というダイレクトな表現もすてきだ。生まれて初めて見る契約書に大困惑のターさんは、早々に契約書をキライになるが……?
消費生活センターのお仕事では、契約書があるのとないのとでは仕事の大変さが段違いなのだという。ラブ契約書!

そうはいっても契約書なんてジャングルには存在しなかったのだから、難しいものは難しい。契約を知れば知るほど絶望するターさんだが、少しずつ学んでいく。この一歩一歩がおもしろい。
なるほど「俺とお前の約束」と覚えればいいのか。そして人間社会に参加してまもないターさんが「(約束を)したことは…ないかも」と真面目に考えている様子が私はとても好きだ。真面目で繊細な男なのだ。繊細すぎるために起きる惨事も多々あるが、ターさんの大切なチャームポイントだ。きっと彼は親(オランウータン)に大切に育ててもらったんだろうなあ……。

ただ、真面目な男ではあるものの「イヤだなあ」と思ったモノには、とことん抵抗する。ジャングルで培った野生マインドが火を噴くかのようにとにかく嫌がる。
ターさんは説明書を読まない。そして、とある健康器具でケガをして製品事故の相談に訪れたおじさんもまた、トリセツを読まない人だった。やがてターさんとおじさんとの間でまさかの化学反応が起こる。純の相談員としての手腕も試される良い回だった。

毎話毎話、考えたことない角度から消費生活のあれこれを見ることになるコメディだ。危険いっぱいな消費生活でのトラブルを知りつつ、大いに笑ってほしい。

レビュアー

花森リド

ライター・コラムニスト。主にゲーム、マンガ、書籍、映画、ガジェットに関する記事をよく書く。講談社「今日のおすすめ」、日経BP「日経トレンディネット」「日経クロステック(xTECH)」などで執筆。

X(旧twitter):@LidoHanamori

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