人は“なりたい自分”を、どこまで追い求めてしまうのでしょう。
そして、それが叶ったとき――果たして、自分は本当に「自分」のままでいられるのでしょうか。
「自分とは何か」を問う、話題のSFクライムサスペンス
“なりたい自分”になれる世界と、その代償
正義の仮面をかぶる男・キョウという存在
SNS社会とリンクする、現代人への問いかけ
とくにSNS社会ではそれが顕著です。笑顔を盛った写真、前向きな言葉、洗練されたライフスタイル……それが悪いわけではないけれど、ふと、自分が何者かわからなくなる瞬間がある──。
そんな現代に、『Myther』は鋭く問いかけてきます。
「あなたは誰ですか?」――その仮面の下にいる、本当のあなたは?
息をのむ美しさと、言葉の深さ
繊細かつ耽美な作画、スピード感あるアクション、そして黒手袋やスーツなど思わず見入ってしまうフェティッシュなモチーフ。そこに漂う緊張感は、ページをめくる手を止めさせません。
素顔を感じさせる、ささやかなユーモア
私は、八田先生の前作『やくざの推しごと』(一迅社)で描かれたクスッと笑えるユーモアが好きなので、本作でもそれを見つけるたびに嬉しくなりました。
※『やくざの推しごと』は、ヤクザの若頭がK-POPアイドル沼にハマり、推し活に奮闘するコメディ作品です。
新たな挑戦に宿る、“八田作品”の真髄
ジャンルは変われど、美しく繊細な作画、丁寧で思慮深い言葉選び、緻密な構成力といった八田作品の真髄は、むしろより際立って感じられます。
理想の自分を手に入れる未来に、何を思うか
『Myther』は、美しさと怖さ、憧れと違和感が交差する、不思議な読後感を残します。
「こんな自分が嫌だ……変わりたい!」と一度でも思ったことのあるすべての人に、ぜひ読んでほしい1冊です。








