物語の舞台はアメリカ・ニューヨークの国連本部。舞台設定だけでも海外ドラマ好きにはたまらないはずです。ある日、国連本部に未確認飛行物体が不時着。世間には映画の撮影と発表されますが、その機体から現れた青年・ノアは、地球上のどの生命体とも異なる生物化学構造を持っていました。まさしく“宇宙人”と認めざるを得ない存在です。
月白サジは、正義感が強く真っ直ぐな性格の国連職員。しかしその真っ直ぐさゆえに組織では少し浮き気味の存在です。事件の現場に居合わせたことをきっかけに、超常現象を専門に扱う特別部署「超常機密分析部(通称ブラックシープ)」へ異動します。
本作の作者は五鹿マルメ先生。前作の『きょうもあしたも蕨井先生』では、クオッカワラビーの蕨井先生が毎月優しい癒しを届けてくれる、ほのぼのとした作風が印象的でした。それだけに、本格サスペンスに挑んだ今作の振り幅の大きさには驚かされます。ですが物語の端々に、五鹿先生らしいユーモアとあたたかさがしっかり息づいています。作中に登場する“ピーマンドーナツ”の味を想像してしまうのも、読後のちょっとした楽しみです。
海外ドラマのような舞台設定と、緊張感あるミステリー展開。そして個性豊かなキャラクターたちのやりとりが、物語にユーモアと温かみを添えています。
広げられた伏線がどのように回収されていくのか、次巻への期待が膨らむ1冊です。








