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2026.03.23

レビュー

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雪に囚われた街で、二人が向き合う真実とは──。北陸青春サスペンス『スノードームタウン』

立山に 降り置ける雪を 常夏に 見れども飽かず 神からならし

「立山に降り積もった雪は、夏でも消えることがなく、見飽きることはありません。神々しいからなのでしょう」
奈良時代の歌人・大伴家持は、立山連峰の雪をそう詠んだ。でもそれは“みやこ人”の捉え方であって、そこで生まれ育ち、“ここ”と外を分け隔てるようにそびえる立山連峰を見てきた人の捉え方は、もっと違うのではないだろうか?

富山県高岡市。普通なら立山連峰が見えるはずだが、今は見えていないかもしれない。市外ではもう桜が咲いている時期だというのに、この町では雪が降り続いているからだ。
高校生のあこは、小説家志望の多古に請われて、物語のアイデアとなるイメージボードを描いている。
あこは多古に淡い恋心を抱いていて、多古はあこにゲキ惚れしている。
いつかこの街を離れて、東京へ。
そんなふたりは、一度も街を出たことがない。
なぜなら、この街は10年の間、雪が降り止んだことがないから。

“ここ”ではないどこかへ

「“ここ”ではないどこかへ」。それはすべての冒険譚のはじまりであり、ティーンエイジャーを描くジュブナイル作品の永遠のテーマだ。しかし、ふたりは“ここ”から出られない。高岡に住む人は、みんな出られない。みんな状況を受け入れ、日々雪かきをして、生活を続ける。慎ましやかに、静かに……。

この街から外に出られない。それはそうなのだが、外と街を行き来する人もいる。かつて東京に住み、今は街でスナックを経営しているあこの“おば”、ゆきひがそうだ。彼女は「どうやって街と外を行き来しているのか?」を語らない。そしてもう一人、ゆきひの元カレだという男・細呂木。彼は“なんらかの方法で”街を訪れて、あこに出会い、問いただす。

「どうしてこの街の人は一歩も街の外に出ようとしないの?」

そして、ひとりの女性が街を出て倒れる。
倒れた女性は、多古のクラスメイトだった。それを知って、多古は街を出る夢を諦めようと言い出す。
もし街を出て、あこに何かあったらと考えると怖くてたまらない。
しかし、あこは言う。
自分で外出る言うて息巻いとったぬけ!
街のことと友達のことの因果関係もわからんがに
急に弱気になってカッコ悪い!
自分だって外は怖い。でも多古となら怖くない。
そしてふたりは約束する。
いつか一緒に桜を見に行こう

はじまりの雪

街の外に出ると怖いことが起きる——。
どうして街の人はそう考えているのか? どうして街の人はそれを受け入れているのか?
物語の核心にたどり着くには、降り積もった10年分の雪を掻き分けなければならない。細呂木はそれを探ろうとする。彼は呂木誠というペンネームを持つ作家で、この街を題材にノンフィクションを書こうとしていた。細呂木は作家志望の多古を懐柔し、雪が降り始めた10年前のことを聞き出す。

はじまりの雪は4月に突然降り始めた。
季節外れの大雪に街の人はさして驚きもしなかったが、街の外の人はすぐに異変を察した。
街の境目に現れた巨大な雪の壁。
ちょうどその時、多古の一家は、熱を出して寝込んでいた多古を残し、一足先に東京へ引っ越していた。この異変に、すぐさま子どもや体調不良を抱える者を運ぶ救助バスが仕立てられ、多古もそれに乗る予定だったのだが……、多古は不思議な声を聞く。
多古はバスに乗らなかった。

そして……、その救助バスはそのまま失踪してしまった。

その声の主は誰だったのか? 細呂木に訊かれても、多古は答えない。でも細呂木には、思い当たる人物がいた。

「あこちゃん じゃないの?」

第1巻では、もう少し突っ込んだところまで真相が明かされるのだが、それは読んでのお楽しみだ。(作者の故郷でもある)高岡市という実在する街のリアリティに加え、徐々にホラー味を増していく語り口がバツグン。街から出られない閉ざされた世界、知ることをためらう真実……そうした要素は、手法は異なれど『進撃の巨人』が好きな人なら強く響くこと間違いなしだ。そして「なぜ雪が10年間も降り続いているのか?」という理由が、まったくもって見当がつかない。細呂木と多古が、掻き分けた雪の下に見つける事実はどんなものなのか? 楽しみに待つ!

レビュアー

嶋津善之

関西出身、映画・漫画・小説から投資・不動産・テック系まで、なんでも対応するライター兼、編集者。座右の銘は「終わらない仕事はない」。

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