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2026.01.03

レビュー

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ナンパ男、ホス通い女子…欲望と絶望のるつぼ、歌舞伎町でカラオケ店員としくにさんが選曲でなぐさめます

そういう話だったのか

読むとしんどい、だけど本当に面白い。読む人を選ぶと思いながらも、おすすめせずにはいられない漫画……。それが『歌舞伎町カラオケ店員としくにさん』だ。

ストーリーは1話完結。カラオケ店を舞台にしたほのぼの展開に気を抜いていると、急転直下のバッドエンドが訪れる。「さすがに今回はノートラブルか?」と思った回もやっぱり絶望からは逃げられない。しかしその読み味は不思議と軽く、「うわあ……」と言いながらもついページをめくってしまうのだ。

欲望の街・歌舞伎町で営業中の「カラオケにゃん」。場所柄なのか、客層がいいとは言いがたい。この日もスタッフにセクハラし、女性たちの部屋に突入してナンパをくり返す困ったサラリーマンが来店している。
そんなとき、トラブルシューター的に現れるスタッフが“としくにさん”である。寡黙なとしくにさんは「カラオケにゃん」の料理担当。としくにさんの作る焼きそばやオムライスは、この店の知る人ぞ知る名物だ。無口だが周囲のスタッフたちに頼られ、慕われている優しい人だ。

歌舞伎町を行き交う人の心と同じくらい、この漫画の展開は読めない。ひとときの癒しを得て、笑顔で店をあとにしたように見えたあのサラリーマンの末路もそうだ。
治安の悪いエリアのカラオケあるあるに笑いながらページをめくると、背筋がスッと冷える展開が待っている。

強面だけど穏やか、なのに顔にでっかい傷があるとしくにさん。謎多き人だ。なぜ、こんな大きな傷があるのだろう。その理由はすぐに明らかになる。
過去を問わない街・歌舞伎町で、としくにさんはある人を探しているのだ。

優しさと、包容力と、地獄

悪ノリする大学生にホスト通いの女の子、推し活ちゃんたち……。「カラオケにゃん」には厄介な事件を呼ぶ客が次々と来店する。としくにさんには、そんな彼らを独特な選曲でさりげなく慰める一面もある。静かな包容力がすごい。
この店に来る人は、みな心に闇を抱えている。個室のドアが閉まると、その闇の深さや醜悪な人間関係があらわになる。身近にありそうだと想像できて、それでいて救いのない地獄がすごいバリエーションで描かれる。
としくにさんは、あるときはただ話を聞くことで、あるときはおいしいオムライスや焼きそばで、彼らの心を少しだけ和らげる。しかしほんの一瞬解放されたように見えて、真に救われたものは1人もいない。救いを胸に店を出た次の瞬間に別の地獄にさらわれたものもいる。

深い闇を抱えているのは、としくにさんにも言えることだ。としくにさんはもう決して戻らない日々のことを思いながら今を過ごしている。
あの焼きそばも、包み込むような優しさも、その日々の名残であることが描かれるたびに苦しくなる。助けたようで助からなかった人たちを、としくにさんはどう思っているのだろうか。

十人十色の闇の果て

さらに、ある事件の被害者であるとしくにさんに、あらぬ疑いをかけるものもいる。
ポップな絵柄で淡々と描かれる、数々の重い話に通底する謎。
すべての真相が明らかになったとき、人々にささやかな救いを与えてきたとしくにさんにはどんな「救い」があるのだろう。それとも救いなんてないのだろうか。あるいは思いもよらぬ真相が浮かび上がるのか。いずれにせよ、最後に描かれるのは、きっと、ただグロテスクなだけの何かではないと思うのだ。

続きが気になりすぎて、最新話まで追いかけてまた違う“闇”を見てきた。オムライスにあんなかわいいデコレーションができるとしくにさん。その温かさに触れるたびに、読者としてもほっとしてしまう。としくにさんに本当の意味での救いが訪れますように。そう祈らずにはいられない。

レビュアー

中野亜希

ガジェットと犬と編み物が好きなライター。読書は旅だと思ってます。

X(旧twitter):@752019

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