いかずちが 心を貫くような
これは 初恋から始まる物語
「面白い話が始まりそう」。そんな予感は見事に的中しました。
なんといっても、天下一の美貌を持つ忍・篝火(かがりび)が、とっても魅力的なのです。
この世にオレに落とせぬ者はいません
だけど心は、いつも冷めている……。
生涯恋などしない
恋に翻弄される奴らを利用して踏みつけて
オレはこの乱世でのし上がってやる──


とはいえ、篝火にとってはお手のもの。いつもの色仕掛けで竜胆に迫ると……



篝火から、初めて大福をもらったときも……



今まで散々、冷めた篝火のセリフを見てきただけに、この逆転劇には思わず笑ってしまいます。
そして、冒頭に出てきた言葉――これは初恋から始まる物語――とは、そういうことだったのか!!と心の中で拍手喝采でした。
結局、任務を遂行できなかった篝火は、さらに警備が厳重になった離宮に再び侵入します。
ここでも竜胆に調子を狂わされてしまう篝火ですが、生まれも育ちもまるで異なるふたりに共通するのは、幼少期の辛い過去。
家族を殺され、唯一生き延びて忍の里にたどり着いた篝火。
一方、竜胆にも両親はおらず、龍神の巫女として生まれたがゆえの宿命と出生の秘密がありました。
しかも、竜胆の母親は次期当主・止水にとって叔母であるだけでなく、初恋の人。だからこそ止水は、竜胆に対し憎しみを抱えていたのです。
今度こそ囚われの身となった篝火は、龍神様が棲む滝壺へ、生け贄として捧げられることになってしまいました。
そのときの篝火の死を厭わない言葉が、彼の今までの孤独感と人生に対する諦めが滲み出ていて、なんとも切ない。


篝火と竜胆もまた、クールな顔を見せたかと思えば、子供のように可愛らしい一面をのぞかせます。
こうした陰と陽の対比が絶妙なバランスでテンポ良く交錯するため、最後まで飽きません。
この先、篝火と竜胆が背負っている宿命と哀しみが、ふたりの行く末にどう絡んでくるのか。心に痛みを抱える篝火は、初めての感情を戸惑うことなく受け入れ、初恋を成就させることができるのか見守っていきたいと思います。