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2025.09.18

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罪を以て罪を制す! 超凶悪犯罪者×警視庁No.1女刑事の異能力アクション『K-9』

名も知らぬ架空の国で、モンスターたちとの壮絶なバトルを繰り広げる弩級ファンタジーも面白いですが、身近な場所を舞台にしたSFやファンタジーも、自分が暮らすこの世界と地続きのようなドキドキ感があり、魅力的です。

今回紹介する本作は、後者のタイプ。タイトルに「警視庁」とあるように、舞台は東京。冒頭から「サンシャイン60通り」や「歌舞伎町」が登場するなど、東京で巻き起こる犯罪に対処する刑事の物語であることが明示されます。この現実のような舞台に用意されたファンタジー要素は、異能。その特殊な能力の秘密とは。そしてどんな能力者たちが登場するのか。ワクワクしながら読み進めます。

犯罪者だけに発現する異能、その名も「罪(シン)」

本作の主人公は、警視庁刑事部捜査一課所属の刑事・緋月恋(ひづきれん)。
イケイケな武闘派かつキレ者であり、捜査一課のエースと呼ばれる存在です。ニコチンが切れると途端にダウンしてしまうという特殊な体質の持ち主。しかし、そんな優秀な刑事でも手こずるほどに困難な状況に見舞われていました。突如現れた「罪(シン)」と呼ばれる異能の存在が原因です。罪を犯すことで発現するというそれは、火や煙などを操ることができる特殊能力(他にもまだまだありそう)で、まさに「異能」と呼ぶにふさわしいもの。犯罪の量も質も悪化の一途をたどるなか、取り締まる側の警察は「罪を犯せない」ため、異能を発現させることができないジレンマに陥ります。

とはいえ、これを放置するわけにもいかず、警視庁は対「罪(シン)」専門部署を設立。その名も公安部公安9課。ちなみに警視庁には公安1~4課、および外事1~3課、公安機動捜査隊という組織がありますが、公安という、ある意味警視庁内随一の“ものものしい”組織の中でも抜群の怪しさを抱えた課と言えそう。

さあ、そんな専門部署からお声がかかった緋月は、上司の引き留めに被せるほどの即決で辞令を受諾。「罪(シン)」に対するただならぬ前のめりな態度には、緋月のこんな事情が。
家族を異能に殺された過去を持つ緋月は、絶対に捕まえなければならない相手が存在したのです。宿敵ともいえる能力者との長い戦いが、公安9課所属を機に本格化する……そんな道筋が見えてきそう。

謎多き公安9課、その相棒はとんでもない臆病者!?

しかし、意気込みたっぷりで異動した公安9課で待っていたのは、ドアが開く音にビビり散らかして倒れてしまった、この男。
公安9課所属の朧悠士郎(おぼろゆうしろう)という男は、超がつくほどの臆病者。人の機嫌を窺(うかが)ったり、街中では挙動不審だったりと、まったく頼りにはならなそう……と言いたいところですが、この先緋月のバディになりそうな彼が、ただの臆病者であるはずがない。一体なにが隠されているのでしょうか。

緋月と朧、早くも絶体絶命のピンチ!

さっそく怪しい人物を発見したふたりは、ターゲットを捉えるべく追跡するも、異能によって返り討ちに遭い、とある倉庫にて囚われの身に。相手は、仲間を逮捕し自分たちの計画を邪魔した緋月に恨みを持つ異能集団。両手を後ろ手に縛られながらも、激しいアクションで果敢に反撃する、さすがの元捜査一課エースでしたが、やはり異能集団は彼女をもってしても、敵(かな)う相手ではありませんでした。
圧倒的な力の差を見せつけられながら、それでも立ち上がる緋月に、「怖くないんですか!?」と尋ねる朧。「そりゃ怖ぇよ」と漏らす彼女は、続けてこう言い放ちます。
かつて、自分の目の前で家族を殺されたことへの激しい後悔が、大きな恐怖を前にして、彼女に立ち上がる勇気を呼び起こしていたのです。

朧、覚醒! その正体は……!

強い覚悟を持ち、迷いなく異能から庇(かば)うように朧の前に仁王立ちする緋月。そんな彼女に対し、「かっけぇなぁ」と挑発しながら襲い掛かる異能集団。彼らが手にするナイフが緋月の目に突き刺さる――その寸前で彼女を救ったのは、超臆病者の朧でした。

自らの体でナイフを受け止め、ダラダラと流れ出る血を見ながら、なぜか興奮が止まらない朧。先ほどまでと打って変わって明らかに様子がおかしい彼に戸惑う緋月。そして次の瞬間、ついに本性、いや、正体が明らかに……!
キタキタキタ――!! やはり朧はただの臆病者じゃなかった! 彼は「罪(シン)」を持つ異能者だったのです。その圧倒的な能力で、他の異能者たちをあっという間になぎ倒してしまいました。強い、強すぎる。

実は、朧が所属する謎の対異能専門部署・公安9課とは、「毒をもって毒を制す」ならぬ「犯罪者をもって犯罪者を制す」という、超アウトローな警察組織。「罪(シン)」がないから異能に勝てない刑事たち、というジレンマを払拭する禁じ手ともいえる部署です。

異能であるということは、朧=犯罪者であることを示します。彼が犯した罪は一体なんなのか。緋月は、自身が憎んで止まない「罪(シン)」を持つ朧とどう付き合っていくのか。公安9課に所属する、他の異能者たちはどんなキャラクターなのか。この先登場する異能者たちがもつスキルにはどんなバリエーションがあるのか。

そして緋月は、家族の仇である異能者を捕まえることができるのか。

謎、仲間、敵とこれから様々な新要素が登場するであろう本作。女性と男性、人間と異能者という対照的な緋月と朧のバディものとしてはもちろんのこと、異能バトルのド派手なアクションやミステリアスなキャラクターや展開にも期待値がグングン上がります!

レビュアー

ほしのん

中央線沿線を愛する漫画・音楽・テレビ好きライター。主にロック系のライブレポートも執筆中。

X(旧twitter):@hoshino2009

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