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2025.10.30

レビュー

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地球規模で発生する超常現象をめぐる、新感覚エイリアンミステリー『BlackSheep』

海外ドラマが好き、ミステリーが好き、そしてちょっとした癒しやクスッと笑えるやりとりも楽しみたい――そんな方に注目してほしい新作です。『BlackSheep ─超常機密分析部─』は、超常現象をめぐるスリリングなエイリアン・サスペンス。ホラー的な怖さはなく、キャラクターの魅力とテンポの良いストーリーが光り、今すぐにでもアニメ化されそうなワクワク感があります。

物語の舞台はアメリカ・ニューヨークの国連本部。舞台設定だけでも海外ドラマ好きにはたまらないはずです。ある日、国連本部に未確認飛行物体が不時着。世間には映画の撮影と発表されますが、その機体から現れた青年・ノアは、地球上のどの生命体とも異なる生物化学構造を持っていました。まさしく“宇宙人”と認めざるを得ない存在です。
ノアは「地球を救いに来た味方だ」と名乗り、国連職員の月白サジとの面会を求めます。その直後、国連の講演会場で議員と子どもたち88名が一瞬で失踪、代わりに正体不明の5人の死体が現れるという未曾有の事件が発生。その場所と時間は、ノアが示した予言と一致していました。

月白サジは、正義感が強く真っ直ぐな性格の国連職員。しかしその真っ直ぐさゆえに組織では少し浮き気味の存在です。事件の現場に居合わせたことをきっかけに、超常現象を専門に扱う特別部署「超常機密分析部(通称ブラックシープ)」へ異動します。
ブラックシープは、説明のつかない特異現象=オーバーエラーを分析・捜査する少数精鋭チーム。そこには個性豊かで専門性を持つメンバーが集まり、サジはそこで新たな役割を担うことになります。
やがて彼らは、ノアの真意がわからないまま、子どもたちを含む88名の失踪事件を追うことに。さらに、その背後で暗躍する謎の集団が登場し、物語は一層複雑でスリリングな展開を見せます。
人間を「汚い」と断じる彼らは果たして別の地球外生命体なのか? ノアとの関係は? サジはこのチームの中でどのような存在になっていくのか? 巻を追うごとに解き明かされるであろう伏線が張り巡らされており、続刊が待ちきれません。

本作の作者は五鹿マルメ先生。前作の『きょうもあしたも蕨井先生』では、クオッカワラビーの蕨井先生が毎月優しい癒しを届けてくれる、ほのぼのとした作風が印象的でした。それだけに、本格サスペンスに挑んだ今作の振り幅の大きさには驚かされます。ですが物語の端々に、五鹿先生らしいユーモアとあたたかさがしっかり息づいています。作中に登場する“ピーマンドーナツ”の味を想像してしまうのも、読後のちょっとした楽しみです。
タイトルの“Black Sheep(黒い羊)”は、英語圏で“厄介者”“はみ出し者”を意味する言葉。ブラックシープのメンバーも、サジをはじめそれぞれに組織の“厄介者”のような存在です。しかしその彼らが、地球規模の超常現象という難題に立ち向かっていく――その姿は頼もしくもあり、ぐっと応援したくなります。きっとあなたも、自分の“推し”となるキャラクターを見つけたくなるでしょう。

海外ドラマのような舞台設定と、緊張感あるミステリー展開。そして個性豊かなキャラクターたちのやりとりが、物語にユーモアと温かみを添えています。
広げられた伏線がどのように回収されていくのか、次巻への期待が膨らむ1冊です。

レビュアー

Micha

ライター。フリーランスで働く一児の母。特にマンガに関する記事を多く執筆。Instagramでは見やすさにこだわった画像でマンガを紹介。普段マンガを読まない人にも「コレ気になる!」を届けていきます!

X(旧Twitter):@Micha_manga
Instagram:@manga_sommelier

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