伏線回収を待ちわびて
「ツイてないのになんだか嬉しそう」と周囲からは怪訝(けげん)な目で見られている運子。今日も派遣社員なのにガッツリ残業して、大雨に降られたけど気にしない。だって不幸はいつか来る幸運のための伏線だから。この雨だって、未来に虹をかけるはずだ。
しかし、ページをめくった瞬間、その期待は思い切り打ち砕かれる。
天国と地獄を行き来するような「1ページ後の世界観の反転」に脳をダイレクトに揺さぶられる。「絶対幸せになるって本当に?」と思うほど、ジェットコースター級に私たちを翻弄するのが、この『白鳥運子は31画』というマンガだ。
白鳥運子はスーパーポジティブ
運子や広のような人間に逆転などないと、「31画」を嘲笑う黒田に運子は衝動的に襲いかかり……。
しかし、どん底に落ちた瞬間、そのズレたポジティブさと半グレ顔負けのバイタリティで、素手で這い上がってくるのが運子である。なんと言ってもその腹の据わり具合、平常心が強すぎる。死体を埋める穴を掘りながらつぶやくひとことがコレなのだから。
いざというときモタモタしないためにもやっぱり身体は鍛えなきゃ。よし、来月からジムに行こう……。この「未来の自分の幸せ」に対する絶対的な信頼と、地獄の真っ只中でも一瞬で未来の具体的なポジティブアクションを思い描ける強すぎるガッツと瞬発力。これを持っているだけでも、運子はツイてる女なのでは……? そんなふうに思えてくるのだ。
すがるべき過去はないけれど
運子が幸せを信じる根拠はただ一つ、「総画数が31画(大吉数)だから」である。
裏を返せば、彼女のこれまでの人生には、自信をつけられるような「良いこと」がなにもなかったということではないだろうか。
それでも「31画」という記号を盲信して突き進む運子は、一度だって自分を「不幸な女」なんてカテゴライズしない。幸せの伏線回収のためなら、どんな障害もポジティブに排除してしまう。一見、倫理観のバグったサイコパスにも見えるが、そこには不思議と「悲壮感」や「恐ろしさ」はない。
『白鳥運子は31画』は、現代の「カテゴライズ」の枠を軽々とぶっ壊す、最高に気持ちのいいヒロインのサクセス(?)ストーリーなのだ。







